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妄想ショートショート

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日常に転がる、”背景を想像させるナニカ”に掻き立てられた妄想を、ショートショート形式で書いてます。
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記事一覧

誕生日のパラドックス #妄想ショートショート

「運命を演出しようじゃないか」 昼時を過ぎて閑散としたファミレスで、雲仙悦人(うんぜん・えつと)は、二重線だらけのノートを1ページめくった。 「何かいいアイデアでも? 」 向き合う鯨津瓜(ときつ・うり)は、悦人の輝いた目に、停滞した“ランチミーティング”の終着点が見えた気がした。右目に移る夕日が眩しい。 「いいことを思いついたんだ。誕生日のパラドックスだよ」 このnoteはマガジン「妄想ショートショート」に含まれています *** 誕生日のパラドックス瓜と悦人は、

52Hzのクジラとは? 「世界一孤独な鯨」に思いを寄せて

みなさんは、52Hzのクジラの話をご存知でしょうか? (フリー百科事典wikipadiaより引用) なんともロマンチックな物語です。実際凄いのが、これがノンフィクションだってところですよね。実際に、このクジラが現在どうなっているかはわかりませんが、少なくとも1980年代以降、多くの人々がこのクジラを発見してきたのです。 「52Hz」の特異性シロナガスクジラは普通10-39ヘルツで、ナガスクジラは20ヘルツで鳴きます。ちなみにこの52ヘルツのクジラの軌跡には、他の種のクジ

【52Hzのクジラ】 海に響く、孤独と希望の音を辿って #妄想ショートショート

「今年もアイツが出たよ」 米 海洋研究所の男が嘆いた。 このnoteはコチラを先に読むとより楽しめます ボストンの港にて アイツとは、その奇妙な特徴から、研究所の人間が「52」と呼んでいるクジラのことだ。正確にはクジラと断定できるわけではないのだが、その音紋(振動で発せられる独特の音)はクジラそのものであり、恐らくクジラの鳴き声なのだろうと判断していた。しかし、その声が初めて聴取された1989年以降、毎年のようにさまざまな場所で検出されてきたこの音に、疑問を持つ人間は

満月の水と月光欠乏少女 #妄想ショートショート

身の回りの出来事から想像して物語をつくる、妄想ショートショート。今回は、SNSに流れてきた“とあるニュース”に出た「満月の水」という単語から、物語を妄想してみました。 それではどうぞ。 このnoteはマガジン「妄想ショートショート」に追加されています 月光欠乏症A「娘さんはどうやら、月光欠乏症のようです」 白衣を着た男Aは、不安そうな顔を浮かべる男Bに、そう伝えた。 B「げっこうけつぼうしょう? なんなのですか、ソレは」 聴診器が怖かったのか、「もう終わり」との合

【辛辣すぎる】 「赤ちゃんはどこからくるの?」 - 疑問ボーイと答えたガール

疑問ボーイ(以下、疑ボ):こんにちは、僕は何でも気になる疑問ボーイ 答えたガール(以下、答ガ):こんにちは、私は何でも答える答えたガール 赤ちゃんはどうやって生まれるの?疑ボ:ねぇねぇ、赤ちゃんってどうやって生まれるの? 答ガ:えへん!コウノトリが運んでくれるのよ!そんなのも知らないの? 疑ボ:そうなんだ!ねぇ、”こうのとり”ってなぁに? 答ガ:そんなのググれば一発でわかるわ!コウノトリは、鳥綱コウノトリ目コウノトリ科コウノトリ属に分類される鳥類よ!分布域は東アジア

1000円の初恋 #妄想ショートショート

身の回りにあるものから想像して物語をつくる、妄想ショートショート。今回は、SNSで見つけた「ある写真」から、物語を妄想してみました。それではどうぞ。 「1000円の初恋」ーー初恋は実らないもの。多くの人が経験したように、私にも、叶わなかった恋があった。 彼との出会いは、まだ私が幼稚園に通っていたころ。ほのかに甘い香りがする季節だった。彼とその家族は、私の家の正面に引っ越してきた。「行ってきます」から「こんにちは」まで約15秒のその距離は、2人の距離を縮めるには充分すぎた。