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オレンジニット帽おじさん@ニューヨークの地下鉄

昼の12時に起きて、Murray's Bagleでシナモンベーグルを食べて、チェルシーマーケットでサラベスのジャムを買い、Greenwich villageを散策して、Brooklyn Bridgeで夜景を見る、という素敵すぎる1日の締めくくりはホームレスのおじさんだった。

Hoyd street stationで赤色の2番ラインに乗車した瞬間にホームレスの人が放つ汗、垢、汚れ、その他諸々が混じったような強烈な匂いがした。オレンジ色のニット帽を被り、ポロのジャケットを羽織ったそのおじさんは4席分使って寝そべっている。座った瞬間に目があった僕はとっさに目を逸らす。それでもおじさんのことが気になる僕はもう一度おじさんの方を見る。また目が合う。僕は再び目を逸らした。

僕が抱えていたサラベスのプラスチックバッグの中にはスーパーで買った卵サンドイッチが入っていた。それを見たオレンジニット帽のおじさんは「Excuse me. Can I have food?」と聞いてきた。僕と2人の友達は無視した。

次のNevins street stationでblackの人が3、4人乗ってくる。そのうちの一人のblackのお兄さんは「Oh my god! この人くせ〜」みたいなことを言って別の車両へと移っていった。

しばらくすると、僕の3人右隣に座っていた人(人種も性別も年齢も覚えてない)がオレンジニット帽おじさんにふたつサンドイッチをあげた。おじさんは貰った瞬間に"Thank you"といって体を起こし、すごい勢いで食べ始めた。床にボロボロと具材のかけらが落ちる。

僕の隣の隣に座っていたユダヤ系っぽいおじさんが席を立ち、近くのドアにもたれかかる。その次の駅で僕たちの車両に一歩足を踏み入れたblackのお兄さんはオレンジニット帽おじさんを一瞥すると、そのまま足をスッと引いて隣の車両へと移る。

「電車の椅子に寝そべり、赤の他人から食べ物をもらおうとする人」に対して「明らかに嫌悪感を示して車両からさる人」、「食べ物をあげる人」そして「全力で目を合わせまいとする自分達」というとんでもなく奇妙な空間を生き延びた僕たちはAirbnbの最寄り駅であるChurch Avenueで下車した。

ニューヨークの地下鉄でのこの出来事は、まるでCapitalismの裏に隠れて起きている貧しさを象徴しているようだった。電車の通路の[こっち側]と[向こう側]が世界の豊かさの違いを表しているようで気持ち悪かった。

オレンジニット帽のおじさんは世界の中心ニューヨークで今何をしているのだろうか。

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