年をとらないアニメのキャラが教えてくれること

先日読んだ辻村深月さんの「凍りのくじら」(講談社文庫)。ドラえもんのひみつ道具が各章になっている本編も素晴らしかったのですが、解説がまた素晴らしかった。

解説は作家の瀬名秀明さん。その中で私が印象的だった箇所がこちら。

映画の『ドラえもん』では夏休みの冒険を経て、のび太とドラえもんはパパとママのいる家に戻ってくる。映画監督の山崎貴さんが以前にこんなことをいっていた。新学期になればまたのび太は0点を取るかもしれないが、それでも長年にわたって『ドラえもん』を観ていると、少しずつのび太が成長していることがわかるんだ、と。確かにその通り。毎年映画館でエンディングの空が映し出されるたびに、のび太と私たちは人生の小さな節目を体験し、ほんのちょっぴり育っている。(講談社文庫「凍りのくじら」解説より)

国民的アニメのキャラクターはいつまで経っても年をとりません。のび太くんはずっと小学生だし、しんちゃんは永遠の5歳児です。
それでも作品の中では季節も巡るし、数々の冒険を経験し彼らは成長していきます。
見た目は変わらないのに、中身はどんどんたくましくなっていくんですよね。

これって、現実でも起きていることなんじゃないかなぁと。

私たちは年はとりますけど、見た目が全然変わらない時期ってあるじゃないですか。それは大学生くらいのときかもしれませんし、おじさんおばさんくらいのときかもしれません。
そんな時ふと「何も成長していないなぁ」と思うことがあっても、そんなことはなくて、実はアニメのキャラたちのようにほんのちょっぴり育っているんじゃないですかね。

何も無かったような日々に思えても、その日々の中には嬉しいことや辛いことがあったと思うんです。そういう体験をしたあなたは、その体験をする前のあなたとは違うはずです。

また仕事でミスをしてしまうかもしれない、バカなことをやって怒られるかもしれない。それでも、あの日々を過ごしたあなたの中の何かはほんのちょっぴり育っていると思います。