相反しがちな関係と結果の質への向き合い方 〜選択の自由を取り戻せ!〜
以前、このnoteで混迷を深める現代社会では単純な二者択一、二項対立の思考では解決出来ない問題や課題が数多く有りすぎる。劇的な時代の変化に適応するには「どちらも行う」二項動態的思考を持つことが重要である。と書きました。この概念は野中郁次郎先生の著書「野生の経営」でも取り上げられており、最近になって違和感なく受け入れられる方も少なくなってきているのではと感じています。しかし、思考の中での問答ではなく、実際に市井に生きてみると選択を迫られる場面に出くわしたり、相反する二項を示されたり数多くの矛盾を感じたりするものです。そんな際、観念の世界と現実は違うと諦めてしまうのではなく、事実を噛み締めてもう少し奥にある本質を探究することが大事だと感じます。特に、複雑な世界をわかりやすくするために単純なフレームに当てはめて考える際は注意が必要だと思っていて、そもそも世界は複雑に絡み合い、表裏一体で作用しあっているものであり、そんなに簡単に出来ていないとの認識に立って考えた方がいいと思うのです。
結果の質は関係性の質に由来する
昨日、経営実践研究会なる団体のリーダーたちが集まる会議がありました。地域企業が組織を作り、事業で社会課題を解決して持続可能なより良い世界への変革を推し進めることを目的にしたこの団体は、非常に志の高い人達が集まっていていつも熱い議論が交わされます。そんな場に、ティール組織の実践先駆者として有名な武井浩三さんがゲストとして参加してくれて、最先端とも言える組織論についてレクチャーを行ってくださいました。自律分散型の新しい形態の組織を作る指南書として、武井さんが出版に関わられて、無料配布されているDXOは弊社でも事業承継プロジェクトで活用させてもらっておりまして、その冊子の冒頭に書かれている組織作りにまず必要なのは「関係性の質」とあります。昨日もまずその一節を紹介いただいて、成果から追い求めるのではなく、関係の質を高めることに注力すべきだとの、MIT組織学習センター共同創始者のダニエル・キム氏によって、提唱された成功の循環モデルをご紹介くださいました。私も大いに賛同して、社内で関係の質の向上に取り組もうと、スタッフ達と繰り返し話し合う機会を設けています。
どちらか、ではなくどっちも
このフレームを見れば、結果の質にこだわるところから組織を作るとマイナスにサイクルに陥り組織形成がうまくいかない。との単純な結論を導いてしまいがちです。結果にコミットして行動要請するなんて、前時代的で古臭い、と思われる人も多くいるかもしれません。しかし、組織には様々な形態や属性があり、明確な目的を持たない地域のコミュニティー、非営利のNPOやNGOの団体と、営利企業や目的を持って経営者が集まる団体を同じフレームに押し込んでしまうのはあまりにも乱暴です。そして、全く結果が追いつかないと組織は持続出来ずに破綻してしまうのも事実です。関係の質と結果の質のどちらを選ぶのかは、やっぱり二項対立ではなく、どちらも選ぶ二項動態的思考を持って向き合うべきだと思うのです。
相反する二項に対してどう向き合うのか、とても難しい問いですが、本質的な価値や組織の存在意義に目を向けることで相反する2つの価値観の中に共通する最大公約数が存在することに気がつくのではと思っています。
選択は二者択一ではなく常に自由
確かに、関係の質を改善すると思考の質、行動の質が変わり結果の質を向上させる、それがさらに関係の質を高めることに寄与する成功サイクルは「良い組織」を作る上でとても効果的です。また、失敗サイクルの例として挙げられている、結果の質にコミットして関係を変えて、思考を改めさせて、行動を要請するとその組織に属する人達の主体性や自律性が損なわられていき、組織は疲弊し、持続出来なくなってしまいます。これが間違っているとは全く思いませんが、選択はこれだけではないのも理解しておく必要があります。規模拡大や収益の増加、目的の達成などの「最終結果の質」をプロセスを無視して一足飛びで目指すと行動要請は軍隊式になりがちですし、非常にリスキーで無謀で人のテンションを下げさせます。しかし、ある程度、成熟した大人が集まる場では結果も大事なのは暗黙の了解として認識していますので、それを踏まえて「結果の質」という成果や目標を細分化して、その一つに関係性の質を高める目標設定を行うこともできます。選択は自由だし、人は一度に一つのことしか出来ないほど能力は低くありません。もっと人を信じてもいいと思うのです。
二項動態思考の先にあるのは三方よし
少し屁理屈をこねるような表現になりましたが、成果とプロセスは常に表裏一体ですし、切り離して考えても意味はありません。理念と経営、論語とソロバン、顧客満足と社員満足等々、表面的に二項対立に見えるものも実は表裏一体であり、どちらも相互補完の関係性にあるのがこの世の真理だと思っています。そして、日本には世界に誇る三方よしの経済観念が根付いており、この厳しく難しい理想を実現するために多くの事業家が様々な工夫をしてきましたし、現在もその歩みは止まっていません。そんな観点から俯瞰してみると成功サイクルの概念を持って、目標にコミットする二項動態思考を用いるのは不可能ではありませんし、結局、関係性の質を高めることに寄与する可能性もあると思うのです。世の中はすべからず表裏一体、全てに良いも悪いもなく、ただ事実を噛み締めて、咀嚼し、より良い選択を工夫する。そんな思考というよりも在り方を持って、現在の閉塞感漂う混迷の時代を行きたいと思うのです。
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とても難しいですが、四方良しの世界の実現を目指して奮闘しています。