〔詩〕ビーフジャーキー

ビーフジャーキーのジャーキーってなんだろう、と彼女は言った。
邪気じゃき、と僕は言ったけれど、彼女には通じない。
じゃきじゃき。
そんなあなたはジャンキーね、と彼女はマスカラを付ける。鏡も見ないで。

床にはビールの空き缶。自分で巻いた紙巻き煙草。シラバス。そしてビーフジャーキーの袋。
外は阿保みたいにベストの青空。5月の10時。
いつもと同じ朝だったし、いつもと同じおしゃべりだったんだ。

だけど彼女がうちに来たのは、それきりで。
10こも年上の数学講師なんかを好きになっちゃったって、彼女の友だちが教えてくれた。
確かに僕は必死に覚えた公式を、それはもうきれいさっぱり忘れちゃったけれど、彼女のことは心から大好きだったんだよ。
全部ビーフジャーキーのせいだ。
全部。

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