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プリンちゃんにみる良知

老若男女誰もが知る国民的人気作品として著名なワンピース。多くの人が一度はコミックで読まれたり、アニメで観られたりしているのではないでしょうか。現在も少年ジャンプの看板漫画として連載が続いている様ですが、超大作過ぎる連載に挫けてしまい、途中で諦めてしまった人も多いかと思います。私もその一人でしたが、少し前にワンピースがとうとう最終章に入ったとの噂を聞きつけ、最終話に足並みを揃られたらいいなー、と考え、最近、夜な夜なNetflixで追いかけています。久しぶりに観てみると、やっぱりドキドキワクワクの連続で面白いと同時に、様々な深い示唆を与えられる作品だと再認識しました。子供から大人まで夢中になるのもなるほどです。

サンジとプリンちゃんの物語

現在、私のワンピースでの冒険?は主人公のルフィ達がホールケーキアイランドの四皇と言われる世界最強クラスのビッグ・マムの縄張りに仲間の料理人サンジを助け出しに行き、強大な力を誇るビッグ・マム海賊団と戦うくだりに進んでいます。事の発端は王族の血を引くサンジがビッグ・マムの娘プリンちゃんと強制的に政略結婚することになり連れ去られたところからで、私はこのプリンちゃんのキャラクターの作り込みに唸らされました。随分と人の心の奥底をめくり上げる描写と、人の心の本質的なあり様の示唆が埋め込まれていると感じたのです。
サンジは強制的に結婚させられそうになり、当然、拒絶するのですが、結婚相手のプリンちゃんの見た目の可愛らしさと良い娘すぎるくらいの素直さ、親切さに心を射抜かれてしまします。政略結婚を断ると仲間や恩人に害が及び迷惑がかかる状況に陥り苦悩している最中、プリンちゃんの健気な優しさに触れて「君だけが救いだ、結婚しよう。」とプロポーズしてしまいます。

地獄の様な屈辱と恥辱

その直後、プリンちゃんは自室に戻り、探りを入れていたサンジの姉を捕らえて、前髪に隠れていた第3の目を晒し、化け物のような表情になって、その本性を表し、サンジを出来損ないだと罵り、バカをコロッと丸め込んだと嘲笑います。たまたまサンジはプリンちゃんの為に夜食を作って持っていき、衛兵に取り込み中だと断られて外の窓に回ったところで、あのバカがプロポーズしやがった、との嘲笑を耳にします。また、結婚式当日に私がサンジを射殺するのだと計画を漏らします。
地獄のような屈辱とも言える、唯一の救いだと心を開き、結婚を決意したサンジにとって、これ以上恥ずかしく、悲しく、辛い出来事はあり得ないほどの厳しすぎるシチュエーションの演出に、サンジの絶望に思いを馳せて私まで心が痛みました。子供に見せるのも憚れる様な、現実の世界に実際に存在する大人の男と女の駆け引きというか、人は見た目や表面では分からない悪魔を心の中に住わせており、人を信じることに対して恐れを抱き、臆病になってしまう様な酷いストーリーです。

結婚式で殺す計画

サンジとプリンちゃんの結婚式当日、花嫁のベールをめくって額に醜い3つ目があるのをみた瞬間にサンジが怯んだタイミングでプリンちゃんはサンジを拳銃で撃つ段取りになっていました。しかし、サンジは目が3つある、子供の頃から化け物だと忌み嫌われてきたプリンちゃんの素顔を見て、怯むどころか美しいと称賛します。自分でも醜いと思っていた3つ目を何の違和感もなく受け入れるサンジに対して、プリンちゃんは衝撃を受けて、サンジ殺害の計画を実行できなくなってしまします。それどころか、母親でもあるビッグ・マムを裏切ってサンジの手助けをする側に回ってしまいます。
決してサンジが善人でビッグ・マムが悪人、プリンちゃんが善人に改心したという訳ではないのですが、偽りの天使の顔と悪魔の所業を躊躇なく行える最悪の二面性を持ったプリンちゃんも、醜く、悪人のセルフイメージを遥かに超えて自分を受け入れてくれる人が現れた時、悪魔の面が溶けて、可愛くていい娘に戻る、救われる様な展開に心を撫で下ろしました。

天使の心を持っていたプリンちゃん

私は、この4月から新しく職人育成の通信制高校を設立します。その学校は中学校を卒業して入学するのはもちろんですが、高校に進学したのちに中途退学した学生も随時受け入れます。また、入学試験は面談と作文の提出のみで、中学時代の成績や内申点など全く関係なく、たとえ通学していなかった不登校の若者でも幅広く受け入れることを明言しています。
その教育理念に掲げているのはタレンティズム(才能主義)であり、王陽明が伝習録に主たる概念として書かれていた、孟子が惻隠の情として現した「良知」です。人は誰も生まれながらに良き心持っていて、それを素直に表出することができれば、必ず人からの信頼を集めることができる、信頼が集まるところには経済的な価値も必ず生まれるとの理論です。
圧倒的な性善説に拠ることを教育理念に掲げた学校をスタートさせる私としては、悪魔のようなプリンちゃんが、見た目や言動にさえ左右されることなく、人を人としてみるサンジの対応で天使の心を取り戻すストーリーに強く背中を押してもらえたように感じました。

良知を信じるしかない

正直、50年以上生きてきた中で私も数人にこっぴどく裏切られた経験があります。信頼している相手に裏切られた時はメンタル強めの私でも何もやる気になれないほど落ち込みました。今も心の奥底に人を信じることに全く不安や疑念がなく、一点の曇りもないかと質されると正直、怪しいものです。
人間不信に陥るわ、と嘆いた苦い経験が今も脳裏に焼き付いています。
それでも、未来を創るには人を信じるしかないと思っており、ワンピースを観てサンジのように裏切られない自分にならなければならんと思わされました。人を人としてみる。人の心に必ずある良知を信じる。改めてその根幹を見つめ直すいい機会になりました。長すぎる名作マンガのワンピース、頑張って最終話まで冒険を続けたいと思った次第です。

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