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もし「食育原理主義人民共和国」みたいな国があったら。【その1】 :-)

食育がブームだったころ(2010年前後)の食育と、いまの食育とはいろいろと違います。
たとえば、ブームだったころは、世の中「食育原理主義」みたいなところがありました。
食育おばさんたちも、熱かった。
(今はみなさん、だいぶ冷静になっているようですが)

そもそも原理主義とは

「原理主義とは」、聖書・聖典にある教義を守り抜こうとする考え方や立場。
ひいては、基本的な原理原則を厳格に守ろうとする立場のことも「原理主義」といいます。
もともとはキリスト教の用語だったようですが、ほかの宗教や思想などでも使われています。
たとえば、

「イスラム原理主義」という言葉を目にした人も多いでしょう。
100パーセント、イスラムの教えに基づく国家、社会を築こうとする思想と運動のことです。
当人たちには「自分たちは原理主義だ」みたいな意識はないかもしれません。
「イスラム原理主義」という言葉を使うのはもっぱら欧米側です。
欧米からすると危険な思想に見えるため、この言葉にはネガティブなイメージがついています。

アメリカには「産業革命以前の生活様式をかたくなに守り続ける」という主義の人々がいて、「アーミッシュ」と呼ばれています。
電気・電話・自動車といったいわゆる文明生活を避けている人々。
文明生活を避けるのがアーミッシュなので、食事も、自給自足。
化学肥料も農薬も使いません。
その結果、自動的にアーミッシュの食生活は完全オーガニックとなります。
これも原理主義のひとつと考えられます。

食育原理主義とは

「食育的に正しい」とされることを、厳しく守り抜こうとする立場。
しかも自分だけ守ればよいといった孤高な姿勢ではなく、とにかく布教しなければ国がダメになる、地球があぶないという気持ちが強い。
その結果、熱く語る、説教する、という行動をしがち。

布教の対象はもっぱら子供です。
大人は屁理屈をこねて反論したり、その場では理解した顔をしても行動が変わらなかったりします。
その点、子供は素直に話を聞きます。
だから、食育原理主義者はもっぱら子供をねらいます。

「食育的に正しい」とは、

  • 昭和のころにおばあちゃんが言っていたこと

  • 食育基本法や食育白書、食事バランスガイドに書いてあること

  • 政府や自治体のウェブサイトに書いてあること

  • 小学校の給食の時間に教員や栄養教諭が話していること

などを指します。

内容的には

  • 朝ごはんをしっかり

  • いただきますをわすれずに

  • 家族団欒が大切

  • いろんなものをバランスよく

  • 三角食べをしましょう

  • 30回、噛みましょう

  • 国産のものを食べましょう

  • 食事は規則正しく

などがあります。

また、食育原理主義者の多くは
「ピーマンの収穫体験をすれば、ピーマン嫌いがなおる」
と信じています。

…とまあ、こんなふうに書くとまるで「食育原理主義は悪い」みたいな印象になりそうですが、食育原理主義者が言っていることじたいはけっして悪くはありません。
教義内容は、むしろ正しいことが多い。
ただ、食育原理主義は21世紀の現代社会とは相性のよくない部分があり、そこはやはり時代にあわせた工夫が求められるでしょう。

以下はただの創作なので、ヒマな人だけ読んでください。

食育原理主義人民共和国の建国秘話

某、北○○みたいな独裁国家が「食育原理主義」に走ったらどうなるか、想像してみました。
以下は筆者の妄想、ある種のダーク食育ファンタジーです。

シンドフジ共和国にクーデターが起きたのは20xx年のx月のこと。
クーデターを成功させて大総統に就任したのはマゴワヤサシという将軍でした。
さて、このマゴワヤサシ大総統、食育にことのほか関心が強く、シンドフジ共和国を「食育大国」にしてしまえと考えました。
1年後、シンドフジ共和国はこういう国になっていました。

政治

この国に政党は1つしかありません。
その名は、予想どおり、「食育党」です。
党首をマゴワヤサシ大総統、副党首をヒミコノハガイゼ首相が務めています。

制度

この国の制度には、たとえば以下のような特徴があります。

  • 兵役はないが、食育役がある

  • すべての国民に国からマイ箸が支給される

  • 国が指定する食育試験に合格しないと飲食店を開けない

  • 農業体験にいくと保険適用となる

国営メディア

放送局は国営のものが1つしかありません。
24時間、食育番組が流れています。
海外の食育番組を取り入れることにも積極的で、最近は、「ワッフルとモチ」が人気(※)。

(※)「ワッフルとモチ」
2021年春にネットフリックスで配信スタートした食育番組。
バラク・オバマ氏(アメリカの元大統領)および夫人のミシェル・オバマ氏が関わっていることでも有名。

軍隊

シンドフジ共和国の軍隊は、以下のような国を「仮想敵国」としています。

  • ジャンクフードを食べる国(アメリカやイギリスなど)

  • メタボの多い国(アメリカやイギリスなど)

  • 食べものの廃棄率が高い国(日本など)

  • 食料自給率の低い国(日本など)

  • 食の安全意識の低い国(中国など)

「強い軍隊は強い食事から」というスローガンのもと、当地一流の生産者、当地一流の管理栄養士、当地一流のシェフが組み、日本の「食事バランスガイド」に沿った食事を基地の食堂に提供しています。

秘密警察

シンドフジ共和国には秘密警察があります。
もともとは食品偽装を徹底的に取り締まることが専門だった組織が、今では「食育に本気でない人」をつかまえ、洗脳することを主な役目としています。

  • 食事の前に「いただきます」を言い忘れたら、逮捕。

  • 1人で食事(孤食)したら、逮捕。

  • 食育に文句を言った者は逮捕。

マゴワヤサシ大総統はさらに、「食育キッズ」と呼ばれる密告グループを養成しました。
平安の昔、平家のトップだった平清盛が、アンチ平家の人々を粛清するため、「かむろ」と呼ばれる子供のスパイを何百人と街に放っていたそうですが、それと似ています。
この「食育キッズ」も子供からなり、食育に熱心でない国民を見つけて秘密警察に密告する役割を担っています。

宗教

マゴワヤサシ大総統は「食育正教会」を作りました。
マゴワヤサシ大総統自身が教祖となり、全国各地に教会を建てました。
毎週日曜になると、
「食の安全」
「食品ロス」
「栄養学」
をテーマにした賛美歌が流れます。
日本の食育白書を参考に「食育聖典」という本が作られ、信者全員に暗記が義務づけられました。

さて、そんなシンドフジ共和国ですが、この国にはどんな未来が待っているのでしょうか?

(次回につづく)




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