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志と根本的問題解決、持続可能性との深い関係性

現在、大阪で建築実務者向けの実践研修、職人起業塾の第20期を開催しています。全15回、半年にも及ぶこの研修では現場で顧客接点を担う実務者に、事業所の抱える根本的な問題解決へのアプローチを推し進めてもらい、持続可能なビジネスモデルの構築に寄与して貰うのが主たる目的です。

why&志

今回の第9講は私からのコンテンツのレクチャーとしては最後の講座でした。最後に伝えるのは最も大事なこと。だと前置きして始めた講義では、目的と手段を混同しない様にする「なんのために?」との問いを持つことの重要性を伝えると共に、塾生達の仕事の目的、志を明らかにするワークを行いました。また、事業所が掲げる事業の目的、理念や存在意義と自分の志との共通点を抽出して、自分がやりたいこと、やるべきことと実際に仕事でやっている事の整合性の確認をしてもらいました。研修を主宰している私としてはこれが最も重要なコンテンツとの位置付けで、福沢諭吉先生が額に汗して働き、家族を守るくらいでは人間としての目的を達してとは言わない。との厳しい指摘をされている「学問ノススメ」を紐解きながら目的意識を明確に持つことの大切さを繰り返し伝えました。

現状維持は緩やかな破滅への道

組織を作り、事業を行う中で様々な問題が起こります。その中でも事業を行う上で最大のリスクであり問題は倒産、破綻です。事業所自体が無くなってしまえば文字通り元も子もありません、そして、事業破綻した98%の事業所は売上の低迷が原因だったとの統計があり、その根本を突き詰めると集客の数と質の低下に行き着きます。世の中には様々な認知拡大や販売促進のツールがあり、現在、その主戦場はインターネット上になりました。情報革命の文脈では価値ある情報発信をすればスモールビジネスの事業所にもチャンスが巡る様になったとも言われますが、実はネット集客は大手が寡占化するシステムです。GoogleやAmazonに街のお店や事業所が勝てるはずは無く、長い視点で見るとスモールビジネスの事業所はジリ貧になるのは火を見るより明らかです。

お釈迦様の掌で暴れる孫悟空

インターネットを見るデバイスがPCからスマートフォンに代わり、溢れかえるほどの動画やSNS投稿が巷に溢れる中、HPでの情報発信が大した意味を持たなくなってしまいました。TwitterやInstagram、TikTokにYoutubeと次々に出てくる新手のSNSという名の認知拡大ツールを使いこなして目先の集客を行のが花盛りではありますが、例えそれで成果を挙げられるパターンを見出したとしても、SNSの運営会社がアルゴリズムを変更すればその勝ちパターンは一瞬にして霧散してしまいます。SNSは建築業界でもすっかりスタンダードな集客方法になってしまっておりますが、大手ネットサービスに頼ること自体、事業存続の根幹である集客を握られている事になり、本質的な持続的なビジネスモデルの構築には至りません。

原理原則、現場主義

では、この経営を持続するための根本的な課題に対してどのように向き合うか?その答えは現場にしか無いと私は考えています。インターネット検索は依頼先に心当たりがない人が行う行為であり、信頼出来る先が有ればそんな事をせずに、ダイレクトに声をかければすみます。要は、信頼に値する仕事を行い、ご縁があった方からは繰り返しの注文をもらい、そこから新たな紹介を得て新規顧客を獲得出来れば、本来、得意でもやりたいわけでも無く、建築会社の本業でも無い動画の撮影や編集を行う必要はありません。例えオファーがかかる顧客の数が少なくても、確実に受注出来る前提の質の高い集客が必要な数だけ出来れば、それ以上の集客は必要がありません。この原理原則、現場主義に基づいたストックビジネス的な売上の作り方こそ、建築会社が持続可能性を高める唯一無二の方法論さと考えています。

職人経営の強みと弱み

リピート受注、紹介での依頼を必要数得るには、圧倒的な信頼関係の構築とその継続が欠かせません。これを作り上げること立役者こそ、現場実務者であり、最終的に成果物として引き渡す現場で如何に満足を達成したか、そのプロセスとアフターフォローも含めて顧客に楽しく、嬉しい想いを渡せたかに全てはかかっています。建築事業所の評価は結局、現場にしかないのです。これが私が現場実務者を集めて研修を行なっている理由です。現場に張り付くプレイングマネージャー的な役割を担わない限り、経営者では現場満足を作り上げる事はできません。逆に見れば、経営者が現場で作業する小さな事業所は顧客との関係性を高める事が出来やすいですが、従来の職人が行う家業でありそれは属人経営の極みです。経営者と共に事業も生死を共にしますし、決して持続性があるとは言えません。

方向性なくして根本的解決なし

売り上げを作り続ける、それを担う集客を担保するには顧客らの高い評価が欠かせません。それには担当する者の顧客に喜んで貰いたいとの強い想いが絶対に必要ですが、もちろんそれだけでは成果を上げ続けることは出来ません。事業として成り立たせるにはプロフェッショナルとしての提案力や相互理解の為の仕組みやマネージメント、それ以外にも多くのタスクが存在します。そして、そのそれぞれのタスクに対する問題解決を積み重ねて、漸く顧客満足が得られる状態を整える事が出来ます。ここで重要なのは各々の問題解決はバラバラ、個別に行うべきではなく方向性が必要だという事です。
それが事業所が掲げる理念であり、存在意義です。この軸がしっかりしていれば、問題解決を繰り返しながら螺旋的な成長のスパイラルに入る事ができて、成果に結びつく状態を保てるようになるのです。

全員が志を掲げる必要性

組織を構成するメンバーが事業所が掲げる理念や存在意義を深く理解、共有できている事は基本ではありますが、その上で理念を現場で体現する実践者は自分が掲げる志や仕事の目的と方向性が同じである必要があります。全く違う目的のもの同士が同じ船に乗って、目的地に辿り着けるわけがありません。この整合性を明らかにするには改めて、自分の心に、何のためにこの仕事をしておるのか、この事業に関わることで何を実現したいのか?との問いを突きつけてみる必要があります。この答えを持った上で、あらゆる実務、作業、顧客に向かえば自ずと根本的な問題解決に進むと考えています。
経営を取り巻く環境はものすごいスピードで変化を繰り返します。目の前にある問題を解決したところで、すぐに次の課題が浮かび上がるし、時代の変遷と共に片付いたはずの課題解決の手法も秒速で陳腐化します。事業を持続、継続させとるとは、問題解決の螺旋階段を延々と登り続けるしかありません。この難題を乗り越えるには経営陣も実務者も何のために?との問いを持ち続け、志を掲げてその具現にに強い意志を持って立ち向かうしかないと思うのです。

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志の大切さを伝える建築実務者研修を行っています。

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