職人育成のWスクール、マイスター高等学院で大学の素読をする理由
構想から1年経たずして、この4月に開校した職人育成の通信制高校、マイスター高等学院の授業が始まりました。2023年度の新入生はたった1人ですが、これまでの職人とは全く違うキャリアを身に付けてもらうべく、社会で活躍し、未来を創造するための本質的な教育カリキュラムをスタートさせています。
学ぶを俯瞰する
初回の授業では、3年間の高校生活を通して身に付けるスキルや知識、そして職人である前に人としての在り方について、全体像を把握できるようにオリエンテーションを行いました。
マイスター高等学院の教育理念は「良知を開く」です。誰もが生まれながらに持っている良知を信じ、その開花を教育の目的に据えています。したがって、授業のスタイルは教えるティーチングではなく、育むコーチング形式になっており、3年間で学生が身に付けるべき能力も教えるのではなく、本人に何を得たいかを問いかけます。
学生が得たい能力を得られる授業
第1号生の優太が3年間の学生生活を通して学び、自分の力にしたいと口にしたのは以下の通り。家庭での教育が素晴らしいのか、私たちの意図をしっかりと組んでおり、非常に的を得た回答を述べてくれました。良知を信じ、教えるのではなく、引き出すだけで大きな成長をしてくれると確信しました。
目的と目標の表出から
また、授業の始めに何のために学ぶのか?との基本的な問いかけを行い、目的を明らかにしてもらいました。彼は「自分や周りの人が明るい未来を手に入れられるように」と子供らしい平易な言葉ながらも、自分だけではなく、人を幸せにするために学ぶのだとの意思と意図を示してくれました。目的と目標が明確になった後、生徒自らが口にした上述の能力や人としてのあり方を確実に身に付けるために3年間で進めていく学習カリキュラムの全体像について説明をしました。
能力は経験が担う原則
人を幸せにしたい。と口にした学生に今の君の能力でそれが叶うか?と聞くと、もちろんできる事は非常に少なく、そんな力を持っているとは言えません。そして、40歳も年が離れた私と彼との違いは何かと一言で言うと、単純に人生を積み重ねてきた経験の量と言っても過言ではありません。もし、彼が高校3年間で私が55年間の経験で学び取った知見や知恵、そこから得た問題解決能力を受け取ることができたら、社会に出た途端に圧倒的な活躍ができる可能性があることを伝えました。シンプルすぎる理論だけに深く納得すると共に、リアリティー、信憑性を感じてくれたようです。
実学の教科書3冊
社会に通用する実学で非常に重要なのは先人の経験を受け取り、自分の血肉にすることである。との、普通の高校とは全く違うカリキュラムを進めていくことで問題解決能力を身に付けて、人を幸せにできる社会人になれるのだと伝えた私の言葉を本人もよく理解しているように感じました。そして、私1人の経験を受け取るよりも、人類が発展してきた10万年の文化、文明、知見を受け継ぐことが学びの本質であることを伝えた上で3冊の教科書の説明を行いました。1年生のカリキュラムで教材として採用している教科書は、私が上司した「職人起業塾」と「論語」と「大学」です。
学びにまず大学あり
私の持論は持続可能な社会、それを支えるビジネスモデルの構築には、信頼が欠かすことができず、経済を担保するマーケティングの根本は日本で培われてきた論語に端を発する人としてのあり方を正し、人の心を思いやり、共有の価値を創造することです。生徒に幕末から明治維新、そして昭和初期にかけて日本が西欧へ諸国からの侵略に打ち勝ち、独立を守り輝いていた時代に熱心に学ばれた学問を今の時代に改めて学ぶ必要性を伝えつつ、近江の聖賢、中江藤樹先生が学びの始めに大学あり、との言葉を引用して腰骨を立てて一緒に大学の素読を行いました。
最も効果を発揮するのは人間力
15歳の若者が漢文を日本語読みした大学を声を出して読んでみたところで、ほとんど意味はわからなかったと思います。ただ、素読を繰り返しながら一節ずつの文章をひもとき、人としての在り方、考え方を理解しつつ、身体に染み込ませていくことで、やり方、末学ではなく、人としての道、本学を身に付けてもらえると考えています。3000年の悠久の歴史を乗り越えて、今もなお世界に大きな影響を与え続けている古典、論語を学ぶことは、社会で活躍する上で、最も重要な人間力を彼に与えてくれると考えています。新しい職人像実現のための実学のカリキュラムが大きな効果を発揮すること願いつつ、私自身も学び直しの機会として古典に向き合っていこうと考えています。
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