〈詩〉上京

にび色のJAL機が、にび色の雲を割って、降下を始める。
少し身を乗り出して、隣の席ごしに窓を見ようとすると、サラリーマンが、前を向いたまま顔を顰めて、寝たふりをする。
にび色の海に、にび色の都市が、斜めに見える。
空気までがにび色なので、きっと地面には、見たこともないような大きな鼠たちが、いるんだろう。
こうして初めて、つい先程まで居た場所が、色彩に溢れ、澄み渡った、特別なところであったことを、知った。

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