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アイドルの「ノースキャンダル」を賞賛する意味

つい1日前noteを書いたばかりだが、未だに怒りが収まらないし、怒りが収まらない自分にもびっくりしている。

高木さんの件について、アップフロントの迅速すぎる対応がどうしても解せない。

今回の一件で、TwitterやInstagram、ニュースのコメント欄などを巡った。

「ルール違反だから今回の対応は当然」だの、「恋愛したかったら最初からアイドルをやらなければいい」だの、「恋愛したかったらアイドルじゃなくアーティストになればよかった」だの。

実際に高木さんやJuice=Juice、ハロプロを応援しているのかは分からないが、「アイドルとしての責任」を問う声や、事務所の対応を評価する声も少なからず見られた。

ただ、まず前提として、「アイドル=恋愛禁止」が本当にルール化されているかを疑う必要がある。

実際の契約書を見る術などないので、本当にあるかどうかは分からないが、そんな条件があってもなくても大問題だ。

noteを巡っていて、本当に仰る通りだなと感じた円衣めがねさんのnote。
膝を打った一節を勝手ながら引用させていただくが、全くもってそうだと思う。

“そもそも「恋愛禁止なんだよ」と明言するのであれば、契約書に明記してあるかどうかも教えて欲しい。本当に「恋愛禁止」であるのなら、それこそ今の世界情勢からしたら袋叩きにあう奴隷契約だよ。もし「暗黙の了解で」という曖昧なモノだとしたら、それこそ今回の脱退は不当な活動の制限であり、人権侵害に他ならないよ。”

明文化されていようがいまいが、どちらにせよそのような条件をつけていること自体が問題だ。

しかし、「アイドルなんだから恋愛禁止は当然。処分は妥当」という論調のコメントは、その点について触れていない。
恋愛禁止がハロー!プロジェクト内にルールとして存在していたのか、そして仮に契約条件に恋愛禁止があったとして、その条件は契約条件として適当だったのか、その点について言及したコメントがほとんど見られなかった。

つまり、「アイドル=恋愛禁止」が実際にルールとして存在しているか、またはそのルールの是非は関係なく、「アイドルは恋愛禁止で当然だ」という考え方が、水面下で一般に広く根付いてしまっているのである。

こういった方々はなぜ「アイドル=恋愛禁止」に疑問を抱かないのだろう?

ノースキャンダル=高いプロ意識?

昨年に白石麻衣さんが所属していた乃木坂46を卒業した。

その時メディアが挙って見出しに「ノースキャンダル」の文言を載せた。「ノースキャンダル」はTwitterのトレンド入りも果たした。

その「ノースキャンダル」は肯定的な文脈で、アイドルとしてのプロ意識の高さの象徴として使われている。この場合のスキャンダルは「交際報道」と見ていいと思う。

確かにすごい。長年エースとして一線で活躍して、何もスキャンダルがないなんて。「乃木坂46の白石麻衣」として表舞台に立ち続け、ずっとグループを引っ張っていた。

また、ハロプロでいえば、道重さゆみさんや嗣永桃子さんはプロ意識の塊だった。アイドルとしてのキャラクターを演じ続け、その一方で高いパフォーマンスを披露していたのだから。

その当時、私はハロプロを追っていたわけではないし、2人のこともバラエティでたまに見るくらいで特別応援していたわけではないが、それでもキャラを演じることがどれだけ大変かは想像はつく。また、この2人も例外なくスキャンダルがなかった。そんじょそこらの覚悟じゃできない。本当に尊敬する。

ただ、「ノースキャンダル」が「アイドルとしての高いプロ意識ゆえの結果」と見做されるのは、とてもとても危ないことだと思う。

だって裏を返せば、「アイドルのスキャンダルはプロ失格」と言っているからだ。

アイドルのスキャンダルなんてダメに決まっているだろう!と言う前に考えたい。別に「誰々とデートした」とか「誰々の家に泊まった」とか、別に公序良俗に反するわけでも、ましてや違法行為でもなんでもない。
「アイドルは夢を売る仕事だ」とは言う人もいるが、その夢とは何を指すのだろうか?恋愛をしない、ファンに普遍的に愛を振りまくアイドルじゃないと、夢は売れないの?だとしたらその「夢」って「もしかしたらこのアイドルと恋愛できるかも」って思わせること…?

いったい「アイドル」に何を求めているのだろうか。夢を売ると言う意味ではアーティストだって俳優だってお笑い芸人だってそうだ。「アイドル=偶像」であるが、アーティストや俳優やお笑い芸人だってある種の偶像だ。そこの線引きなんて曖昧だし、「アイドル」の定義なんて、あるのだろうか。

ましてやハロプロはパフォーマンスの高さを売りにしている。私はそういう認識でいた。もちろん個々人のキャラクターも素晴らしいが、いちファンの意見を言わせてもらうと、彼女たちのパフォーマンスが好きだから応援している。恋愛していようが一向に構わないし、実際応援している人の多くは、そのような考えをお持ちなのではないだろうか。

だから、交際報道が出た翌日にいきなり活動終了、という処分を下した事務所の判断が解せない。

そして、実際に明文化されているか分からない「アイドル=恋愛禁止」の謎ルールなんぞに捉われて、「アイドルは恋愛禁止で当然だ」と宣う非当事者の心理が本当に分からない。

恋愛禁止のルールがファンのため、他のグループメンバーのため、はたまた事務所のために存在(?)しているかは分からない。

ただ「恋愛禁止」の呪縛が、色んな人の人生を犠牲にしているのは想像に難くない。

自己を犠牲にしてまでアイドルを続けてほしくない

多くのアイドルは10代から活動を始めている。

10代は身体の成長が著しい時期でもあるが、何より精神的に揺れ動く時期。長い歴史の中には、恋愛で身を持ち崩したアイドルもいた。そういった意味で恋愛はリスキーな一面もあるが、パートナーがいることで人間的に成長することだってある。「恋愛」は別に悪ではない。

ところが、いつの間にやら登場した「恋愛禁止」のルールを守らざるを得なくなっている。そしてスキャンダルを起こさず、そのままアイドル活動を終えて次のステージにいく人も中にはいる。

恋愛をしないのが本人の意志なのか、高いプロ意識なのか、それとも恋愛をしている時間がないのか、それは見当はつかないけど、応援するファンのために貴重な10代〜20代前半を捧げて、恋愛とは無縁で過ごすのが健全とは思えない。もしかしたら、自分の気持ちを犠牲にしていたのかもしれない。

それでも「アイドルの恋愛禁止は当然」「ノースキャンダルは素晴らしい」なんて、とてもじゃないが言えない。アイドルを選んだ以上は覚悟すべきだとか、当人に対して言う権利なんて、少なくとも私にはない。


得体の知れない「アイドル」像に多くの人々が振り回されるのは、今回限りにしてほしい。





◆参考サイト

東スポWeb『乃木坂・白石麻衣〝ノースキャンダル卒業〟の舞台裏「怖い…と恐れられることも」』(最終閲覧日:2021-2-14)
https://www.tokyo-sports.co.jp/entame/sakamichi/2345439/

ORICON NEWS『“ノースキャンダル”だけじゃない、平成以降の女性アイドルが見せた“プロ根性”の形とは?』(最終閲覧日:2021-2-14)
https://www.oricon.co.jp/special/54249/





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