“できるかも?”で始めた、0〜2歳の「サークルタイム」──写真で知ろう!小規模保育【対話】
映画『こどもかいぎ』も公開されるなど、子どもたちの対話の場づくりに注目が集まるなか、半年ほど前から園で「サークルタイム」(子どもたちが輪になって、いろんなテーマで話し合う活動)を始めました。0〜2歳児の活動として行うだけに、場が成り立たない可能性も考えていましたが、輪になり座ることで、子どもたちの新たな姿が見られるようになりました。
<おうち保育園新おかちまち/東京都台東区>
■ ねらいと配慮
フローレンスグループの保育園では、子どもたちがさまざまな活動に自ら参加したり、貢献したりする「シチズンシップ保育」の実践を大切にしており、認可園ではその一環として、以前から積極的に「サークルタイム」を行っています。小規模保育園の職員間でも何度か話題に上っていましたが、「まだ0〜2歳児さんには難しいかな……」と実行はしていませんでした。
一方で当園には、以前から「朝の会」を行う習慣があり、保育士が前に出て、日付や活動内容を毎日カードで確認するなどしていました。その際に、「今日カードをめくってくれる人?」などと聞いて手を上げてもらったり、意見を発表してもらったりする機会も設けていました。
「朝の会」ではもちろん、手を上げたり前に出たりすることを恥ずかしがる子もいます。けれど、そんな姿からも「実は何かみんなにしゃべったり、自分の意見を伝えたりしたいことがあるんじゃないかな?」と感じていました。
そこである日、一人の保育士が「もしかして、サークルタイムできるんじゃないですか?」と口にしたことを機に、とにかく一度やってみることに。輪になって話すことが、子どもが自分の気持ちを表すきっかけになればと考えました。
■ 振り返り
サークルタイムを始めたのは、2022年の夏ごろです。最初は「朝の会」の内容を輪になってやったり、「今日の公園どこに行こうか?」と選んだりするところからスタート。10人を超える乳幼児全員でやるのはなかなか難しい面もあったのですが、2歳児さんを中心に、その時「参加したい」子ども数人で行うようになると、少し難しいテーマの話もできるようになっていきました。
例えば、「好きな色」。一人ずつ好きな色を聞いて「あか」「ちゃいろ」などと挙げられた色を、保育士が紙に描いていきます。さらに、「この色のものって何があるかな?」と話を振ると、「あかいくるま!」「うーん……ちゃいろいふね」などと、一人が好きな色を、みんなで一生懸命考えていってくれました。
4種類の「きもちカード」でサークルタイムをしたときは、「“やったー!”ってどんなとき?」「“かなしい”ってどういうときになる?」と意見を聞きながら、今の気持ちを表すカードに自分の顔を貼り付けてもらいました。「もし保育園でいやな気持ちになったときは、こうやって“ふんっ!”って怒ってるカードに顔を貼っていいんだよ」と伝えると、子どもたちも意図を理解してくれたのか「わかった!」と返答。
そうやって繰り返すうちに、それまで恥ずかしがっていた子も手を挙げて、みんなの前で話せるようになっていきました。頑張って発表する子どもに、他の子どもたちが「◯◯くんすごいね」と言う姿もあり、お友だちの変化をしっかり感じていることが伝わってきます。
こうした答えのない、少し抽象的な話には、0歳や1歳の低月齢の子どもたちの場合、直接は参加していません。それでも近くでじっと見たり、耳を側立てたりしていることはよくあります。お兄さんお姉さんたちの姿から、まだ言葉にならないことをさまざまに考えたり、感じたりしてくれているのかなと思っています。
■ 「小規模保育」としての視点
最初はどうなるかと思った0〜2歳のサークルタイムも、「やってみたら意外にできた」というのが保育士にとっての大きな発見でした。別にずっと座ってなくてもいい、くらいの気持ちで臨んでいましたが、10〜15分みんなが座っていられることもあり、お友だちの話も集中して聞く姿が見られています。
もちろんいつでもできるわけではなく、子どもたちが比較的落ち着いて、職員体制にもゆとりがある時間に限られる活動です。その意味で、「今日できるかな?」「今やってみる?」と柔軟に対応できる小規模園は、チャレンジしやすい環境にあるのではと感じています。
また、そもそもの背景として、保育士が「やってみたい」と思ったことを気軽に実行できる土壌があったことも、大切なポイントかもしれません。常に子どもたち全員の声を聞ける環境があり、職員間の距離も近くて、うまくいかなくても「ちょっと難しかったよね」「次はこんなのどうかな?」とどんどん新しいアイデアが生まれる。そうしたトライするための心理的ハードルの低さが、今回のような新たな発見につながったのではと考えています。
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