「人参」なのか「ニンジン」なのか問題
食育総研では、ふだん、講座のテキストを作ったり、試験問題を作ったりしています。
そういうときに多発するのが、
「ビーガン」と表記するのがよいか「ヴィーガン」とするのがよいか
みたいな問題です。
同じテキストや試験の中でこうした表記がバラバラだったら、きわめて格好悪いです。
おバカ講座、おバカ検定みたいになりかねません。
だからこういうのはルールを決めて統一しなければならないと考えています。
「ビーガン」はアルファベットでは「vegan」と書きますね。
つまり b ではなく v 。
なので、「ヴィーガン」とするほうが合理的に見えます。
しかし、ネットの検索数では「ヴィーガン」より「ビーガン」のほうが検索されているようです。
ベジタリアンについても同様で、「ベジタリアン」と表記するのがよいか「ヴェジタリアン」と書くのがよいか、これも悩ましい案件です。
アルファベットでは「vegetarian」、つまりこちらも b ではなく v なので、「ヴェジタリアン」のほうが正しそうに見えます。
しかしネットの検索では「ベジタリアン」での検索のほうが圧倒的に多いようです。
ようするに「v」を「ヴ」と書くべきかどうかという話なのですが、たとえば
「イベント(event)」を「イヴェント」と表記するとなんだか気持ち悪いし、
「バラエティ番組(variety)」を「ヴァラエティ番組」と書くのもなんだか抵抗があります。
そうしたことも考慮し、「ヴ」はやはり使わないようにしようと考えました。
したがって、これをきっかけに、食育総研としての表記ルールは、以下のように決まりました。
〇アボカド
×アヴォカド
〇オーブン焼き
×オーヴン焼き
〇オリーブ
×オリーヴ
〇ビタミン
×ヴィタミン
×ヴァイタミン
〇ビーガン
×ヴィーガン
〇ベジタリアン
×ヴェジタリアン
〇ラビオリ
×ラヴィオリ
同じ意味の言葉なのに、文章の中で表記が統一されていない、これを「表記ゆれ」といいます。
「表記ゆれ」のある文章は、細かいところまで配慮が行き届いていない、という印象を与えます。
反対に、表記ゆれをなくし表記を統一すれば、一般的には読み手の心理負担が減り、わかりやすい文章になります。
なので、できるかぎり表記を統一するのが望ましいとされます。
食に関する表記ゆれの種類には、前述したような「ビーガン」「ヴィーガン」というケースもありますが、ほかにも
「大根」「だいこん」「ダイコン」
という種類のものもある。
漢字にするのか、ひらがなにするのか、カタカナにするのか、とうことです。
これに関しては食育総研では
「ダイコン」
すなわちカタカナ表記にすることに決めました。
〇ダイコン
×大根
×だいこん
〇ニンジン
×人参
×にんじん
〇ネギ
×葱
×ねぎ
というわけです。
しかし、ことはそう単純ではありません。
カタカナ表記に統一すると決めても、では「練馬大根」の場合はどうするのか、といった問題が残ります。
全部カタカナにして「ネリマダイコン」としてしまうと、なんだか変。
そこで、食育総研では「練馬ダイコン」と表記することにしました。
すなわち
〇練馬ダイコン
×練馬大根
×練馬だいこん
〇金時ニンジン
×金時人参
×金時にんじん
〇九条ネギ
×九条葱
×九条ねぎ
〇温州ミカン
×温州蜜柑
×温州みかん
ということになります。
ところが、問題はまだ終わりません。
「ダイコン」など野菜の名前はカタカナ表記すると決めましたが、必ずしもカタカナ表記ですべていけるとは限らないのです。
たとえば「羊羹」を「ヨウカン」と書くのは、ちょっと不自然ではありませんか。
なので「羊羹」は漢字で表記すると決めました。
こういう事例は枚挙にいとまがなく、ほかにもたとえば、
「オレンジジュース」と書くのか
「オレンジ・ジュース」と書くのか
といった問題があります。
栄養に関する言葉でも、
「ファイトケミカル」と書くのか
「フィトケミカル」と書くのか
「ベータカロテン」と書くのか
「βカロテン」と書くのか
そのカロテンについても
「カロテン」か「カロチン」か、それとも「カロティン」か
といったことで悩みに悩みました。
こういうのを1つ1つ解決しながら、自分たちの表記ルールを組み立てていくわけですが、正直、決めにくいことも多々あります。
過去に決めたルールがあとで矛盾したりすることもよくあります。
「練馬大根」vs「練馬ダイコン」
どちらが正しいか、という明白な答はありません。
「カロテン」か「カロチン」かそれとも「カロティン」か、なんて、本来、どれを選んでもよいものです。
しかしそれでも、「どの表記を採用するか」は決めておかないといけません。
食育総研としての「表記統一のルール作り」の葛藤は、まだまだ続くのであります。
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