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解読不能な文字と戦い続けた730日間

デジタルで変わったことで何が良かったか?
そう問われたら私の職業に限定したら第一位はアレしかない。

いつも頭を悩ませて。
いつも似た字を頭の中で駆け巡らせて。
いつも白旗をあげることに抵抗してた。

そう。
カルテに指示書。
医師が書くカルテも指示書も解読不可能な字が並んでいる。
日本語で書いてあることまでは分かる。

だけど、だけどだ先生。
なんでレントゲンっていう字はレンと省略されたみたいな字になってるし。
採血は採血って書けば良いのに、液って書くんだよ(血液の液。血のが楽だろ)

私の修行期間は約2年。そう。どんな医師の字も読めるようになった。
時にお前はこんな簡単なことも分からないのかと罵声愛の激励をいただいた(分からないんじゃなくて読めないだけだけど地雷を踏みまくるので黙っている)
申しわけないけど分からない。
聞かないことには患者さんに説明なんてできないし、指示を実施するなんて至難の業だ。

採血の指示なのに目薬をしてしまったら、こっちがたまったもんじゃない。
患者さんからしたら大迷惑もいいところである。
mgとmlを間違えてしまった日には大惨事ところでは済まないのである。
場合によっては私は一生日に当たれないかもしれない。

2年の修行を得て、先輩からも後輩からも、なんて書いてあるか聞かれるようになった。
しょうこの一番の特技はそれだね。
どの先輩にも言われていた(採血がうまいとか移乗が上手とかそういう特技が良かったけども)
その指示は上部消化管内視鏡です。
それは20時の抗生剤投与の指示です。
ほぼ全ての難解書を解読できるまでになっていた。

そして解読するのは字だけはない。
書かれた文字から何を意味するかまでを解明するのがお役目だ。

例えば
あmwいと読める字が筋肉注射だった。
それはいい(よくないけど)
そのくらいは1年のうちにスラスラ読めるようになった。
ただ一見読めるけど意味が分からない。
そんなことが起きるのだ。
え?何言ってるか分からないって?
じゃあ指示書に

だけが書かれている。
なんのことか分かるだろうか?
そのまま読んで大丈夫。セだ。
あの、せ〜かいはひ〜ろい
のセ。

こんなのばっかりが大学病院の指示書には、壁一面に貼ってあるメニュー表よりも多く並んでいた時代があった。

正解はね。
整形外科受診。

そんな訳ないだろって声がヤリのごとく向かってきてるけど、
タテを持って答えさせていただく。
そんなことあるんだ。
そんな私の解読に終止符がやってきた。

そう電子カルテ。
誰もが共通して読める電子カルテのお出ましだ。
いつでもどこでも読める上に、新しくきた医師達の癖のある字まで解読しなくていい。

セとおさらばできたのは君のおかげ。
整形外科受診。
その6文字にどれだけの人数が歓喜したか君はきっと知らない。
ようこそ電子カルテ。


ただ1つちょっと寂しいのは。
私の特技を発揮する場所がなくなったこと。
え?アナタが読めない字?
大体分かるから(医師限定)お任せあれ。

𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄
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