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土地購入で留意すべき4つの課題② 〜安くて高い土地、高くて安い家〜

巣ごもり需要爆発。

昨日のニュースで家電製品の売り上げが好調との報道がありました。なんでも巣ごもり需要らしいのですが、その余波か、昨年の秋口から全国的に新築住宅、特に注文建築の需要が高まっており、最近は木材などの材料も品薄になり、また(便乗値上げの疑念もありますが)価格も高騰し始めています。本来、消費税増税の煽りを受けて新築需要は大幅に落ち込むと予想されていましたし、コロナの影響による世界的な不景気が高額商品である住宅業界に暗い影を落とすと囁かれていたにも関わらず、現在のちょっとしたバブル的な住宅業界の盛り上がり方は奇妙な印象もありましたが、冷静に考えれば、ITや通信業界はコロナのおかげで活況を呈していますし、飲食業界は悲惨とも言える決定的な打撃を受けましたが、人間の胃袋の大きさが小さくなったわけではなく、食品業界全体で見ると影響は限定的との見方もあります。また、公務員やインフラ事業などの安定的な職業に就く人の所得には全くコロナの影響を受けていません。その割には国から給付金や補助金がじゃぶじゃぶと支払われて、市場全体のマネーがダブついているのかも知れませんが、他業種に比べて住宅業界、特に注文建築と言われる持ち家の供給業者は随分と忙しくなっています。私達、株式会社四方継 つむぎ建築舎でもその例に漏れず、昨年の秋口から新築の問い合わせや相談が相次いでおり、大変忙しくさせて頂いています。こんなご時世にほんにありがたいことです。

土地購入で留意すべき4つの課題その2

新築一戸建ての住宅の取得の相談を受ける中で、土地探しのサポートのご依頼を数多く頂きます。需要が高まっていることもあり、現在、神戸界隈では本当に売りの物件が少なく、売り土地の飢餓状態というと大げさかも知れませんが、新たに公開される売り物件は1ヶ月も経たないうちにあっという間に売れてしまう状態です。非常に土地探しがしにくい状態になっているのですが、こんな時こそ、慌てず落ち着いて、冷静な判断で後悔しない物件取得を心がけて貰いたいと思い、昨日から土地の取得についてのコラムを書くことにしてみました。私は神戸で設計士と大工のみのスタッフで自社設計、自社施工の建築事業を行なっており、不動産事業は行なっておりません。しかし、住まい手と一緒に二人三脚でものづくりを行う聴き手(設計士)紡ぎ手(大工)の立場だからこそアドバイス出来ることがたくさんあり、せっかく理想のライフスタイルを実現しようと、建売りや決まったプランの組み合わせの既製品的なプレファブ住宅ではなくオリジナルで理想のライフスタイルの実現する場所としての住宅の取得を目指す方に少しでも参考になればと思い筆を取る事にしました。昨日は不動産購入時に留意すべき4つの課題の1回目として、1.その土地は世界で唯一無二でであること。2.不動産仲介業者等の専門家と目的の共有がなされないこと。について書きました。タイトルにある様に、目的を明確にし、それを理解してサポートしてくれる専門家とパートナーシップを組んで土地探しをするべき理由を述べています。4つの課題と昨日の記事はこちら。今日はその続きを書き進めたいと思います。

土地購入で留意すべき4つの課題
1.その土地は世界で唯一無二でであること。
2.不動産仲介業者等の専門家と目的の共有がなされないこと。
3.未来のリスクが分かりにくくしかも不確定要素が払拭できないこと。
4.販売(購入)価格が本当の土地の値段とならないこと。


3.未来のリスクが分かりにい、しかも不確定要素が払拭できないこと。

不動産に当たり外れなし。
とは住宅業界でよく口にされる言葉です。高い物件には高い理由が、安い土地には安い理由があるし、市場の価格もそれをよく反映されているという意味だと思いますが、私の長年の経験則から申し上げると、アタリもハズレもあります。数年前、弊社のすぐ近くに里道という市の所有する土地が絡んで認定道路との接道が取れない、面倒な条件の土地がありました。他の土地とあれこれ検討しているうちに、神戸市からその里道の売却が持ちかけられ、キレイな条件の土地になったのですが、以前から検討、交渉していた為販売価格は据え置きのまま購入することができました。

地盤のリスク
また、神戸の震災の後、老朽化した古い店舗を建て替えようとしたところ、地盤が軟弱との問題が浮上して、数百万単位の杭工事が必要となり、当初の資金計画が大きく崩れたこともあります。地盤のリスクについては最近は近隣データーを検討することで土地の購入前にある程度リスクの想定をすることができる様になりましたが、その当時はとにかく地盤調査をしてみないと何とも言えないと建築の計画を進めていました。

高低差で費用が大きく変わる
地盤の問題で地耐力よりもっと分かりやすいのは土地の高低差による擁壁の必要性の有無です。古い、強度が明確にわからない擁壁に建物の荷重を載せるわけにはいきませんので、古い擁壁がある場合は造成時の情報を集めて耐力のエビデンスをとったり、若しくは建物の基礎を深くしたり、擁壁を作り直したりします。今まで、土地を先行して購入した後、建築計画の段になって擁壁が意外と金額がかかる事に気付かれる人も多くおられましたが、建築の知識が無いまま高低差のある土地を検討するのは大きなリスクが伴います。

環境変化のリスク
地盤関係以外にも周辺環境が変化する可能性もあります。先日、購入を決めようと現地確認に行った物件で、たまたま周辺の土地一帯に太陽光発電のパネルが設置されるの計画が進行しているのが分かって、申し込みを取りやめられた方がおられますが、その計画を知らずに購入していたらきっと後悔されていたと思います。(仲介の不動産会社の担当者はその計画を知っていましたが、私が訊くまで黙ってました。)その他にも、今後、高齢化、人口減による影響で交通の便の悪い郊外の高級住宅街の地価が下落する傾向が強まっており、突然、資産価値が半分になってしまった。という事例も既にあります。とにかく、土地の対する不確定要素は多く、売り手側だけの情報で購入を決めてしまうのは非常にリスキーだと言えます。

4.販売(購入)価格が本当の土地の値段とならないこと。

土地選びはエリアから
土地の購入を考える時の最もはじめに検討すべきはエリアです。単純に場所の条件によって坪単価が大きく変わりますので、住宅にかかる総費用を把握した上で、取得する土地のエリアを決める事でおおよそ資金計画の実現性の見当がつきます。災害に対するリスクもハザードマップで確認して、洪水や土砂災害の起こる危険性が低いエリアを絞るべきです。次に同エリアで資金計画に見合う価格や大きさが横並びの土地があった時、比較検討する材料として、角地などの道路との関係や日当たりの良い南向きかどうか、また、窓から見える景色が気持ち良いものか?などの条件を並べて考えます。

窓の大切さ
特に、私が大事にすべきだと思うのは、窓からの景色です。隣や道路向かいの家しか見えない窓は結局、年中カーテンを閉めて外部からの視線を遮断する事になります。また、冬場に太陽の光を室内に取り込んで家全体を暖めるパッシブデザインの考え方では南側に出来るだけ大きな開口を設けてダイレクトゲインと言われる、直接の太陽熱を取り入れるのが基本になりますが、窓を開け放つと向かいの家から丸見えではせっかくの窓をカーテンで遮断してしまう事になりかねません。今時の高断熱高気密住宅で南側の窓を大きく設けて、冬場の日射取得をしっかりすると、暖房費の大幅な削減が見込めることをよく鑑みて、土地の選定はすべきです。

安い角地と高い両面道路の土地
ちなみに、先週、土地の選定の相談を受けて見に行った造成地では南側に家が建っている角地とその横の北と南に道路と接道している比較検討の意見を求められました。その方は角地の方が5坪ほど小さく、その分、両面道路の土地の方が180万円ほど高いのと敷地の中で段差があるので悩まれておられましたが、そもそも、当初の予算からすると、角地を選択しなければ少し予算オーバーになるとのことでした。私の見立てでは、角地を購入して家を建てると、南側の住宅とほぼ並ぶ形になり、南側からの冬の日射が全く入りません。逆に、両面道路に挟まれた土地は南側に駐車場を設ければ、非常に有効に日射取得が出来るのでこちらを強くお勧めしました。

安そうで高い土地
その住まい手さんに聞いたところによると、角地の方は人気で、自分以外にも3名ほどの問い合わせが入っているが、両面道路は価格が高い事もあり、人気がないとのことでした。180万円の価格差は実は坪数の差なので、同じ坪単価なら角地の方が価値があると思われるのかも知れませんが、180万円の価格差を35年で割ると年間5万円強となります。この5万円の差額を日射取得をたっぷり取り込んで冬の間も無暖房で過ごせる設計にすれば半分以上は取り返せます。180万円安い土地を購入しても暖房費で電力会社に毎月払えば結局同じ、初期費用を180万円余分に増やし、住宅ローンに組み込んだところで冷暖房費がかからなくなれば毎月の支払いは変わりません。全くお天道様の力を利用することなく暖房器具を焚き続ける、若しくは寒いのを我慢するよう家を買うよりも、広くて高くて景色がいい土地の方が結局、安くなる可能性が十二分にあります。

まずは、信頼できるパートナー探しから。

このnoteの「暮らしづくりマガジン」では家づくりは土地の取得や家を建てる事ではなく、「その後の新しい暮らし」こそが目的になるべきだと繰り返し書き続けています。今回の土地探し、土地の購入についてのコラムも着地は同じで、本来の目的(理想のライフスタイルの実現)を明確にする事から逆算して、どんな家で過ごしたいか、どんなエリアで暮らしたいか、どんな土地を買いたいか、と要件や条件を整理して、順序よく進める事によって、ここまで書いてきたリスクは大まか回避する事が出来ます。しかし、土地購入のリスクは非常に複雑に様々な問題が複合的に絡み合っており、一筋縄では片付きません。土地のことはもちろん、建築についても幅広い知識と深い経験を持ち合わせていないと、土地を見てどのような家が建つかをすぐには判断できません。ましてや、不動産専門の業者に相談しているだけでは表面的なセールストークに丸め込まれる事もあるかも知れません。これから暮らしづくり、家づくり、土地探しを始めようと思われている方には、とにかく、目的を共有出来る、信頼がおける専門家のパートナーを見つけて、進めてもらえればと思います。私のお勧めは、現場の事をよく知っていて、設計士としての知識と経験もあり、クロージングトークに長けた不動産業者にもおかしいことはおかしい、ダメなことはダメだと言える強さを持った人がいいと思います。そしてそんなおっさんは地域で活躍する工務店経営者に意外と多くおりますので、一度、近所の設計事務所を併設している工務店さんに相談に行かれて見ては如何でしょうか?意外と親切にサポートしてくれると思いますよ。(笑)

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