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とにかく、最も重要なのは目的だ。

昨日は神戸で開催している一般社団法人職人起業塾の6ヶ月研修、第18期の講座の講師を務めました。若い現場実務者に対して持続可能なビジネスモデル構築のための9つの概念をレクチャーして、それを現場で実際に行動に移してもらう実践研修も、そろそろ終盤に差し掛かり、今回は9つのステップの最後である「目的意識の重要性」について講義を行いました。
講座の冒頭に塾生の皆に私が伝えたのは、最後のコンテンツは1番大事だからこそ最後に持ってきているのだ、と言うことで、目的を明確に持つ事こそ、ビジネスモデルを構築するのに最も重要だと強く訴えました。

“Start with Why"

世界を良くするアイデアをプレゼンテーションするアメリカ発の人気イベントであるTEDはアーカイブがYouTubeで世界に配信されており、私たちも翻訳の入った動画をいつでもみることが出来るようになり、とても身近になりました。そんなTED動画の中でも非常に有名な神回として繰り返し観られている作品にサイモン・シネックの“Start with Why"があります。日本語に訳すと、「なんのために?から始めよう」という目的と在り方の問い直しがテーマとなっており、古代東洋思想の雄である孔子の言説をまとめた論語に始まり、日本で江戸時代に上杉鷹山公が実証し、二宮尊徳翁から福沢諭吉、渋沢栄一へと引き継がれ、日本の資本主義、商売観の基礎となった古典的マーケティング論への回帰が説かれていると私は解釈していて大のお気に入りで、昨日の講座でも18分フルで塾生に観てもらいました。

人は感情で行動を決める

「なんのために?」は目的と同時に在り方を質す問いであり、本質的な価値を生み出す事業(ビジネス)には欠かせない概念です。サイモン・シネックは脳科学の観点から、人の行動を促すのは言語や理論ではなく、感情であることから、What(何を)やHow(どのようにして)等よりも、どんな想い、どのような志を持って事業に取り組んでいるか(Why)に人は共感するし、心を動かされて行動を起こそうと判断するとTED動画の中で解説されています。実際、私達は自分のため、金儲けのために熱心に売り込まれると拒絶しますが、世の為、人のため、未来の為に事業に取り組んでいるのだと熱く語る人を応援したくなりますし、どうせお金を使うなら、そんな人のところで買って応援したいと思うのは別段特異なことでもなんでもなく、当然の感覚です。

良き意図が支援される社会

弱肉強食の新自由主義的なグローバル金融経済はどうやら解決できない社会課題を数多く内包しており、今までの延長線を突き進めば極限まで格差と分断が広がっていくと世界中の人が気がつき始めました。世界の頭脳が集まるダボス会議では一旦、今までの流れを断ち切って(グレートリセット)新しい資本主義への移行を模索しています。そんな流れの最も顕著な例が国連で採択されたSDGsの17の目標に対して世界中の国々が取り組みをスタートさせたことであり、欧米諸国ですごい勢いで存在感を増しているESG投資やソーシャルバンク(社会課題の解決に目的を限定した投資を行う金融・投資機関)の台頭です。世界で「良き意図」「目的」に対して資本が集まるようになりつつあるのです。それらの現象は要するに「なんのために?」との問いに対する答えが、社会を良くする目的を明確に持っている人や企業が支持される社会へと移行していることを表しています。

理念と経営

サイモン・シネックがTEDでこのプレゼンテーションを行ったのが2009年、実はそれから10年以上が経っているのですが、彼が発見したというシンプルな概念が今、まさに世界中で受け入れられようとされているかのようです。
しかし、良き意図を持て、目的を明確にすべしとは、そもそも日本の商売観として江戸時代の昔から現代へと脈々と受け継がれてきている考え方であり、近江商人の三方よし、渋沢栄一の論語と算盤、日本で最も多く読まれた本として有名な福沢諭吉の学問のすゝめの中に書かれてある、次の世代により良い世を残すべく「目的を達しなければ万物の霊長たる人間としての目的を達したものとは言えない。」との激しい言葉、二宮尊徳翁の「道徳なき経済は罪悪であり、経済なき道徳は寝言である」等々、社会に蔓延る問題を解決してより良い世界を実現し、世の中を少しでも良くして次の世代に引き継ぐべきとの考えは経済活動の基本として深く私たちの中に浸透しています。そんな世界に冠たる日本の商売観を実践してきたと自負する私としては、これからの建築業界を担う若者達には暑苦しくもしつこく繰り返し、とにかく目的を持って仕事に向き合おうぜ、と仕事をする上で最も大事な事として伝え続けたいと思っています。

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