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全日本選手権予選の負けから学んだこと

 久しぶりに日本武道館で行われた全日本柔道選手権大会。素晴らしい一本、熱い戦いを沢山観て、心が熱くなりました。実は私が20代だった頃、この大会の予選に3回だけ出たことがあります。その内、1回だけ関東予戦まで進んだのですが、この時の敗戦で学んだことは今でも大きな財産になっています。

 1回戦は何とか勝ったものの、2回戦の相手は、講道館杯の優勝経験もある選手(仮にT選手とします)。試合開始1分後、私は技を掛け損じてうつ伏せになりました。すると、T選手はすかさず、得意の寝技に移行。私は一瞬で仰向けに返され、崩上四方固で一本負けをしました。試合後、ビデオで確認したのですが、どう返されたのか自分でも全く分かりません。そこで、図々しくも、試合後に直接T選手にお願いし、返し方を教わりました(もちろん面識はありましたよ)。
 後に「〇〇返し」と呼ばれるようになったこの返し方。まだその当時は「企業秘密」のようなものだったのかもしれません。そんな技を、快く教えてくださったT選手には本当に感謝しています。

 当時、高校の教員だった私は、この技を「自分で使いたい」というよりも、「生徒たちに教えたい」という思いが強かったのだと思います。試合の翌日には、この返し方を生徒たちに教えました。そして、数年後、1人の選手が、この技を全国大会の大舞台で決めてくれたのです。あの時の感動は今でも覚えています。「あの試合に出てよかった。思いきって質問してよかった。」心からそう思いました。もちろん、T選手にはすぐにお礼の連絡をしましたよ。

 全く手の届かなかった全日本選手権。でも、挑戦したお陰で得られたものも沢山あります。転んでもただでは起きない。そんな気持ちを持っていれば、結果はどうであれ全てが成長につながるのではないでしょうか。今日、全日本選手権を観ながら、20代のあの頃を思い出しました。
 全日本選手権に出場された選手の皆様、大会の運営に関わった関係者の皆様、今年も素晴らしい大会をありがとうございました。やっぱり全日本選手権は面白い。


「柔道家が増えることで、社会はより良くなる」
文武一道塾 咲柔館


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