〔詩〕円
両の腕で円を造る。
円の縁に載せられた生後20時間の私の娘は、温かだった。
母の父が、両の腕で円を造る。
円の中に、私の父が立っている。
私の母の手術が、成功したときのこと。
母の父が、両の腕で円を造る。
円の中に、私が立っている。
私の娘が生まれて、ひと月後のこと。
母の父が、両の腕で円を造る。
円の縁に載せられた米袋は、私の娘の目方と同じもの。初孫の私を想起していたみたい、と私の母は言う。
両の腕で円を造る。
円の中に、骨となった母の父が入った箱がいる。
死後20時間の母の父は、温かだった。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?