ラジオ

青春とオードリーのオールナイトニッポン

毎日、当たり前のように夜がくる。地下鉄直結の職場を抜け、中野駅でようやく見える外の景色には、すでに夜の帳が下りている。

毎日、気が付けば朝になる。地下鉄東西線直結の電車に乗り、中野駅で陽の光はその役割を室内灯にバトンタッチする。

上京して3年、東京の日が落ちるはやさにはまだ慣れない。気象予報士を目指していた先輩によると、僕の出身地である熊本県と東京では、日の入り時間が約40分違うのだそうだ。たかが40分とは言え、東京の夕方は、無性に早く感じて、気が滅入る。

ただ、夜が長くなるといっても、早く寝るのはなんとなくただ勿体ない気もする。

なんせ僕たちの夜は忙しい。

「AVあるある」を聴かせて大スベりした放課後

僕はよふかしをする時、よく深夜ラジオを聴く。

高校生の頃、大学受験時に初めて聴いた『オードリーのオールナイトニッポン』に心を掴まれ、それからというもの、僕の耳には、流行りの音楽よりもラジオが流されるようになった。

学ランの内ポケットに音楽プレイヤーを潜ませ、袖からこっそり出したイヤホンで聴いていたのは、流行りのORANGE RANGEでもELLEGARDENでもなく、オードリーのオールナイトニッポンだった。

ある日、受験勉強のために友人と居残って勉強していた視聴覚室でのこと。「これ面白いから聴いてみろよ」と、友人にラジオを録音した音楽プレイヤーを渡した。

聴かせたのは、オードリーのオールナイトニッポンにレイザーラモンRGがゲスト出演し、RGが1986オメガトライブ『君は1000%』にのせてAVあるある「次回告知が一番エロい」を声高に歌い切ったシーン。彼のリアクションに期待してニヤニヤしながら見ていたものの、友人は苦笑いをしたまま「面白いね」と、プレイヤーを返してきた。

――後から聞いた話では、僕が「これ聴いてみろよ」と言ってイヤホンを差し出したのは、友人が恋人からの「急遽入院することになった」という旨のメールを受信した直後の出来事だったそうだ。

あの時、視聴覚室で大笑いしていたのは、オードリーと僕だけだった。

ちなみに、彼女の身を案じながら「AVあるある」を聴かされた彼とは、なんとか縁も切れることなく仲良くやっている。本当によかった。

怒る警備員と、ヘルメットの下で深夜ラジオを聴いていた僕

大学時代も、ラジオを聴き続けた。自宅から大学までの往復1時間半をすべてラジオに費やしていた。

ある雨の日のことだった。いつものようにラジオを聴きながら、ヘルメットを被って、原付にまたがったときに事件が起きた。警備員がやって来て、何やら僕に向かって怒鳴っていたのだ。しかし、ヘルメットの中で流れるラジオの音と雨音が邪魔して警備員が言っている内容を聞き取れない。

だが、なんとなく警備員が何を言っているのかはわかった。そこが大学敷地内の「指定の駐輪場」ではなかったため、注意をしているのだ。以前にも同様の指摘を受けたことがあったものの、便利な場所であったため、懲りずに使ってしまっていた。

僕は、警備員が「ここは駐輪場じゃないよ!」と言っていると想定し、ひとまず「あー、そうなんですね!知りませんでした!」と返し、反省の表情を浮かべようとする。しかし、それをラジオが邪魔する。若林が春日をハイクオリティなラップでディスっているのが面白すぎる

♪ 若林ラップ:春日!たぶんステロイド打ってる

目の前では警備員が自分に向かって何やら怒鳴っている。僕の「あー、そうなんですね!知りませんでした!」はどうやら、文脈に沿った回答ではなかったようだ。

♪ :春日!少女時代が大好き

もしかすると、「君、前にも注意したよね?」みたいなことを言っていたのかもしれない。それにも関わらず、「あー、そうなんですね!知りませんでした!」という答えはあまりにもナンセンスだ。もっと言葉を選ぶべきだった。

♪ :春日!貧乏ぶった富裕層

僕のテキトーな返しに怒りを増した警備員。しかし、続くセリフも、相変わらずよく聞きとれない。そして代わりに聞こえてくる若林のラップが面白い。

♪ :カス、カスカス 人間のカスだ

思わず笑いが漏れた

これはやばい!!そう思った僕は頭を繰り返し下げ、一目散に原付を押してその場を立ち去った。

それ以来、原付は所定の場所に停めるようにした。

ラジオ聴こうぜ

そんなことを思い出していたら、もうすぐ夜も明けそうだ。

今日も、気が付けば朝になる。

***

オードリーのラジオは、毎週土曜25時から

時間が合う方は、是非。一緒に「リトルトゥース」になりましょう。


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