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「長月の精進料理」 2014年9月

今月は五節句のひとつ、9月9日の重陽の節句にちなみ、菊を使ったメニューを入れました。陽数(奇数)の九が重なることから重陽と名がつきましたが、中国から日本には飛鳥時代に伝わったそうです。別名「菊の節句」とも呼ばれ、薬草として伝わった菊花を浮かべた酒を飲み、菊の香りを移した真綿で体を清め、長寿を願いました。また栗の季節でもあるので、「栗節句」とも言われたりしますね。旧暦の10月初旬がちょうど食材の旬とも合います。

1.焼舞茸の菊飯 2.豆腐のおぼろ椀 3.旬菜黒酢照焼き 4.高野豆腐・木耳・絹さやの炊合せ 5.菊のジュレ


1.焼舞茸の菊飯
舞茸は軽くあぶってから使うと、香ばしさも加わり、よりおいしくなります。茸類は洗わずほこりなどをぬぐう程度にしたほうがいいですよ。有効成分が水溶性なので、洗うと溶け出してしまうのです。

材料:米2.5C、昆布出汁555CC、淡口大2、酒大1
舞茸1.5パック(酒・塩少々)、菊花5輪程度(塩・酢適宜でゆでる)

1)米は洗ってざるにあげておく。
2)舞茸は石突きをとり、酒と塩をふって直火であぶり、食べやすい大きさにさいておく。

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3)1と2を釜にいれ、調味、浸水し、15分以上おく。

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4)3を炊き上げ、10分おいて天地返しをするときに、酢と塩でゆでた菊花をちらす(ゆで方など菊ジュレレシピを参照ください)。

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2.豆腐のおぼろ椀
豆腐は切って使うことが多いかと思いますが、崩して入れるとまた風情が出ますし、豆の甘味もより感じます。とろみを付けるときは、いったん火を消してから、水溶き片栗粉を汁に入れると失敗しません。

材料:木綿豆腐1丁、干し椎茸2~3枚、三つ葉適宜
吸い地:水出汁+椎茸出汁5C、塩・淡口各小1
水溶き片栗粉:片栗粉大1・1/2(水同量)

1)木綿豆腐は水をしっかり切って、泡立て器などで細かく崩しておく。

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2)干し椎茸は荒微塵にしておく。
3)干し椎茸の戻し汁と昆布出汁で吸い地を作り、水溶き片栗粉でとろみをつけてから、干し椎茸、豆腐を加え、2分程度煮る。豆腐の水分で味が変わるので、必ず味見をして、塩気が足りなければ淡口で調整する。

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4)椀に盛り付け、刻んだ三つ葉を天盛する。


3.旬菜黒酢照焼き
季節代わりの今時分は体調を崩しやすいですね。残暑の日や食欲がない時に黒酢がぴったりです。季節の野菜でしたら、どれでも使えます。ポイントは食感や色の違うものを組み合わせること。いろいろな野菜でお試しください。

材料:万願寺唐辛子各1/2本、南瓜各1切、粟麩1切、エリンギ2本、人参4cm
黒酢たれ:黒酢・味醂・酒・醤油各大2
オリーブオイル、小麦粉適宜

1)万願寺唐辛子は縦1/2に切って、ヘタと種を取って金串にさして油をぬって焼いて塩をしておく。

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2)南瓜は皮ごと5cmの長さ、1cmの厚さに切って小麦粉うっておく。
3)粟麩も1cmの厚さに切り、小麦粉をうっておく。
4)エリンギは長さを1/2にしてから2~3等分にスライスしておく。
5)人参は短冊に切っておく。
6)フライパンにオリーブオイルを敷きエリンギと人参を別々に焼き、塩を振っておく。
7)次に粉を打った南瓜、粟麩と焼き、火が通ったら、合せたたれを注ぎ絡め、器に盛る。 

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4.高野豆腐・木耳・絹さやの炊合せ
高野豆腐は精進料理に欠かせない食材の一つ。なかなかうまく戻せず敬遠してしまう方もいるかと思いますが、戻さず直に煮汁などに入れる便利な高野豆腐もあり、栄養価も高い食材ですのでぜひ積極的に使ってみてください。今回は金串で焼き目をつけ、アクセントにしました。煮ものに使う場合は甘く炊くのがコツです。生木耳が手に入らない場合は、乾燥木耳を戻して使用してください。

材料:高野豆腐3枚
煮汁;出汁1C、砂糖大2、酒大1、淡口大1/2、塩少々
生木耳適宜
煮汁:煮汁:醤油小1・1/2、酒大1、出汁1/2C、胡麻油少々
絹さや各2枚(今回は四角豆を使用)
浸し地:出汁1/2C、味醂小1、塩少々
青柚子適宜

1)高野豆腐は仕様書の通りで戻し、軽く搾ってから煮汁で炊いて、金串で焼き目をつけて、1/2に切っておく。

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2)生木耳は石突きをとり、さっとゆがいて煮汁で炊いておく。

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3)絹さやは筋をとり、茹でてから浸し地に漬けておく(今回は四角豆を使用)。

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4)1~3を盛り付けて、ふり柚子する。


5.菊のジュレ
菊花の香りを生かしたシンプルな料理です。ジュレは固まるまで時間がかかるので、できれば前日に仕込んでおきましょう。先付などにぴったりです。ゼラチンは高温で溶かすと固まる力が弱くなってしまいます。60度程度の温度で溶かすのがポイントです。

材料:菊花3輪くらい
昆布出汁300cc、淡口・みりん・酢各大2、ゼラチン7g
生の菊花各1ひら(天盛り用)

1)菊は洗ってちぎり、熱湯に塩一つまみと酢を入れ、さっとゆで、すぐに水にとる。
2)ゼラチンは倍量の水でふやかしておく。
3)出汁に調味し、2を煮溶かして粗熱を取ってから1をちらして冷やし固め、フォークなどでつぶしてから盛り付け、生の菊花を天盛する。

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レシピ&原稿:温石会 入江亮子
(北鎌倉たからの庭<旬を楽しむ精進料理> 9月の献立より)


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