見出し画像

【日記】秋田9日目〜そこに布あらば、飛んでいく布に人生を捧げた小松家 / 文化の集積場・小松クラフトスペースへ〜

ただいま秋田入りし、「芸術人類学」をキーワードにリサーチ旅をしています。

秋田、9日目になりました。7日目、8日目は休息日にしました。動きと休息のバランスを取りながら、エネルギーが枯渇しないようにすることが前よりも上手くなってきたように思います。

今、この文章を書いているのは秋田12日目(最終日)です。秋田を離れるバスの中で9日目〜11日のことを思い出しながら文章を書いています。「秋田、おそるべし!」という印象が湧いています。九州の地とはまた違う豊かさに触れることができたなぁという感じがしていますね。縄文の遺跡や色濃い神社への訪問や現地で生活と事業を営む方々との出会いなど、それら一つ一つの出会いが「おそるべし!」という印象につながっているんだと思います。

これから書く文章はあくまで感じたことのほんの一部になると思いますが、読んでくださる皆さんが秋田を辿る時の小さな手がかりになることを祈って、ここに残します。

ということで、秋田9日目(と10日目と11日目)の日記をスタートです。



朝、横手駅から秋田駅に到着。秋田をアテンドしてくれる友達の鈴木のぞみさんと合流しました。のぞみさんは複数の場所で働いた後、秋田公立美術大学の修士課程に入り、芸術人類学の視点から草木染めの研究をしています。もともとは東京の方で知り合いました。知り合ったのはもう5年以上前のことになります。

秋田から意識はアフリカへ

最初の場所から面白さ満開で、お腹いっぱいになりました。笑

まず訪ねたのは、小松クラフトスペースさん。ここが濃すぎる…。のぞみさんに連れられて、店内に入ると、奥の方に女性が二人、おそらくお店の方々がいました。軽く挨拶して、1階で売ってある商品を見て回っていましたが、一人の男性がフラッと通り過ぎ、2階の方に登っていきました。その男性に少し遅れてついていく形で2階を訪ねると、そこではアフリカ布の展示をやっていたんですね。

お、これは!という布を発見。ガーナのケンテクロスでした。

ケンテクロスについての文章を引用しようと思って検索にかけてみたら、小松クラフトスペースの小松さん(2代目)の10年以上前のブログを発掘してしまいました。

東に古い伝統ある織物あると聞けば走って行き、
西に名のある染め布あれると知れば飛んで行く。
南に緻密な刺繍の布あると聞けば触れに行き、
北に絣があると知れば買いつけに行く。
気が付けば早期高齢者。年々衰える知力と体力の限界を感じながら「世界の布」を求めて旅をする。
今回は西アフリカ・ガーナのシルク・ケンテクロスの旅だ。
アフリカを代表する織物と言えばコンゴ・クバ族の草ビロードとガーナ・アシャンティ族のケンテクロスだ。コンゴは未だ内戦中で危険で入れない。ガーナは治安良好、安全地帯と知り出掛けることにした。木工品やビーズもありそうなので3代目社長も同行することになった。3代目は忙しくて当てにならない。夏から資料や関係した本を集め準備していたが肝心の旅行ガイドブックは日本では発刊されていない。英語で書かれたガイドブックを2冊購入したがチンプンカンプンだ。無いよりはまし。見慣れてくると不思議に少しは理解できてくる。ガーナの位置は何回見ても混乱するほど分らない。ガーナ行きの飛行機に乗ればガーナに着くはずだ。

たそがれ見聞録

躍動感がすごい。そう、小松さんがちんぷんかんぷんの中でガーナに行き、持ち帰ってきたのが、目の前に展示されているケンテクロスだったのです。

ケンテクロスが面白いな〜と思っていた理由の一つは、拡張性のあること。ケンテクロスって織る時に一列一列しか織ることができないんですって。水平機と呼ばれる織機で生み出せる布の幅が決まっているからだそうです。しかし、一列一列をつなげることで、布を延ばしていくことができます。用途次第で布を無限に広げていくことができますが、多くの場合は人が纏うことが多いと思うので、バカデカくなるわけではありません。私の作品に活かしているのは、この拡張性の部分。

こういうふうに書いていたらさらに脱線したい気分になったので、意識を秋田から話します。秋田のことを書くぞー!というよりも日記だからね。日記という空間の中でさらに旅に出ているような感じがする。

ケンテクロスを見て、エル・アナツイを思い出しました。エル・アナツイはガーナ出身でナイジェリア在住の彫刻家。廃材を利用することが多く、金属のボトルキャップを再利用した巨大なタペストリーを思わせる作品が、ヴェネツィア・ビエンナーレ(2007年)で圧倒的な存在感を示し、世界的な評価を得た作家です。エル・アナツイはケンテクロスに大きな影響を受けて作品群を作っているようで、わたしにとって作家としての立ち位置のあり方が気になっている人です。

エル・アナツイは現代アートの文脈に載っている一方で、民族博物館の文脈にも載っているという方なんです。民族博物館というと、現代アートと比較すると土地に根付いた土着的なものを扱っていることが多い場所です。多くの場合、作られたものは個人が作ったものとして提示されることは少ないのだろうと思います。たとえば「◯◯族が作った仮面」のようなものはたくさん展示されているけれど、「◯◯(個人名)が作った仮面」というふうに個人名が強調されないように。エル・アナツイの作品は伝統文化と芸術のはざまはどのように形成されているのだろうか?と思いを馳せるきっかけになりました。

左が2代目小松さん

小松クラフトスペースの小松さん(2代目)の躍動感あるお話を楽しみながら話を聞いているうちに、息子さん(3代目)の奥さんも登場。それぞれの方が知識豊富で、民族、モノづくりの話がわんさか出てきます。さらに2代目小松さんのお母さんも登場。その方はご隠居と呼ばれていました。ご隠居も例にもれず、とても知識豊富でした。

草木染の話をしていると、ご隠居がこんな布を持ってきてくれました。

紅花で染まった鮮やかな布

鈴木のぞみさんによると紅花で染める時、99%の色素は黄色なのだそうです。1%が紅(あか)色。

布の鮮やかさが心に直接届くような存在感。布が息づいているようです。生命の躍動を感じました。

こちらの小松クラフトスペースの皆さんも布たちも、とても生きている感じがしましたね〜。一つ一つの物の濃さ、人の濃さが印象的な場所でした。

お次は車で移動し、男鹿半島へ。いったん一区切りで次の投稿に続きます。


※後日、秋田リサーチからしばらく時間が経って、アフリカに行こうという感覚が生まれてきました。小松クラフトスペースの影響もあったのかもしれません。


頂いたサポートは、生活と創作(本執筆)のために、ありがたく使わせて頂きます!