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陽のあたる場所 〜学歴マイノリティーの救済〜

私は、中学校もロクに通っていない、学歴社会から完全にドロップアウトした少年期から青年期を過ごしました。真面目に学校に通う同世代の人たちとはかなり違う体験を色々と出来て、面白いことも、辛く、悲しいことにも数多く遭遇したのは、それはそれで悪くなかったし、今となっては後悔しているわけではありません。しかし、実際17歳の若さで社会に出てみたら就職する先は非常に限られており、その当時、自分は選択肢のない人生を歩むのだと思い知らされたのも事実です。当時私が選択することができたのは、飲食業、運送業、建設業、後は詐欺まがいの営業職ぐらいで、どこもブラックすぎる業態。明るい陽のあたる場所では生きていけないのだと思っていました。同時に、学歴偏重の社会に強い憤りを感じており、その原体験が現在私が職人育成、建築業界の改革に力を注いでいる原動力になっていると思います。

意外に多い学歴マイノリティー

現在、日本の高校への進学率は98.8%にも上ります。ほとんどの若者は高校進学の道を進むのですが、私のように高校を中退してしまう、もしくはh不登校になってしまう学校に馴染めない生徒も一定数おり、中退社と不登校の生徒を合わせると全体の2.9%で90,000人にも上るとのことです。そしてそのほとんどが社会に出たあと正規雇用されることなく、フリーター、アルバイト、人材派遣会社に登録する期間労働者として働いているのが現状で、不安定、不透明、複雑、曖昧なVUCAな世界の住人になってしまい、未来に希望を持ち安心して暮らせる陽の当たる場所とは無縁な状態にあるようです。この数字に触れて、若かりし頃のどうしようもない閉塞感に包まれていたときの苦い感情がこみ上げてきました。

ポンコツの自分への絶望

私は17歳で、何の目的もなく学校に通っていても時間の無駄だと気づいて突然高校を中退しました。狭い神戸の街から飛び出して東京や信州、北海道等を転々として19歳になって神戸に舞い戻ってきた時、全く働き口がありませんでした。何とか見つけたのは日当5000円の深夜の道路工事の交通整理の仕事。真冬の深夜から明け方までほとんど車も通らない道路に立って赤色灯を振り続けるだけの仕事は、本当に辛くて、自分がこの世に生きている価値など全くないのだと思い知らされました。体の芯まで冷えきってた中、いったい自分は何のために生まれてきたのかと自問自答を繰り返しましたが、もちろん答えは見つからず、この暗闇の中で生き続けるしかないのかと打ちのめされたのを今もよく覚えています。

光が見えない人生

将来に全く希望も光も見出せず、今一瞬だけの刹那に生きるようになってきたのがその頃で、先の事など全く何も考えず、酒に溺れた挙句、肝臓をつぶしてしまいました。医師にお前は40歳で死ぬ、と死亡予告をされながらも泥沼のような最低の暮らしから抜けだそうと必死でもがき、唯一、私が人並みに金を稼ぐことができる肉体労働に就き、その当時、化けもんのような体力がないと続かないと言われた佐川急便に潜り込み、ようやく人並みの稼ぎ(20歳で年収1千万円)を取れるようになりました。しかし、佐川急便の先輩たちは皆、体を壊して退職しており、結局自分も肉体をすり減らしているだけなのだと気づいて、そうなる前に将来の展望が見える仕事につきたいと25歳で大工見習いへの道へ進みました。

起業してもダークサイド

25歳で大工の修行に入り、また日当7000円の極貧生活に戻りましたが、私を拾ってくれた親方や先輩、周りの人たちに恵まれて5年ほどで建て売り住宅の手間請負をするようになり、佐川急便時代と稼ぎは変わらない位まで戻りました。しかし、結局、早朝から夜遅くまで体と神経をすり減らしながら働く毎日で、病気や怪我、長雨が続くだけで収入がなくなる不安にいつも苛まれていました。そんな頃に子宝に恵まれて娘が誕生しましたが、この子を人並みに大学卒業するまで育てることができるのか?と不安が増すばかり。とにかく稼げる時に稼いでおかなければと、一切、家庭を顧みず、休みもなく働き続けました。大工として独立しても陽のあたる場所には出ることが出来なかったのです。

陽の当たる場所

個人事業主の大工として起業した後、必死になって働いたこともあり、徐々に仕事の量も社員の数も増えて、2年後に法人を設立、その3年後に現在の株式会社四方継の本社ビル竣工と同時に下請け工事会社から元請け工務店へと転換しました。それと同時に、それまで厳し過ぎる労働環境で働き、私についてきてくれた大工の若衆達を正規雇用に切り替え、法律をちゃんと守って職人でも安心して働ける環境を整えました。私が、漸く陽のあたる場所に出れたと感じたのはその時です。若い頃からどん底のような暮らしから抜け出したい、金を稼ぐことしか目もくれず、闇雲に働いていた時は、将来の展望など全く見えない、ダークサイドの住人から抜け出せなかったのが、周りの人の幸せのために働こうと決めた瞬間から未来に光が差すようになりました。

建築業界にある光

人間誰しも108つの煩悩があると言われます。金だけ、今だけ、自分だけよかったらそれで良いと言う思考に陥ることが誰でもあると思います。少なくとも私自身はひどいものでした。しかし、人間誰しも良心を持っており、それに従うことでダークサイドから抜け出し、陽の当たる場所に出られるのだと思います。私を拾い、救ってくれた建築業界には、(私のように)俺なんてどうせポンコツだ、と思い込んでいる自己肯定感がない人を引き戻す、隠れた才能を開花させる可能性が確実に存在します。学歴偏重の今の世の中で、完全なマイノリティーになってしまう中卒、高校中退の3.1%、12万人の若者に是非とも一度ものづくりの楽しさと素晴らしさを体験して、自分の中に存在する隠れた才能に気づき、発揮してもらいたいと思うのです。そんな若者たちが安心して、前向きに門を叩けるそんな建築業界に変えたいと密かに考えています。

社会課題解決の提案

ちなみに、現在の20歳以下の大工見習いは全国で2000人、学歴社会からドロップアウトした若者たち12万人が建築業界に入職してくれるようになれば、災害復旧の遅延や設備投資の停滞など、広い範囲に悪影響を及ぼし緊急で重大な社会課題になりつつある圧倒的な職人不足は解消されます。建築業界を学歴マイノリティーの受け皿にできるように、一緒に陽の当たる場所へと変革に取り組んでもらえる方を募っています。建築業界に恩義がある、私と同じ志を持っている方からのご連絡を心からお待ちしております。

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職人の社会的地位向上のための具体的な取り組みをワンストップでサポートしています。

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