[読書レビュー]小さな会社・お店のための値上げの技術

要約すると
・値上げをすると社長、従業員、顧客、みんなが幸せになれる
・値上げのテクニック:顧客が価格を知らない商品を値上げする

最近は従業員の立場も強くなってきていて。
従業員を雑に扱う会社はブラックとレッテルを貼られるし、パワハラなども幾分、声を上げやすくなっているように思う。
逆に、給与が高かったり、福利厚生のしっかりした会社は称えられ、求人をだしても応募が集まる。
そういう傾向に追い打ちをかけるように、働き手が不足し、従業員を雑に扱う会社は、ますます人を集めづらくなってきている。

そういう中で、魅力的な会社にして人を集めるには、しっかり利益をあげて、給与や福利厚生をてこいれする必要がある。
そのためには、売上ではなく、売上から原価と経費を差し引いた営業利益を伸ばす必要がある。
仕入れ先に値下げを強いて原価を下げたり、経費である従業員の給与や福利厚生を削ることで営業利益を伸ばしたり、商品の値下げをして価格競争を激化させながら売上を伸ばしても、営業利益は圧迫され、誰も幸せにならない。
値上げは、営業利益を健全に伸ばし、みんなが幸せになれる1つの手段。
営業利益が増えれば、給与や福利厚生を充実させられて従業員はハッピーだし、事業を安定して継続できるので、あなたの会社の商品のファンも、多少価格は高くとも、いつでもその商品を購入できてハッピー。

本書では、その値上げについて多面的に語られる。
著者である辻井さんは、コンサル経験があるということで事例が豊富で、読み物としても楽しい。
肝心の値上げのテクニックは具体的な手順が示され、注意事項もふんだんに語られる。

値上げのテクニックである、顧客が価格を知らない商品を値上げ、というのは、コンセプト、原材料やパッケージを独自のものにしてそれまでにない新しい商品を演出し、高めの価格を設定するということ。
新しい商品は、顧客が価格を知らないので、高めの価格を設定しやすい。
本書では、新しい商品の発掘の仕方や事例も述べられている。

値上げのテクニックとは言うものの、質の悪い・イメージの貧困な商品を値上げするテクニックではなく、あくまで顧客が満足できる価値の高い商品を、相応の価格で売っていきましょう、というのが全体を通した主張だと思う。
演出で顧客をだまして高価格の貧相な商品を購入させても、リピーターにはなってくれない。
個人的には、自分使いのものは包装を変えたくらいで価値は上がらないと思うのだけど、例えばギフトに向いた商品などは包装を変えるだけでもギフト用になり、価値を高める。

さらに本書では、BtoCのみではなく、BtoBビジネスでの値上げの事例も書かれている。
が、顧客企業の担当者は価格を熟知しているケースが多いため、BtoBでは値上げの余地が少ないというのは事実としてあるという印象を受けた。

最近、ブランディングなる言葉が流行りだけど、値上げをした価値の高い商品をそろえられた先ではじめてブランドが確立できる、との著者まとめ。

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