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「文月の精進料理」 2014年7月

梅雨の晴れ間の雲の嶺も強さを見せてきましたね。本格的な夏も間近です。
夏野菜を水貝風にアレンジしたり、新牛蒡、ジュンサイ、枝豆、絹さやといった夏ならではの食材をふんだんに盛り込みました。身近な食材「油揚げ」からの出汁も覚えていただこうと新牛蒡飯、煮浸し2つの料理に使いました。砂糖のようなダイレクトな甘さではない大豆由来の優しいあまやかさと、油で揚げてあるので香ばしさが出ますよ。ぜひお作りください。

1.新牛蒡飯 2.新沼縄(じゅんさい)の赤だし 3.絹さやとお揚げの煮浸し 4.夏野菜の水貝風 5.枝豆の東煮


1.新牛蒡飯
夏牛蒡とも呼ばれる新牛蒡は、初夏に収穫される若取りの牛蒡のこと。柔らかく風味も上品でアクも少ないので調理しやすいですね。もち米を少し加えて炊いていただくと、全体にツヤもでて、もちもちした食感も加わりますし、冷めても美味しくいただけます。もち米はできれば前日からたっぷりと水を吸わせて、使用する直前にザルに上げて水を切ってから、うるち米と混ぜます。水加減はうるち米の分だけで大丈夫ですよ(米の量の20%増し)。
新牛蒡だけでは色味が地味かなと思い、人参も少し足しました。油揚げを加えると野菜からの出る旨味を更にアップしてくれます。名脇役ですね。関東ではあまりなじみがない切り方ですが、微塵切りにしました。京都では味を出やすくするためか油揚げは微塵切りにして、炊き込まれることが多いんですよ。

材料:米2C、もち米1/4C、新牛蒡100g、人参10g、油揚げ1/2枚、
水出汁480CC、淡口小2、酒大1、塩・みりん各少々 軸三つ葉適宜

1)もち米は洗って最低1時間は浸水しておく。
2)米は洗い、ざるにとって表面が白くなるまでおいておく(15分ほど)
3)ごぼうは洗って斜めの薄うちにし、水に放ってアクをとっておく。
4)人参は1.5cmの長さのせん切にする。
5)油揚げはみじん切りにする。

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6)1〜5を釜に入れて調味し、少々おいてから炊き始める。
7)ご飯を盛り付け、茹でて1cmに切った三つ葉を天盛りする。


2.新沼縄(じゅんさい)の赤だし
沼縄(ぬなわ)とはジュンサイの別名です。ちょうど初夏が旬ですね。澄んだ淡水の池沼に自生する水草の一種で、私たちがいただくのは若芽のところです。透明のゼリー状の部分には腎臓や肝臓の機能を向上させ、老化の防止にも役立つ「ムチン」がたっぷり入っています。かつては神奈川県でも採れていたようですが、残念なことに絶滅危惧品種になってしまいました。
赤出汁は塩気が多いので、3カップに50gで十分です。入れすぎにご注意くださいね。隠し味に白味噌を入れると、味噌の酸味のとがりが和らぎます。

材料:ジュンサイ1パック、焼き豆腐1/4丁、粉山椒少々
赤味噌50g、白味噌小1、水出汁600CC

1)ジュンサイは熱湯で霜降って、水に放っておく。

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2)出汁を温め味噌をときいれ、ジュンサイを加えひとにたちさせる。
3)豆腐を小さめのザルに入れ、熱湯であたため、椀にいれて汁をはり、粉山椒をふる。


3.絹さやとお揚げの煮浸し
絹さやはメインになることが少ない野菜ですが、青々しい独特の風味があり、旬の時分は特にやわらかく美味しいものです。ここでも油揚げからの出汁を利用して優しい味に仕上げましょう。煮すぎは禁物です。下茹では2分、煮汁で2分程度で十分です。くたっとさせないように、青々しく仕上げてください。また煮浸しはその汁も美味しいものです。残さず召し上がってくださいね。

材料:絹さや80~100g、油揚げ1枚
煮汁:出汁1C、塩小1/4、淡口小1、砂糖少々、みりん大1

1)絹さやは筋を取り、熱湯に塩一つまみを入れてさっとゆで、水にとる。
2)油揚げは油抜きし、縦半分に切って5mm幅に切っておく。
3)鍋に煮汁を作り、油揚げを入れて2分程度煮て油揚げからの旨みをを出してから、絹さやを加え、1〜2分程度で火を止める。

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4.夏野菜の水貝風
水貝は鮑を角切りにして塩水に浮かべた料理のこと。ちょうど今時分食べられる旬の料理です。これをカラフルな夏野菜で作ってみました。下ごしらえが少し大変ですが、前日にやって置けるので、お客様料理としては便利です。冬瓜をゆでるときに重曹と塩で色だしとアク抜きをしますが、ゆですぎると溶けてしまうので注意してください。
色が出たりアクが強い野菜以外なら以下の材料のほかにも隠元や枝豆など、夏野菜全般使っていただけます。今回は応量椀に盛り付けましたが、ギヤマンなどに盛っていただくとより涼しげですね。
たて塩とは海水程度の濃度(3%)の塩水のごとです。

材料:冬瓜100g(重曹小1/4、塩小1)、石川子芋(サトイモ)各1個、黄・オレンジパプリカ各1/2個、もろ胡瓜各1/2本、ミニトマト各1個、グリーンアパラガス各1/2本、ミョウガ1本
辛子酢味噌:白味噌70g、砂糖小1、辛子小1/2、酢大1
昆布出汁(たて塩仕立て)3C、氷適宜

1)冬瓜は皮をむき、種をとり、皮をむいて2cm四方に切って面取りし、塩と重曹を混ぜたもので皮の面だけ板ずりして、熱湯で色よく茹でて水にとる。水は数回かえる。

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2)石川芋は蒸すか茹でて皮をむいて、大きければ1/2に切っておく。
3)もろきゅうは塩ずりして切って1cmに切ってさっとしもふって冷水にとり色出しする。
4)トマトは湯むきする。
5)パプリカは表面を焼いて皮をむき2cm四方にきる。
6)アスパラは下のほうだけ皮をむいてゆでてで冷水にとって2cmにカットする。
7)ミョウガは2mm程度の厚さで小口切りしておく。

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8)酢味噌を作る。まず白味噌と砂糖を鍋に入れてよく混ぜてから火にかけ、砂糖が溶けたら火からおろし、酢を加える。完全に冷めてから辛子を加える。

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9)器に1~7を盛り付け、立て塩程度の塩味の冷やし昆布出汁を注ぎ、氷を適宜加える。8をつけながら食す。


5.枝豆の東煮
旬の枝豆ですが、ゆでて食べる以外になかなか思い浮かばなかったりしませんか。料理のレパートリーに加えていただくべく、お酒のアテにもぴったりの東煮をご紹介します。東煮とは濃口醤油と砂糖で煮た料理のこと。江戸料理です。ちゃっちゃと10分もあればできますのでどうぞお気軽にお作りください。
まずしっかりと産毛をザルで取り除くこと、あまりかき混ぜてしまうと豆がさやから出てきてしまうのでいじりすぎないことがポイントです。また火を止める前に一粒召し上がってみて、味が薄いようなら、小さじ1程度醤油を振りましょう。さらに風味もよくなります。

材料:枝豆200g、唐辛子1本、砂糖・醤油各大1、酒・水各大2、ごま油小1程度

1)枝豆は塩をふり、ザルの中で転がして産毛をとり、さっと洗う。名残の太っているものの場合はさやの両端を落とす。
2)唐辛子はお湯で戻して、ヘタと種をとり、小口に切っておく。
3)フライパンにごま油をしき、枝豆を入れ、いためてしんなりしてきたら、2を加え油を絡ませ、砂糖と醤油を加える。

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4)酒・水を3に加え、蓋をして弱火で5分程度蒸煮にし、蓋を取ってさらに煮〆ていく。煮汁がほとんどなくなれば出来上がり。

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レシピ&原稿:温石会 入江亮子
(北鎌倉たからの庭<旬を楽しむ精進料理> 7月の献立より)

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