ブックレビュー:武器としての「資本論」
己の価値を「換算」しなければならない。
働いたり、仕事を求めたりしていると、自分の全てがお金にすり替わっていくような、何とも言えない気持ち悪さを覚える時があります。
本書は、マルクスの名著『資本論』から現代社会を読み解くもの。イノベーション。働き方改革。紙幣と電子マネーの決定的な違い。読み進めるうちに、19世紀にマルクスが看破した資本主義の機構が、現代社会にどれほど深く根付いているかが分かります。非正規雇用の増加やフリーランス化の進行といった現代の労働問題の背景にある、労働力の価値について詳しく論じられている点も、不安定な労働形態を強いられがちなアートの世界の人々にとって重要だといえるでしょう。
そして、更に注目すべきは、労働力の価値の原点に「人間そのものの価値」があるという指摘。貧しくとも、スキルがなくとも、私たちは豊かさを享受することが出来る。この信念こそが、文化芸術の価値を裏付けてくれる、そんな思いを新たにさせられます。
『武器としての「資本論」』白井聡著(東洋経済新報社、2020年)
https://str.toyokeizai.net/books/9784492212417/
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