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伝統を守るための「変化」「進化」

 道場から歩いて1分の所に「空禅くうぜん」というアトリエがあります。畳の縁につける布「畳縁たたみべり」を使ったバッグや小物を製作、販売しています。代表の小野洋一さんは、和室の減少に加え、新型コロナウイルスの影響で多くの畳店が廃業されている現状を目の当たりにし、畳縁を活用したブランド「空禅」を立ち上げました。商品の1つひとつに「畳縁の歴史、伝統、文化を次世代に伝え、広げたい」という小野さんの熱い思いが詰まっています。



 伝統を守るために、柔軟な発想は欠かせません。小野さんが、畳縁を畳以外の物とつなげたように「変化」することも時には必要です。そして、その変化は新たな価値を創造し、「進化」へとつながることもあります。実は、柔道界にもそのような取り組みをされている方が多くいらっしゃいます。いくつか例を挙げてみますね。

・カフェを併設した柔道場
・稽古の前後に勉強をする柔道場
・初心者やブランクのある大人の方でも柔道を一から学べる道場
・高齢者の方に安全な転び方を教える柔道場
・発達に凸凹がある子どもの柔道指導方法を研究・実践しているNPO法人
・柔道を教える放課後等デイサービス(療育施設)
・知的障害のある方が安全に参加できる柔道大会

 中学、高校の教員をしていた4年前までは、これらの活動を1つも知りませんでした。柔道の価値を十分理解していたつもりでしたが、その認識は狭く、浅かったと思います。柔道には、試合の「勝ち」とは別の「価値」がまだまだ沢山ありそうです。私も柔道自体の価値を再発掘すると共に、「柔道×○○」といったコラボレーション企画も考えていきたいと思います。

 畳縁の歴史は約千年、柔道の歴史は140年。志を持った多くの方たちが、変化や進化を繰り返しながら伝統や文化をつなぎ続けてくださったお陰で、現在も畳縁や柔道が存在します。次は今を生きる自分たちの番です。自分も柔道の文化、価値を次世代へとつなぐ1人なのだという自覚を持ち、日々の稽古と柔道の素晴らしさを広める活動に励みます。
 もし、「今までになかったこんな活動をしている柔道場があるよ」という情報や「柔道×○○をしたら面白いよね」というアイディアをお持ちの方がいらっしゃいましたら、ぜひ教えてください。皆さんと情報を共有し、柔道界をより良いものにしていきたいと思います。


劫初ごうしょより作りいとなむ殿堂にわれも黄金の釘一つ打つ    与謝野晶子



「柔道家が増えることで、社会はより良くなる」
文武一道塾 咲柔館


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