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アラ煮の仕立て方<手順と行程>


今回はアラ煮の実際の炊き方を、手順を追って書いてみます。

前回のポイント

前回のポイントを、整理すると、

・鱗の掃除は完璧に行う
・火が通った瞬間に煮汁が丁度良い濃度になるタイミングで仕上げる
・鍋の大きさ、煮汁と素材の量、火の強さのバランスが大切
・終始、強火で一気に炊き上げる
・最初のアクは絶対に取り去る
・牛蒡、生姜は有効なオプション
・最後の仕上がりに酒か味醂を加え照りを出す


以上のことを、頭に入れつつ始めてみましょう。


アラの用意


まずは、アラを用意します。

今の時季、比較的ブリ系の魚が手に入りやすいと思います。

ブリ系の魚は鱗が細かいので掃除しにくいと言うデメリットがありますが、味わいの良さと価格は魅力です。

余談ですがワカシ、イナダ、ワラサと言った呼び方以外にもツバスであるとかハマチと呼ぶのもブリの成長過程での呼び名です。

またスーパーの鮮魚売り場では、色々な魚のアラを見かける事があります。

頭やカマなど、大きな魚のアラなら身が豊富です。

養殖の真鯛も、よく見かけます。

真鯛は鱗の掃除が楽ですし、味わいが良いので大きなアラがあればオススメです。

さて、適度な大きさにすでにカットされているという前提に解説を進めます、最初は水洗いです。

血が付いていたり、汚い水が出ている事がありますから、まずは洗い流します。

この時に鱗がついている場合が殆どです。

取れる場合は最初に外した方が後からの仕事は楽ですが、取れたら取る程度の感覚で大丈夫です。


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湯通し

水洗いしたアラを、まずは湯通しします。

塩を加え沸かした湯で、しっかりと表面に火が入るよう湯通ししてください。

本来の表面を熱で固めて旨味の流出を防ぐと言う目的だけなら一瞬で構いませんが、しっかりと湯通しすると鱗の掃除が楽です。

沸騰させた湯にアラを漬けたら時間にして深呼吸を1回程度で、すぐさま引き上げて流水に落とします。

そして、しっかりと鱗を取り除きます。

特に鰭の付け根や影になっている部分、細かい鱗がびっしりと付いている部分があります。

丹念に、丹念に、鱗を外して水で流し去ってください。

取りにくかったら鱗取りを使う、出刃でこそぎ取る、使えるものはどんどん駆使して完璧に取り去るのを目指して下さい。


鍋に並べる

掃除が終わったアラは水が切れるようにしておいて、全ての鱗を取り終わった時点で鍋に並べます。

アラは重ねないで底一面に、一段だけ並べて水を加えます。

アラ煮には出汁を使いません。

下手に鰹の出汁などを使うと味や香りが重なりくどくなる、水で充分に旨味は乗ります。

水の量は、アラの高さの半分ほどです。

牛蒡は最初から加えてしまいましょう。

下煮は必要ありません。

生のまま適当に切った牛蒡を鍋の端に寄せて入れておいてください。

ここに酒、味醂、砂糖を加えます。

この時の味醂は必須です。

味醂は素材を締める作用があり、煮崩れを防ぎます。

全て入れきって材料の高さの7~8分目にくるように、割合たっぷりと酒と味醂、砂糖を加えてください。


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火力全開

そして鍋の大きさに合わせてですが全開で火をつけます。

鍋の周囲に火がはみ出す様では鍋肌が焦げてきます。

鍋の底に収まるぐらいで、もっとも強い火に調整します。

逆にコンロの火口よりも大きな鍋を使えば、全開でも周囲に火は当たりませんが、火力が弱くて吹き上がってこないかもしれません。

コンロの火に対して少し大き目で浅い鍋を使うようにすると炊きやすいかもしれません。

また場合によってはアラ煮を炊く時に、深めのフライパンを使ったりします。

底が平らで、面積があって炊きやすいのですが、フライパンだと鍋の高さがなく、煮汁が吹き上がってきた時に吹きこぼれやすいのが難点です。

そして忘れてはならないのが最初のアクを掬う事。


一網打尽

最初に出てくる大きなアクはタイミングを見計らって一網打尽で掬い取ります。

最初に沸騰するまでのアクを取り去るのが非常に大切なポイントですから、くれぐれもお忘れなく。

そして、ここで落し蓋を使います。

木の落し蓋がなければ、アルミホイルを使うのが良いです。

鍋の大きさに合わせて落し蓋をすれば、煮汁が吹き上がり落し蓋の中で対流が起こります。

すると、素材全体にむらなく熱と調味料が行き渡ります。

醤油を入れる前に酒と味醂、砂糖で炊いておくのは表面に醤油の味が沁み込むのを遅らせる効果があります。

砂糖の甘味と醤油の塩分では、塩分が先に浸透しますから、醤油を遅らせて加える方が味わいの印象が柔らかくなります。


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たまり醤油

さて、加える醤油ですが<たまり醤油>が絶対のオススメです。

このときの醤油を普通の濃口醤油で仕上げようとすると、大量の砂糖が必要な上に、濃度を出すと塩分が濃くなり過ぎる。

要するに、難しい調和を取らなくてはいけなくなります。

普通の濃口醤油しかないという時は、照りを出した煮詰めるタイプのアラ煮ではなく、優しい味に仕上げる旨煮を目指すと良いでしょう。

今回、ご紹介しているのはしっかりと照りを出す料理屋風のアラ煮ですから、ぜひともたまり醤油をお使いください。

たまり醤油は濃度があって、塩分が少ない醤油ですからアラ煮には絶好の調味料です。

さて、醤油は2~3回に分けて加えるようにしましょう。

炊き始めて仕上がるまで、どんなにゆっくりと時間を使っても15分程度です。

3~4分おきに3回ぐらいに分けると良いと思います。


味見のテクニック

醤油を加えるたびに味を見ます。

こう言うときの味見は、煮汁を飲んではいけません。

濃厚な味わいの煮汁に仕上がっていきますから、こんな濃度の味を何回も見ると舌が麻痺します。

煮汁をお玉で掬ったら、指の先に煮汁をつけて舐めるようにします。

これで充分、味が分かるように訓練すると肉じゃがやすき焼きの様な味わいの煮物には、重宝するスキルです。

さて、一貫して強火のままですから10分も炊いていれば

かなりの濃度になってきます。

ここからは目が離せません。

少し目を離した隙に、煮汁がなくなって焦げてしまったという失敗は、どんなに経験を積んでも注意をしなくてはなりません。

最後のここで、失敗をするとそれこそ取り返しの付かない事となります。

鍋を傾けながら、煮汁をお玉に汲み取って素材の上に回し掛けながら、素材の煮汁から顔を出している部分にも調味料と照りが乗るようにします。


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仕上がり

仕上がりが近くなったら、落し蓋は外してしまいます。

だんだん、泡の大きさが変わってきます。

徐々に大きくなった泡が最大で大きくなったと見たら、そこで酒か味醂を投入します。

一瞬で泡の大きさが細かい泡に変わり、煮汁が吹き上がって来ます。

この時も煮汁を掬い取っては素材の上に回し掛けるのを忘れずに。

綺麗な照りが、全体的に乗ってきたらひと煮立ちで完成です。

箸でひとつずつ器に盛り付けて、煮汁を上から掛けて牛蒡を添えて。

あれば木の芽など添えたら、最高の味わいを堪能できる事でしょう。

ぜひぜひ!挑戦なさってください。


では、今日も良い一日をお過ごし下さい。

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