見出し画像

「皐月の精進料理」 2014年5月

いよいよ新緑の季節。鎌倉も若葉の萌える香りでみちています。まさに目に青葉、山ほととぎすです。数ヶ月前にはおどおどとぎこちない声で鳴いていた鳥たちも、今は朗々と唄っています。
茶の湯では、炉から風炉へと変わる節目の時期でもありますね。
今月の献立は、端午の節句にも役立てていただけるよう粽寿司、旬を迎えた天豆やアスパラガスを使った一品、精進料理の定番の山河豚のお造り、飛龍頭煮浸しなどを作りました。

1.粽(ちまき)寿司 2.天豆のすり流し 3.山河豚(こんにゃく)の刺身 4.飛龍頭(ひりょうず)の煮浸し 5.アスパラの落花生和え


1.粽寿司
粽(ちまき)は端午の節句に欠かせませんが、もともとは中国から平安時代に伝わったとされています。今でも大きな豚肉のかたまりやなつめ、栗などがたっぷり入ったもち米の中華粽を召し上がる機会も多いかと思います。日本では具なしの灰汁にもち米を浸して作るものや、お寿司、外郎地(ういろう)のお菓子など様々なタイプがありますが、なかなか実際に作ることが少ないかもしれません。
今回は笹の葉2枚で寿司飯を包み、イグサで結ぶ粽寿司を具を変え3種作りました。最初の留めが上手くいかないと緩んできますので、何回かやって体で覚えてしまうといいですね。笹には防腐効果もありますので、手土産にもうってつけです。
寿司飯を炊くときは水加減を通常の20%増しから15%に少し減らします。また浸水時間を置かずに炊くことが肝心です。打ち酢には火を入れてはいけません。また打ち酢を打ちつつ、扇ぐと粘りが出てしまいますので、しっかり混ざったら扇いで艶よい寿司飯を作ってください。

材料:米2C、水460cc
打ち酢:米酢45cc、砂糖小2、塩小1/2
干し椎茸各1/2枚、煮汁:椎茸の戻し汁1C、砂糖大3、醤油大2、味醂・酒各大1
梅干1個、大葉各1/2枚、いり胡麻小1程度
茗荷甘酢漬各1/4本
笹各6枚、いぐさ適宜、団扇

1)米は炊く30分前には洗って笊にあげておき、分量の水を入れたらすぐに炊き始める。
2)炊きあがったら10分蒸らし、2/3を飯台にあけ打ち酢をかけ、切るように混ぜてから団扇で扇ぎ冷まして使うまでぬれ布巾をかけておく。
3)残りの1/3のご飯は、種をとりほぐした梅干、いり胡麻と混ぜておく。
4)戻した干ししいたけは出汁に砂糖を入れ、火にかけ、数分後醤油を加え煮汁が半分以下になるまで煮る。
5)大葉は1/2に切る。
6)茗荷はさっとゆで、甘酢(砂糖1:酢1の割合に塩少々)に数時間は漬けて、1/4のくし型に切っておく。

画像9

7)握り寿司の要領で寿司45g程度を握って上に具をのせ、よく洗った笹で包み、イグサで結ぶ。

画像5


2.天豆のすり流し
すり流しは和風ポタージュ。3ステップで作れますが手間隙がかかっているように見える作り手にはうれしい一品です。
精進料理にミルクやバター? と思われる方もおいでかと思いますが、修行で疲労困憊の釈迦にスジャータという娘が乳粥を供養して元気を取り戻したという逸話が由来で、精進料理には乳製品は使われます。栄養たっぷりですし、温製でも冷製でも美味しいですよ。
天豆、グリーンピース、絹さや、隠元・・・様々なお豆が一斉に市場に並ぶ季節です。お好きなお豆を使って、旬を満喫してください。

材料:天豆@2~3本、出汁3C、たまねぎ1/4個、生クリーム50cc、塩小1弱、ピンクペッパー適宜

1)たまねぎはスライスして、出汁でやわらかく煮て、そこに皮をむいた天豆を入れて2分程度煮る。
2)1をミキサーにかけ、滑らかにしたら鍋に移し、火にかけて濃度を見ながら生クリームを加え、塩で調整する。

画像6

3)器に盛ったらピンクペッパーを飾る。


3.山河豚の刺身
蒟蒻を薄く切って河豚(ふぐ)の薄作りに模した精進料理の定番料理です。包丁の勉強にもなりますね。しっかり冷やして召し上がってください。なお、今回は薬味に浅つきを少々使用しましたが通常は用いません。5月でしたら山椒の葉を叩いて味噌に加えていただくとよいかと思います。

材料:蒟蒻1枚、浅つき1本
仙台味噌70g、砂糖60g、酒大1、酢40cc、練り胡麻小1、練り辛子適宜

1)蒟蒻は熱湯で数分ゆがいてからザルに揚げて冷ましておく。
2)鍋に味噌と砂糖と酒と酢の半量を入れよく練り、火にかけ火を止めたらすぐに残りの酢を加える。食べる直前、辛子を加える。
3)1をスライスして更に並べ、浅つきの小口切りを散らし、手前に辛子酢味噌を置く。

画像8


4.飛龍頭の煮浸し
この料理も精進料理の定番ですね。飛龍頭、別名がんもどき。手作りだとこんなに回りはさくっと、中はふわふわにできるのか!と驚かれるかと思います。ふわふわの秘密は大和芋です。豆腐の重量の10%を目安にお使いください。ほかの具は彩を考えて、きくらげがなければ黒胡麻や出汁をとったあとの昆布などで代用できます。筍やお豆を入れてもいいでしょう。色々と工夫して作ってください。

材料:木綿豆腐1丁、大和芋30g、人参10g、きくらげ少々、百合根各1片、しょうが少々、揚げ油適宜
煮汁:出汁300cc、砂糖小1、味醂大2、淡口大1・1/2、酒大1

1)豆腐は重石をして水分を抜いておく。
2)人参は千切りにし、さっとゆでておく。
3)きくらげは水で戻し、ゆでてから千切りにしておく。
4)百合根はよく洗って、形を揃え、たっぷりの水に酒少々(分量外)を入れて火にかけ、湯止めしておく。
5)水気を切った豆腐をぐしてすり鉢に入れ、よく当たり、大和芋のすり卸を加え、さらに滑らかになるまでよく混ぜ合わせる。

画像4

6)5に2~4を加え混ぜ合わせ6等分にして、手に油をつけて丸め揚げる。

画像7

7)煮汁を作り、飛龍頭をさっと煮て、おろし生姜を天盛する。揚げたてなら、煮汁をかけるだけでもよい。


5.アスパラの落花生和え
アスパラが旬です。青々しく、ほの甘い風味としゃきっとした食感、初夏を感じますね。そんなアスパラを濃厚な南京豆の衣で和えます。生の南京豆をゆでるのは手間がいりますが、風味が断然違いますね。
大事なことは、アスパラガスを茹ですぎないこと、しっかりと冷水で色止めすること、アスパラ自体にも下味をつけることです。どうしても時間がないときは浸し地の代わりに淡口醤油で醤油洗いをしてください。また生の落花生が手に入らなければ、ピーナッツバターでも代用できます。

材料:アスパラガス各1本
浸し汁:出汁1/2C、淡口小1/2、塩少々
和え衣:落花生1/4C、砂糖大2、醤油大1・1/2

1)アスパラは下半分の皮をピーラーでむき、茹でて、冷水にとってから、浸し汁に漬けて冷蔵庫へ。和えるときに器に合わせて3.5~4cmにカットする。
2)落花生は空をむき、茹でて、皮をむいてつぶし、砂糖・醤油で調味しておく。

画像2

画像3

3)器に1を並べ、上に2を乗せる。


画像1


レシピ&原稿:温石会 入江亮子
(北鎌倉たからの庭<旬を楽しむ精進料理> 5月の献立より)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?