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迎合はいらんけど、寄り添いは必要 〜Z世代のなりたい仕事は会社員を考える〜

この世界は、悠久の時を経ながら、大きな変化を繰り返してきました。生き残り、発展した生物は決して強かったのではなく、変化に対応して自らを変えてきたもの。変化に対応できなかったものは滅んでいくのが自然の摂理。そのように考えれば、大きな時代の転換期を迎えている今、事業や産業は、次世代を担う若者の意識変化に対応して姿、かたちやあり方を変え続ければならないのだと思います。

Z世代の想像を超える知識量と精神性

Z世代と呼ばれるいまどきの若者たちは、私たち昭和時代を生きてきたおっさんたちとは、根本的に考え方や価値観が違うのは明らかです。あらゆる情報がスマートフォンで手に入り、またまことしやかに流れるニュースも情報操作されているかもしれないと、批判的な目を持っているのは、私たちが思っている以上に、子供たちは、私たちの想像を遥かに超えた成熟した精神性を兼ね備えて、混迷を深め、閉塞感がはびこる世界を見つめているのかもしれません。子供だとナメていては痛い目に合うと感じることが最近とみに多くあります。

なりたい職業ナンバーワンは会社

毎年恒例の子供たちへの将来何になりたいか?との意識調査の結果が先日発表されました。第一位になっているのはなんと「会社員」でした。非常に抽象的な職業を子供たちは選択したのだとの印象を持ちました。テレビのニュース番組ではコロナ禍で、自宅でリモートワークする親を見て出勤もせず、気楽で意外と自由な良い働き方ができるのだと思ったのではないか?との憶測が語られていましたが、要するに、自分の力で人生を切り開くような時代ではなくなり、守られて、安心して、それなりに自由に自分の都合に合わせて働いたり暮らしたいとの願望が強く出ているのかもしれません。

迎合ではなく、理解と許容と寄り添う心

そんなZ世代の若者たちが、これから社会に出てくるようになり、私たちはそんな彼ら彼女たちに事業の継続を任せねばなりません。彼らの意向に従って迎合するわけではありませんが、全く違う価値観を無理に押し付けたところで誰も来てくれないし、若者が全く集まらない業界や業態は衰退するしかありません。決して迎合するわけではありませんが、私たちとは全く違う彼らの思考や価値観に理解を示し、寄り添った働く環境を実現するしかないと思うのです。今時の若いもんは、と嘆いたり愚痴ったところで何の解決もありません。

職人はそもそも、自由な職種

私は大工と設計士だけが社員として在籍するものづくりの会社を営んでいます。現場で建物を作ったり直したりするのが主たる生業で、設計業務は別として大工にリモートワークは基本ありません。今の若者に受け入れられない業態だと思ってしまいがちですが、働くことの本質を見ればそうでもないのではないかと考えています。自分自身の経験から、現場でのモノづくりは単純に楽しいし、責任が重い分、やりがいもある。そしてキャリアを積めば、指示された作業を行うのでは無く、自分の頭で考えて、設計も現場全体のマネジメントも顧客とのコミュニケーションも出来るようになり、顧客や関連の取引先から直接感謝を伝えられる事も少なからずあります。一定の経験とスキルが必要ではありますが、職人は意外と自由な働き方が出来るのです。

職人であり会社員は安定と自由が手に入る職業

また、業界全体から見ればまだまだ少ないですが、職人といえども正規雇用で他業種と引けを取らないというか、常識的な福利厚生を完備しています。大工と言っても会社員であり、しっかり守られている状態で安心して働ける環境を整えています。会社員になりたくて、自由な働き方がしたくて、人様に喜ばれるやりがいのある仕事を求める若者には、ぴったりの職場だと(手前味噌に過ぎますが)思います。
ただ、建築業と言う枠組みで第三者から見られたときに、そんなまともな働く環境を整えているとは思われない現実があり、その社会的認知を私たちは変えていかなければなりません。

ブラック・グレーイメージの払拭

間違いなく、世間一般では建設、建築業を営んでいる事業所は、所詮、ブラックかグレーだろ。と思われています。そのイメージを払拭するため、昨年、私たちは未来創造企業の認定を受けました。それは、従業員、取引先、顧客、地域、社会、地球環境のそれぞれに対して配慮して負荷をかけることなく、共有価値を創造しているかを問われます。その指標をチェックリストで数値化し、認定を受ける制度で、厳しい基準をクリアしたことを第三者機関から認定されます。この認定取得
が建設業界で普及すれば、名実ともに若者に支持される業界へと生まれ変われるのではないかと思っています。

大きく変わりつつある建築業界

この春、十数社の建築事業所と一緒に立ち上げた職人育成の通信制高校、マイスター高等学園を運営するマイスター育成協会では、子供たちを受け入れる事業所の基準として、この未来創造企業認定を義務化しています。その流れもあり、昨年末に30社ほどの新たに認定された事業所の中で、3分の1が建築関連の会社でした。これは、実に大きな変化だと私は感じており、まともな会社がまともであると胸を張って声を上げれる時代がもうすぐやってくると思っています。建設建築の事業所は、社会のインフラを守る重要な役割を担っており、そもそも地域に貢献する事業です。あとは今まで曖昧なままやり過ごしてきた労働関係の
法律を遵守して、人を育てる仕組みを整え、自分たちが価値提供していることを正しく伝えることができれば、良い会社だと認められるはず。この認定企業が増える事で業界に対する認識は大きく変わると思っています。おのずと、私が事業の際に、ミッションに掲げた「職人の社会的地位向上」も必ず前進します。子供達にいきがいのある仕事の選択肢を増やしたいと思うのです。

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職人不正の学校から、職人のキャリア教育、採用まで幅広く相談にお答えしています。


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