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SaaS事業で大切にしなければいけない概念を「事業」と「組織」観点から考えてみた

※素敵な画像拝借させていただいております。

デジタルマーケティングの事業を普段行っていますが、今回は組織と事業の両面から、SaaSサービスの考察を整理も兼ねて書きます。

SaaaSは、事業と組織の両面から成り立っている(成功しているサービスは両面からシンクロしていないとワークしない)モデルなので、両面から見ていく必要があると思い、まとめていきます。

0、SaaS型ビジネスの前提

SaaSビジネスの事業のグロースの本質は、顧客価値の最大化です。

その理由は、SaaSモデル(継続購入×無形商材)の特徴が、投下した費用(CAC)を数ヶ月かけて(継続して課金して)回収するので、新規顧客獲得は先行投資的になるというビジネス上の前提があるからです。
(売切型とは異なり、その場で損益が見えない。解約されて初めてLTVやユニットエコノミクスが見える)

コストという観点では、概ね投下したコストに対して、ユーザーが6~10ヶ月の契約を継続されて初めてUnit Economicsが良い状態(プラスに転化)になります。(もちろん例外もあります)

コーラルさんの記事では、コストの回収は「12ヶ月以内」と書いてますが、個人的には結構長い気がします。

①顧客単価
②チャーンレート(月次グロスチャーン・ネットチャーンにもよりますが)などのバランスや考え方にもよりますが、個人的には6~10ヶ月を目安に事業を設計した方が、ワークするサービスになり得るのかなと感じています。

こちらは考え方的には、とても参考になりましたので、掲載させていただきます。

<SaaSビジネスの前提のまとめ>

継続する(既存)ユーザーが絶えず増え、新規のユーザーが増え続けて、継続期間が長くなればなるほど(顧客が価値を感じ続けるほど)、収益が安定する仕組みです。
少し言い換えると、新規のユーザー・既存のユーザーに対して、顧客価値の最大化をチームで図ることが重要です。

顧客価値の最大化は、ビジネスとして当たり前といえば当たり前ですが、とはいえ、これができないとビジネスとして成り立たない、という文脈では、他のビジネスではないと思われます。

1、SaaS型ビジネスの指標 ~事業面~

続いて、ビジネス上の指標をまとめておきます。

SaaS事業の考慮する上で指標を定義することが重要な理由は、適切な課題設定をする上で、事業状況の定点観測するため、という理由があります。

特に提供するバリューチェーンの中で、全ての職務の人が持つKPIが、顧客価値の創造に寄与しやすいビジネスだからです。

以下、SaaS型のビジネスにおける指標の整理をしておきます。
※以下が全てではないですが、重要な指標として例にあげております。

初期のリリース時は見るべきポイントは、ざっくり
①新規顧客:新規獲得によるARRの増加
②既存顧客:アップセルによるARRの増加
③既存顧客:解約(Churn)によるARRの減少

を見るだけでも十分かもしれません。

指標が定義できていると、やるべきことが明確化できます。

SaaS型のビジネスの主な指標 ※色んなソースに載ってます

①Unit Economics(1人顧客、1アカウント得られる利益)
= 顧客生涯価値(LTV)÷ 顧客獲得単価(CAC)

1⃣CAC (Customer Acquisition Cost) 
=一顧客を獲得するためにかかった営業及びマーケティングの費用
2⃣LTV
=1人の顧客が生涯に渡り企業にもたらした価値の総計

②MRR (Monthly Recurring Revenue)  月間定額収益
=年間定額のサービスを提供している場合:額を12で割るケースが多い。

③ARR (Annual Recurring Revenue) 年間定額収益
=月間定額収益を12倍で算出

④ACV (Annual Contract Value) 年間発注額
= 契約が1年以上の場合、顧客が12ヶ月間で支払う金額

⑤ARPA (average revenue per account) 顧客ごとの平均収益

⑥Churn
1⃣evenue Churn  退会によるMRR損失額
2⃣Customer Churn  顧客の退会率
=当月の解約顧客数 / 前月末の顧客数

⑦Quick ratio
=一定期間内に失ったMRRと獲得したMRRの比率

⑧NPS (Net Promoter Score)  顧客満足度とロイヤリティ

⑨NRR (Net Revenue Retention) 売上継続率
=今月獲得した売上が、来年の今頃にどの程度になるのかを示す指標
⇒シリコンバレーのユニコーン企業は100%以上とも言われています。

その都度ビジネスの状況や顧客単価、資金の回転率等によって、見るべき仕様は変わりますが、一般的には上記で概ね図れます。

この指標を組織、部署、チームで共有されていて、今、何を最も注力すべきなのか、というのが見える化できて(課題設定できていて)、アクションに落とせていることが重要です。

数字は、あくまで意思決定のための指標、ということを忘れてはいけませんね。

2、SaaS型ビジネスの組織のあり方 ~組織面①~

freeeの佐々木さんの記事参考になるので、載せておきます。

SaaSは「テクノロジー業界の総合格闘技」とも言える産業であると、僕は日々思っている。技術、プロダクト戦略、営業やマーケティング、カスタマーサクセス、事業計画やシミュレーション、組織づくり、ファイナンス、など、あらゆる力を駆使して初めて顧客への価値とビジネスに結びつくのだ。

と書いてます。
これはまさにだなと思います。

新規獲得で成り立ってしまう売切型のビジネス(不動産、保険など単価が高い商材等)や労働集約のビジネスであれば、部分最適だけでも成り立ってしまって、組織側としても雇用しなくても良くない?みたいな議論が出てきやすいです(そういった議論が今後も出てきやすくなります)。

そういう意味では、「全体最適ありきの部分最適」が必要なSaaaSビジネスは、まさにチームで顧客に価値提供ができて、クライアントと一緒に個人も会社も成長できるという点では、実に面白いビジネス領域だと思います。
(クライアントが成長しないと解約される=自分たちも成長できない)

特に今後は顧客との関係性や顧客体験を最大化させていくことが、どんなビジネスでも必要になりつつある中で、現在SaaSビジネスを展開していなくても、学ぶべきことは沢山あるはずです。

前置きが長くなりましたが、SaaSではなくても起こり得る組織的な課題例をあげていきます。

部署単体でKPIを追うだけになる状態(部分最適な状態)
→部署毎の最適な状態になって、組織崩壊なども起こり得える

ⅰ インサイドセールスが無理やり商談をとって、お客様にもセールスにも迷惑をかけるケース(インサイドセールス→セールス)

ⅱ 課題にFITしてないプロダクトを売ってしまうセールスがお客様にもカスタマーサクセスにも迷惑をかけるケース(セールス→カスタマーサクセス)

ⅲ マーケティング担当者が、プロダクトとユーザーニーズが合わないリード(MQL)を創出して、インサイドセールスの人の工数を奪う(マーケティング→インサイドセールス)

職能の違いはあれ、特にSaaaS型ではなくても、バリューチェーンの中で、どんなビジネスでも起こり得ることだと思います。

唯一他のビジネスと異なるのは、全体最適を常に考えていないと成り立たない、ということです。
(難易度が高いですが‥)

3、組織的な課題をどう解決していくべきか ~組織面②~

うまく事業と組織をワークさせるために、じゃあどうやって部門間の壁をなくせるのか、という話ですが、おそらく観点は2つあると思っています。

①プロダクト軸、ユーザー軸、事業軸の観点を”関わる人全員”が持つための指標を常に定義した状態を作り、運用すること
⇔部署軸、役割軸で考えすぎず、常に組織の全体最適とユーザーへの価値提供を考える

なかなか難しい話かもしれません‥

個別でKPI達成しました、部門(マーケティング、インサイド、カスタマーサクセス)で達成しました、というのあるべきではなく、部門や個別の役割のの達成は、事業においてどう結果的に結びついたのか、という観点を全員が持つ必要があります。

・新規ユーザーの獲得
・継続率
・解約率
をどう追っていくか、などの部門や個別の話はありますが、あくまでユーザーへの価値提提供(成果)は、「あらゆる力を駆使して初めて顧客への価値とビジネスに結びつく」ということを前提に考えなければいけません。

逆に駆使できない状態(部門、部署間最適)だと、どこかに歪みが生まれて価値が提供できていない状態になってしまいます。

②部署役割を超えた形で、持ち場の指標を共有し合うこと

なぜ共有すべきか、というと全ての部署のは数値は、事業数値に紐づいているからです。
(図参照)

・継続は、受注しないとありません
・受注は、案件化しないとありません
・案件化は、見込顧客がないとありません
‥と、SaaSビジネスは分かりやすく、全ての部門の数字が繋がっています。

なので、自分の持ち場を守りつつも他部署の人の貢献があってこそ、売上や継続があるわけです。

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画像引用:https://note.com/butamissa/n/n73092115e133
こちらの方のnoteから拝借させていただきました。

繰り返しになりますが、顧客価値の最大化を数値に置き換えると

①Unit Economics(1人顧客、1アカウント得られる利益)
= 顧客生涯価値(LTV)÷ 顧客獲得単価(CAC)

になり、部門間で紐解くと以下に追うべき指標が落ちてきます。

マーケティング:見込顧客数
インサイドセールス:案件化数
セールス:受注数
カスタマーサクセス:継続数・継続率

新規顧客の獲得し続け、継続率を上げることで、ある一定ラインを超えるとユニットエコノミクスが黒字に転換してきます。

黒字になる=継続してくれている=ユーザーが価値を享受できている、と判断できます。

上記の図に書いてある指標(以下の引用部分)は、結局すべてのKPIは売上と継続率に繋がっているので、何がボトルネックなのかを視覚化できている状態が理想です。

意外にも他の部署の数値を把握していない、気にかけていないということも多く、また何が要因でユーザーに継続してもらえているのかが、見えていない、などもあったりします。
(過去にお受けしたSaaSサービスの企業様で本当にあった話‥)

③どのように共有するか

SFA、CRM、MAなど世の中には色々ツールがあって、リードの管理や共有、運用を行っていますが、まずは現状の課題設定や事業上のネックを洗い出さなければ、適切な課題設定ができずに、ツールを入れても効果が出ないということになりかねません‥

元hubspotの戸栗さんが、なぜ無思考にツールに依存してはいけないか、などに関して書かれてます。

個人的には「サービスイン初期などは、MAツールを導入しなくてもデータを統合して、一元管理でき、共有できるだけで十分」だと思っています。

どのように共有するか、というのと同時に、何を共有するのか、を考えることも重要です。

必然的に、どのように数字を追う体制を構築するか、という観点にもなると思うので。

4、まとめ

これまでのお話を図にしました。

キャプチャ015

事業面で
①部門間での最適ではなく
②全体最適を図るチーム
組織面で
①その時その時で追うべき指標(課題)を明確化させる
②定義した指標を、組織全体でチームで共有する
※共有の仕方や評価制度も重要ですが、ここでは割愛

ここまで書いて、ふと思いましたが、SaaSビジネスは
「One for all, All for one」が重要なのではないか、ということ。

言葉を調べたらまた良い記事を見つけたので拝借させていただきます。
(勝手に申し訳ございません‥)

まさにラグビーじゃん、と!

気づいたら5,000字書いてました汗

もう少し書きたいことがありますが、今日はここまでにしておきます。

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