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持続可能性は計画・実行と構造化とのシンプルな組み合わせ

新しい年がスタートした初めの週は1年間の事業計画の組み立てと改めてビジョンと役割分担を共有しました。毎年繰り返し同じようなことをしておりますが、(少しずつではありますが)確実に課題解決を繰り返し、螺旋状の成長ができているように感じています。ヘーゲルが提唱した弁証法的な螺旋型成長がもたらすのは持続可能性だと思っていて、それには芯となる方向性が非常に重要です。事業における方向性とは、理念やビジョン、あるべき姿を想う強い信念など、エモーショナルな部分が取り沙汰されがちですが、私はそれと同時に最も重要視すべきは「構造化」する思考と力が必要ではないか思っています。今回は少しとっつきにくいというかあまり意識されることがない構造化について具体例と共に書き進めたいと思います。

建築的思考としての構造化

私が使う構造化という言葉の定義は一般的に明確にされているわけではありません。コンピュータープログラミングの世界や自閉症の子供達の教育現場などでよく構造化という言葉が使われるようですが、それらは私がビジネスや組織作りにおいて重要視すべきだと考えている構造化定義とは少しニュアンスが違います。私は元大工ですから、そもそも思考が建設的(建築的)というか基礎、土台から組み立てて全体を構築する思考が身体に染み付いており、長年の積み重ねでそれは建築実務だけではなく、思考全体に及んでしまっています。分かりやすく例えて言うと、起業した際の下請け職人集団から数年が経ち、自分等で受注のコントロールが出来るようになりたいと元請け工務店を目指して業態変更をした時、全体像としては地域の住民からひっきりなしに問い合わせが入り、新築やリフォーム、お店の改装工事などの注文が安定的に入る状態を目指すわけですが、まずは基礎を固めるところから、と、非常に遠回りの様に思われると思いますが、職人の正規雇用での採用とその人的質を高めるための教育から始めました。BtoBからBtoCへの業態転換を測る際に一般的には集客に特化して宣伝広告やプロモーションに注力されると思いますが、構造化思考からすると、せっかく仕事を依頼頂いたお客様をがっかりされるようなことをしては、たとえ受注が取れ始めたとしても長続きすることなく、足元から崩壊してしまうと考えて構造的に安定する選択をしてしまうのです。

パルテノン戦略は構造化思考

物事の全てを建物に模して考えるわけではありませんが、毎年の事業計画も常に事業所が持続的に安定する形を整えて、大きな外部環境の変化にも倒れないようにする構造化から導き出しています。一昔前のマーケティング界隈では「パルテノン戦略」と言われ、事業を支える柱を多く作ることで安定的で持続可能なビジネスモデルが構築できると言われていました。その思考がまさしく、事業の構造化であり、柱の数を増やすのか、それぞれの柱を強固なものに補強するのか、屋根を軽くして激震に耐えやすくするのか、もしくは地盤そのものに目を向けて改良するのか、その一つずつが短期間の行動計画になり、目の前で取り組む業務になるとの位置付けです。
しかし、全体の構造化を意識してもしなくても、実際の業務における課題や問題解決は同じように表面化しますし、それに対処する形でも事業は進んでいきます。仕事は大まか緊急で重要な事柄で埋め尽くされており、足元の水溜りを避けたり、頭に降りかかる火の粉を振り払ったり、目の前の人の笑顔のために一生懸命に努めたりの繰り返しです。ただ、同じことをするにしても、その行動が構造のどの部分を補強して全体を強くしているかの視点を持つのと、持たないのとは長年の時間の経過と共に大きな違いが生まれるのではないかと思うのです。その視点こそが螺旋的成長の方向性を見出す鍵だと思っています。

一年の計は春にあり

私が主宰している私塾「継塾」で毎年、年の初めの開催の参加者の皆さんにせっかくなので一年の抱負や計画を発表してもらっています。その際に一年の計は春にあり、との諺と一緒に引用している『管子』權修にある私が大好きな漢文があります。管子とは中国の思想家、管仲の著書と言われていますが実際は戦国時代末から漢代にかけて何人もの論文をまとめたものらしく、政治・経済・文化などが幅広く儒家・道家・法家・陰陽家など多くの思想的立場で記述されています。その影響力は絶大で、三国志の英雄、曹操や諸葛孔明に重用されたのをはじめ、日本でも、黒田官兵衛、二宮尊徳、上杉鷹山、西郷隆盛、山田方谷、渋沢栄一と、私が尊敬し、熱心にその生涯を辿って書籍を読み漁った人たちが学んだ源流だと言われています。その管子にある短期と中期、そして長期の計画を立てる意味を説いた文章では、人を見出し育てる人材育成こそが大きな成果を生み出すと書かれています。この思考こそが構造化だと思うし、時代を切り開いてきた偉人たちは皆、構造化を思考の中心においていたのではないかと考えています。

一年之計、莫如樹穀。 
十年之計、莫如樹木。 
終身之計、莫如樹人。 

一樹一穫者穀也。 
一樹十穫者木也。 
一樹百穫者人也。 

我苟種之、如神用之、舉事如神、唯王之門。
『管子』權修より

持続可能性とは計画と実行と構造化

「事業とは?」との根源的な問いをシンプルにまとめ直すと「計画と実行」に尽きます。あるべき姿、理想の状態を強烈にイメージしつつ、その実現に向けてどうすればそれが叶うかを考えるのが計画。綿密に計画すればするだけ成功、目標達成の確率は高くなります。そして、その計画通りに実行することは計画することより重要です。実行できる計画を立てることは孫子のいうところの「敵を知り己を知れば百戦危うからず」に通じると思いますが、計画と実行が完璧に出来れば事業は確実に理想の実現、理念の体現に近づくものです。ただ、人が一人で行えることは極々僅かで、人は同じ志を持つ、方向性を共にする人たちと協力しなければどんな事業も前には進みません。ここに実行可能で長期を見据えた計画の難しさ、計画通りの実行の困難さが生まれます。おいそれと事業における理想の状態を手に入れることは出来ないのが現実ですが、そこに横たわる数多くの課題や問題を解決するのもやっぱり計画と実行なわけで、無計画で行き当たりばったりでたまたまうまく行くこともあるでしょうが、持続性と言う部分では大いに疑問が残ります。
逆転の発想、最近流行りのバックキャスト的に考えれば、今、世界中で求められている持続可能性を高めるには構造化に基づいた計画と実行を行うことに集約されると思うのです。次回は、具体的な社会課題の解決についての例を紐解きながら構造化の効果性について考えてみたいと思います。

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