連載小説|ウロボロスの種
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四日目
私は砂浜にいた。
私は長い枝を拾い、砂に円を描こうとした。うまく描けず、いびつな形ができた。
私はその形の上に、ふたたび円を描こうとした。二重のいびつな形ができた。
それを三度、四度、五度……とくり返していると、徐々に円の形が見えてきた。円が少しずつ整ってくる。これを無限にくり返せば、真円が描けるのだろうか。
フェデリコは、くり返すものには本質があると話していた。円を描くことを無限にくり返すことで真円が得られるなら、円の本質は無限の未来にあるのかもしれない。
もしかすると、こう言えるかもしれない。まずは無限の未来に真円がある。私の動作は、それに近づこうとしている。すると、まず存在するのは無限の未来。現在はそれに向かって近づこうとする。
フェデリコは、人間が何であるのかは人間の未来によって決まるとも話していた。無限の未来に存在する人間は、どんな姿をしているのだろうか。
私は、長い枝を円の中心に立てると、先端を砂にねじり込ませ、そこに枝を立てておいた。
夜はやはりバー・ニュクスへ行った。ほかに客はなく、私はリリィと話をした。
「心に何かが刺さっていますね」
そう言われた私は狼狽した。砂浜に立てておいた枝と、広場の道化師のことを思った。
「それとも、心から何かが生えているのかしら」とリリィは言った。
「刺さっていることと、生えていることの違いは?」
「そこに種があったかどうか」
種……。そこに種がなかったとしたら、それは刺さっていることになる。種があったのだとしたら、それは生えていることになる。種が失われてしまえば、刺さっているのか生えているのかは、わからなくなる。
広場を避けて歩く私の中には、原因となる種が埋まっていたのだろうか。
私は林檎のブランデーを飲んだ。強い酒との相性が良くなってきたような気がした。
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