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「水無月の精進料理」 2014年6月


今年ももう折り返し地点、1年の前半が過ぎようとしています。早いですね。6月を水無月とも言いますが、これは「水の月」という意味。梅雨でうっとうしい毎日ですが、たからの庭の樹木たちが、雨にぬれてはつらつとしている姿を見ると、なるほど水の月。水分補給されてうれしそうです。
また月末には夏越の祓えが行われます。茅の輪をくぐり、紙の人形(ひとがた)を小川に流し、半年の罪や穢れを祓い、残り半年の無病息災を祈願する神事です。
皆様の下半期も無事でありますようにとの思いをこめての献立にいたしました。この時期の茶菓としてもかかせない、水無月も作りましたので、ぜひご家庭でもお作りください。

1.天豆ご飯 2.赤茄子(トマト)のすり流し 3.賀茂茄子の鼈甲(べっこう)餡 4.みずの炒め煮 5.水無月


1.天豆ご飯
青々しくぽっちゃりとした姿の蚕豆は目にもご馳走ですね。必ず買い求めるときは、さやつきを買ってください。さやに包まれて鮮度が保持されているからです。逆に言うと空気に触れるやどんどん劣化していきます。なので使用する寸前にむき始めます。これ、絶対守ってください。
たからの庭では羽釜で炊きますが、一般には電気炊飯器で炊かれることが多いでしょう。その場合は、ピーという炊きあがりアラームで蓋をあけ、お豆を入れて蒸らしの余熱で火を入れます。
豆を入れる分量は、お米の30%を目安にしてください。また豆に対しての水加減はいりません。今、まさに出盛りです。どうぞ美味しく作ってくださいね。

材料:米2・1/2C、天豆(正味)150cc程度、塩小1/3、淡口小1/2、水出汁585CC

1)米は研いでザルにあげておく。
2)天豆はさやからだし、皮を剥いておく。
3)炊飯鍋に米をいれ、分量の水と調味料を加え、15分以上浸水させてから火にかけ、沸騰したら天豆を入れて炊き上げる

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4)10分蒸らし、天地返しをして盛り付ける。


2.赤茄子(トマト)のすり流し
赤茄子とはトマトの和名。なかなか風流じゃないですか。まっかかな路地ものの完熟トマトを皮ごとミキサーにかけて作る超簡単なスープです。一度火にかけて青臭みをとり、それから冷やしてお出しください。暑さで食欲がないときもすっと体に染み渡り、元気がでる一品です。温度により、味わいも違ってくるので、必ず提供する直前に味見をして、レモン汁などで調整してください。吸い口は紫蘇大葉にしましたが、木の芽、青柚子、万能ネギの小口きりなどでもOKです。

材料:赤茄子500g、砂糖大1~2、蜂蜜大1、紫蘇大葉2~3枚程度
(酸味足りなければレモン汁大1程度)

1)トマトは皮ごと乱切りし、ミキサーへかける。
2)1を鍋に移し、砂糖を加え火にかけ、沸騰したところでアクを引き、火を止める。荒熱が取れたところで蜂蜜を加え、冷蔵庫で冷やす。

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3)大葉は千切りし、水に放っておく。
4)2にレモン汁などで味調整を行ってから器にもり、3を天盛する。


3.賀茂茄子の鼈甲(べっこう)餡
賀茂茄子は皮も柔らかく、口に入れるとトロッと溶ける感覚がたまらない、夏食材の王様ですね。油との相性がいいので、新鮮なサラダ油で素揚げして、鼈甲餡をかけました。
茄子の紫色をきれいに保つには油の温度が大事です。低いと退色してしまい、またべちょっとした仕上がりになります。175~180度程度の高温で揚げてください。
添えた野菜は今回は長いもを使いましたが、手がかゆくならないようにポリエチレンの袋に入れて、上から叩いてつぶしました。

材料:賀茂茄子(大)各1/6個
長いも5cm、茗荷1本、卸しょうが小1、もみ海苔1/2枚分
鼈甲餡:出汁1C、醤油・味醂各大1、片栗粉大1(倍の水で溶いておく)


1)賀茂茄子はヘタを落とし、櫛形に6等分し、さらにその1片を3等分する。
2)180度の油で賀茂茄子を揚げ、軽く塩を振っておく

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3)長芋は皮をむき、ビニール袋に入れて、包丁の峰で叩いておく。

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4)茗荷は縦1/2に切ってから、3cm程度の長さに細く斜め切りにし、水に放っておく。
5)出汁を温め調味し、一旦火を消してから、水溶き片栗粉を加え、よくかき混ぜてから火をつけなおし、しっかりとろみをつける。
6)揚げた賀茂茄子に餡をかけ、山芋、茗荷、卸生姜を乗せ、もみ海苔をふる。

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4.みずの炒め煮
みずは別名「ウワバミソウ」。アクもあまりなく、しゃきっとした歯ざわりなのに、ぬるっとする食感がおしろい初夏の山菜です。火を入れても退色しにくいのも重宝ですね。今回は茎を食べましたが、葉の付け根のところに秋にできる実がまた美味しく、よく道の駅などで塩漬けで売っていますので、今度買ってみてください。

材料:みず1袋(300g程度),つき蒟蒻1袋、油上1枚
ごま油大1程度、出汁大2、酒大1、味醂大1、醤油大2、七味(好みで)

1)つき蒟蒻は洗って3cmの長さに切ってゆがいておく。
2)油揚げはキッチンペーパーで挟み余分な油をすわせてから3cmの長さ、2mmの幅に切っておく。
3)みずは洗って葉のほうから薄く皮をむき、熱湯に塩一つまみで2~3分ゆがいて、水にとって色止めしてから3cmの長さに切っておく。

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4)鍋で蒟蒻だけを先にからいりし、醤油小1/2程度(分量外)を絡めてから、胡麻油をしき、みずと油揚げを加え炒め、出汁大2、酒大1を入れて少し煮てから調味し、汁気がなくなるまで炒め上げる。


5.水無月
現代ではピンとこないかも知れませんが、かつては山の穴奥に冬の氷を貯蔵して、この時期に氷室守が宮中へ運んだそうです。お菓子の水無月は、そんな氷室の氷を象ったお菓子です。上に乗っている小豆(今回は大納言のぬれ甘納豆)の赤は邪気を祓う色とされています。関東ではここ数年、扱っている和菓子やさんが増えましたね。
流し缶にクッキングシートを敷いてから生地を流すと取り出しやすく便利です。温かいと粘りがでて切りにくいので、必ず冷ましてから、包丁は1カットごとに水にぬらして切ってください。甘みを抑えてあるので、大きくてもぺろっと召し上がれますよ。

材料:小麦粉60g、白玉粉・葛粉各30g、砂糖100g、水250CC、甘納豆100gくらい
流し缶(13.5×15cm)、クッキングシート適宜

1)小さめのボールに白玉粉を入れて、分量の水のうち50ccくらいを少しずつ加えながら粒をつぶすように混ぜる。
2)別のボールに葛粉をいれ、残りの水加え、砂糖、溶いた白玉粉を入れたらひとかきまぜし、小麦粉を加えてよく混ぜる。滑らかになったら漉しながら。シートを敷いた流し缶に入れる。その際、大2ほど生地を残しておく。

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3)よく湯気のたった蒸し器に、割り箸をはわせ、そこに流し缶を乗せて、ふたには布巾で水滴が落ちないようにして、強火で15分蒸し、いったん出して、甘納豆を乗せ、残しておいた生地をかけてさらに10分蒸す。

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4)冷ましてから8等分に三角にカットする。

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レシピ&原稿:温石会 入江亮子
(北鎌倉たからの庭<旬を楽しむ精進料理> 6月の献立より)


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