見出し画像

小さな工務店が取り組む理想の組織への挑戦③ 〜組織の存在目的〜

令和3年4月12日 快晴

今日は今年になって初めて、というか、かなり久しぶりに関東への出張です。非常事態宣言が収束して関東方面の事業を再開しようと思った矢先、ずいぶんと暖かくなったにもかかわらず、新型コロナの感染拡大は変異株への感染者の増加と共にまたもや増え始めて、大阪、兵庫の関西圏に続いて東京でも蔓延防止措置が発令されそうな勢いになっておりますが、感染症対策は基本的に風邪と同じ、萎縮してしまうのはやめて十分に注意しつつ、行うべき仕事を粛々と進めることにしました。

今日は東京に向かう新幹線の中から先日からシリーズで続けている組織論の続きを書き進めています。神戸の片田舎で工務店と地域コミュニティーサービスを生業にしている私が今現在の想いとして掲げている理想の組織の条件はこちら、これから1つずつを紐解いて書き進めています。

理想の組織5つの条件
①組織の存在価値が認められ、自社独自の市場(マーケット)を持ち外部環境に左右されずに経営が持続できる。
②組織に在籍しているメンバーがやりがいと満足を感じそこで働くことが自己実現の場になっている。
③組織の存在目的がメンバー間で共有され、その実現のために全員一丸となって事業を行っている。
④管理命令型の属人的なリーダーシップで組織が成り立つのではなく、メンバー間での合意形成で組織が運営されていく。
⑤メンバーの成長と新陳代謝が滞りなく起こり世代を超えて事業が継続されていく。

これまでの記事はこちら、

組織の存在目的を明確にする理由

ここまで私が目指す理想の組織の5つの条件について一つずつ書き進めてきましたが、本来、最初に書いておくべきだったのではないか?と、ずっと思い続けていたのが、「存在目的」についてでした。目的無き組織はいわば野武士や野盗の集団の様なもので、バラバラの方向性を持った個人主義の者たちがそれぞれの都合に合わせて、損得勘定で集まっているに過ぎず、そこで下される判断の基準は「今だけ、金だけ、自分だけ」を優先するのが当然の組織になってしまいます。当然、それでは事業を長きにわたって続けることはおろか、マーケットに中長期的に認められて継続的に売り上げ利益を上げる体制さえも作れなくなります。狩猟民族、もしくは野山を焼き尽くしては移動を続ける焼畑農業の部族よろしく、次々に新たなマーケットを探し求め、移動を続けながら次世代に向けてなんの価値も残すことなく、そのうち消滅してしまうのが関の山です。
私たち建築に携わる事業を行うものは、提供する商品、サービスは非常に息が長く、何十年にもわたって使われ続ける建物だけに、その保守、メンテナンスに対する責任を追わなければなりません。私は地域のインフラを支える工務店は事業を存続させることが顧客に対してまず初めに約束しなければならない責任だと思っていて、そのためには持続継続できる組織づくりが不可欠だと思っています。その組織が成り立つためにまず初めに必要なのが人がそこに集う意味であり、組織の価値の源泉でもある「存在目的」を明確にするべきで、その理念を共有して野武士軍団や烏合の衆では無い「目的をもった組織」にならねばならないと思っています。

経営理念ではなく存在目的

事業所における存在目的を明文化したものが、いわゆる「経営理念」と呼ばれているような印象を受けますが、私は少しニュアンスが違っている様に感じています。厳密な定義ではありませんが、経営理念は経営者が事業の目的を誰にでも理解してもらえるように明らかにしたものであり、存在目的とは組織というそこにいる人の集団として集まる理由の側面が強い様に感じます。もちろん、スタッフ全員で、自分達の働く目的の延長線上で考えた事業の目的を集約して理念に掲げるケースもあると思いますし、その場合は「組織の存在目的」と殆ど同じ意味になると思いますが、一般的に経営理念として掲げられている言葉に末端のスタッフの想いが反映されていることは殆ど皆無であり、創業者や経営者の強い想いが反映されているものが圧倒的に多いのが実際のところです。そのような前提を踏まえて、私は経営理念ではなく、組織の存在目的を明確にして、共有する必要を強く感じています。現在、株式会社四方継では「人、街、暮らし、文化を継ぎ四方良しの世界を実現する」との理念を掲げて事業を行なっており、これは一昨年のリブランディングの準備の際に繰り返しスタッフの意見を聞き、このような働き方をしたい、こんな仕事がしたいとの声を汲み取って私がまとめたものです。その目的を常に全員が意識して、逸れることがない様に社名もその目的をストレートに反映させて大工の世界で受け継がれている伝統工法と掛け合わせて「四方継」という社名に改めました。もちろん、私の想いも強く反映されておりますが、あくまでもスタッフの声を主体に定めた理念と社名になっています。社名は少し直接的に過ぎますが、とにかく社内外の人たちに存在目的を常に意識してもらう効果はあると思っています。

画像1

質と時限の両立をかなえるための組織

目的を明確に掲げ、常に意識する事で事業の方向性から外れた判断、間違った選択をしなくなります。しかし、残念なことに、人はなぜか全く違う概念のはずである目的と手段を履き違えて、手段を目的化してしまいます。以前に何度も繰り返した目的と手段の考察はこちら、https://shokuninshinkaron.com/?s=目的と手段
特に、目的を見失いがちなのは時間的な制限に追われた時だと思います。表面的に考えると手段の目的化は言語道断で、その様な事例が発生すると、そんな基本的なことができないのか!と詰ってしまいそうに思いますが、それも実は、悪気があってのことではないというか、逆に時間や期限に間に合わせる、約束を守るという誠実さから発出することが少なからずあります。本当はお客さんも自分たちも、関係業者さんも、そして環境にも全てが良くなるような提案をしたい、丁寧な仕事を心がけていても、次々に押し寄せる仕事とそれぞれについてくる時間的な制限に対応しようと思ったら、ある程度のクオリティーで妥協するしかないと諦めてしまいがちです。
仕事は趣味では無い以上、常に時間との組み合わせです。売り上げとはある一定の期間内での収益を示す様に全ての仕事には期限がつきもので、それを守れないと既に仕事として成り立ちません。
今日のテーマである「組織の存在目的がメンバー間で共有され、その実現のために全員一丸となって事業を行っている。」という条件は、ただ単に組織に在籍するメンバーの目指す方向性や仕事への想いを文言に表すだけではなく、それが実践できる環境づくりがセットにならねば絵に描いた餅になってしまいます。この難しい問題を解決する鍵は組織内で情報共有をスムーズにした上でサポートし合う事しかないと思うのです。まさに「全員一丸」ということですが、このコミュニケーションこそが組織にとって最も重要ではないかと思うのです。

_____________________

◆四方良しの世界を作る株式会社四方継のHP:
https://sihoutugi.com
◆一般社団法人職人起業塾のオフィシャルサイト:
https://www.shokunin-kigyoujyuku.com
職人育成、人事制度改革についての相談はこちら→
https://www.shokunin-kigyoujyuku.com/application/contact/




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?