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New standard① 〜高校生大工の志〜

ソーシャル系ビジネス、社会性と経済性を両立させるCSVモデルを実践する経営者が全国から一堂に集う最先端のビジネスイベント、ソーシャル・シンポジュウムとナショナル・フォーラムの2daysが6.15、16に大阪で行われ、大盛況のうちに今年も幕を下ろしました。毎年、回を積み重ねるごとに加速度を増すかのように、今年もとても素晴らしい熱い志が迸るイベントとなりました。その中でも強く印象に残った幾つかを備忘録がてら書いておこうと思います。

革命はマイノリティーから始まる

6.15に梅田スカイビルで行われたシンポジュウムの基調講演は昨年に引き続き山口周さん。今年は残念ながら体調の問題でビデオ講演になってしまいましたが、近著「クリティカル・ビジネス・パラダイム」の内容を紐解きながら、経営実践研究会こそ、この新たな時代を切り開くビジネスモデルを実践、社会実装する会だと、力強いエールを頂きました。
社会の変革は常に少人数の反抗的、批判的な思想や行動から生み出される。マイノリティが起こすムーブメントがマジョリティを凌駕して革命が起こって来たのは従前ですが、その端緒を開くのは時代によって方法論が大きく異なります。
戦国時代、織田信長は取るに足らない弱小の戦国大名から天下布武の志を立て、武の力をもって天下を統一しました。
明治維新は武士による封建制度の名残りを残しながらも新政府となる薩長同盟は江戸城を無血開城させました。実は武力ではなく思想で革命を遂行しています。昭和に入って、またアメリカによる圧倒的な兵力によって、大日本帝国の中枢は壊滅させられ、今の政府が誕生しています。現在、世界を見渡せば暴力による現場変更があちらこちらで行われようとしていますか、歴史は繰り返すとすれば、日本では次はやっぱり武力ではなく意識変容による革命が起こるはずです。

社会変革と言う名の革命

山口周さんの著書「クリティカル・ビジネス・パラダイム」は時代・社会への認識を新たにして、モノが溢れる物質的にはすっかり成熟した世界では、ユーザーのニーズは減少し、ユーザー自体も減り続ける。先進国のGDPは成長出来無くなった事実を見つめて、既存の延長線上にはマーケットが存在しなくなるのを前提に据えています。
その上で、人類が成熟したより良い世界を目指すとするならば、解決されない数多くの社会課題、経済合理性が伴わないと見捨てられてきた分野への手当を行い、解決する必要性と、際限のない成長を大前提に組み立てられてきた欧米型資本主義の行き詰まりを指摘しています。
それらを批判的な視点で俯瞰し経済を、また社会をあるべき姿に戻す、もしくは進化成熟させるのは金融資本主義に対するアンチテーゼであり、ビジネスの文脈からの社会変革という名の革命です。

大工見習いの高校生の志

山口修さんの基調講演の後は、3つのルームに分かれてテーマごとにパネルディスカッションや研究発表が行われました。その中の1つ、共感ビジネス研究部会のブースでは未来を見なう、若者によるプレゼンテーションが行われました。
私が校長を務めるマイスター高等学院からも高校2年生の優太君が壇上に立ち、志とその実現についてのプレゼンテーションを行いました。
大工であるお爺さんとお父さんの姿を見て興味を持ち、震災復興を職人たちが行ったのを耳にして、自分も人のために役に立つ大工になりたいと思い立った動機から、マイスター高等学院に入学する頃、そして、そこで学んで立てた志についてしっかりと、堂々と語りました。手前味噌に過ぎますが、本当に素晴らしい発表でした。フィードバックをくださったオーガニック、コットンファクトリーのファウンダー、渡邉智恵子さんも絶賛してくれていました。
雄太が語った志は、自然災害等の際に世の中の力になれる1人前の大工になって、笑顔が溢れる街を作ること。締めの言葉では、大工の会社を引き継いで、その志を実現します!と力強く語ってくれました。

悪しきスタンダードを塗り替えろ!

建設現場で働く現場人材は毎年減少を続けており、特にすべての工事に関わると言っても過言でない大工はこの30年間激減してきました。現在では震災や水害などの自然災害が起こった後の応急仮設住宅の建設さえままならない状況です。職人不足の問題は既に建設業界を飛び越えて、日本の安全保障上の課題になりつつあります。そんな中、技術を身につけて地域を守り、笑顔あふれる街を作りたいと志す若者が育っていると言うのは、非常に明るいニュースであり、未来への希望です。この希望を一人だけで無く10人、100人、1000人と大きなムーブメントに押し上げるのが、私の人生を賭けたチャレンジであると改めて感じる非常に感慨深い1日になりました。
若手職人の育成と言う経済合理性から外れると判断されてきた業界のスタンダードを塗り替え、ものづくり企業がものづくりの人材を育成する。そんな当たり前の理を世に広めたいと思います。新しいスタンダードを作ることこそ、社会変革の第一歩だと思うのです。

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当たり前のことが当たり前に行われるそんな当たり前の世界を目指しています。

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