2019年末、豊洲の仕事を辞めた話
どうも、IVTT代表おーいけです。
IVTT(アイブイティーティー)は
「ジムでもスタイリッシュに」がコンセプトのフィットネスアパレルブランドです。
今回は自分の中の整理も含めて、2019年末で辞めた豊洲でのマグロ仲卸バイトの話をしたいと思います。
そもそもなんですが、プロフィールには「フィットネスアパレルの代表」なんて書いてますが、実情はバイト掛け持ちでそれを元手に日々試行錯誤しながらブランド運営をしています。
大きな声では言ってませんが、ブランドにも自身にも関係有ることだったので整理したいな、と。
そしてその整理を”プラス”にしたいから、というのもあります。
その大きな理由、豊洲市場を辞めた理由が「豊洲市場が心底嫌いになったから」です。
働き始めたのはアメリカ留学から帰国後の3年前。
ブランドを始めることは決めて帰ってきたけど、とりあえずの食い扶持をどうしようか、と探してた矢先にジムの知り合いに「築地で働かない?人欲しいんだよね」と言われたのが始まりでした。
今までの生活で全く関わってこなかった”築地””マグロ”というワード達。
単純に新しいことを始めたいと思ってやります!と即答しました(ちょうど豊洲移転問題でうるさく言われてた時期でもあった)。
初出勤は朝6時。バイクで。
初日は体験なのですが、「初めての仕事」ということを差し引いてもキツイ仕事でした。
単純に言うと”3K”。
市場なのでめちゃくちゃ汚い。
魚の中でもマグロの匂いは最高クラスに強烈。(一番臭いのはサーモンらしい)
そして体験日以降は朝4時出勤。
”休憩”という概念が無い。
仕事終わるのは”仕事が終わった時”。(大体13〜14時でした)
専門用語の嵐。(サク、コロ、BA、ちく、ロイン、etc...)
初めてバックれようと思いました。
とにかく、とにかく始めた頃はきつかった。
朝3時に起きて3時半に家をバイクで出る。
10時間ずっと動きっぱなし。
-50℃〜60℃の冷凍庫に入ってダンボールの山からマグロを出す。
時間制限がある場所にマグロを急いで持っていく為にターレ(市場を走ってるあのマシンです)で市場中を駆け回る。
トラックから加工するマグロを引っ張り出してくる(本マグロの大きいやつだと大体200kg超える。4等分に切ってあっても50kgオーバー。足に落としたら指折れる)。
掃除もしっかりやらないとマグロの油が凄すぎて滑る。
途中からは自社配達の仕事も任せられるように。
9時頃から新宿や神保町方面にマグロ以外の魚を積んでハイエースで配達。
午後便もあるので配達終わったら市場に直帰。
全てが新鮮でしたがとにかく体力的にきつかったです。
ではそれが辞めた理由かと言われると違います。
冒頭にも書きましたが「築地・豊洲市場が心底嫌いになったから」です。
悪い意味で日本の閉鎖的な人・物・事が集まったところです。
自分さえ良ければいいという仕事の仕方。
仲良いやつには異常に媚び、外から来た人、新人には無駄に厳しく当たり、嫌がらせも平気でする、究極の身内贔屓。
自分より肩書きが上なだけで媚び諂い、自分より下と判断したら怒鳴りつける。
自分がされたら激怒して難癖付けまくるのに、自分がするのは大丈夫という精神。
そして上記のことを中で働いている人だけじゃなく、買いにくる常連客も同じ精神、ことをする。
正直救いようが無いです。
だって彼らはそれが好き、そこが好きなんですから。
自分もバイクにいたずらされました。
シートを十字に切り刻むという、やったやつにはなんのメリットも無い、只々嫌がらせである行為を。
一番許せないのはそういう奴らと同じとこで働いているという事実。
なので辞める決断をしました。
もう二度とあの場所に足を踏み入れる気はありません。
しかし、働いていた会社の人達には本当に本当に可愛がってもらいました。
”プラス”で終わりたい、終われるのはこの人達のおかげです。
社長は40半ばの2代目。
良い意味で市場に染まっていない、変わり者でした。
車に興味無い、風呂場に溢れるほど漫画が好き、ターレは嫌い、洋服にも全く興味が無い。
でも仕事が大好き。仕事は楽しい。それを教えてくれた社長でした。
社長に関しては印象深いエピソードが2つあります。
1つはある時、市場内のお客さんの場所がわからず、たまたま社長が空いてたので「教えてやるよ!」と一緒にターレで届けに行きました。
普段は社長は配達しません。なので客先に顔を出すのは久しぶり、ということです。
いつもの通用口から入っていき、挨拶をするのですが、その時の社長の態度の素晴らしいこと。
とても腰が低く、何度も頭を下げて「いつもありがとうございます」と繰り返す。
でも決して卑屈な感じでは無い。
本当に「いつもありがとうございます」と思っているんだな、と感じれる対応でした。
「ああ、人に物を売るっていうのはこういう態度なんだな」と教えてもらいました。
2つ目は初めて参加した新年会での挨拶。
新年会での社長の挨拶って”軽い説教”と”響かない抱負”のイメージがありませんか?
そのイメージを持ってたので、この社長の言葉も非常にハッキリと脳裏に焼き付いてます。
「みなさん、もっと仕事を楽しんでください。基本的に人に物を売るっていうのは楽しいことです。」
そうなんだ、今俺がやっていることは楽しいことなんだ、と仕事に対する見方を変えることができた一言でした。
これは自分のブランドへの姿勢を変えることもできました。
「お客さんに本当に感謝」して「仕事を楽しんでいる」社長。
今まで会った”社長”と呼ばれる人の中で一番尊敬しています。
もう一人、欠かすことのできないのが”親分”こと、マグロ部部長の中森さん。
”ザ・築地”みたいな人で(後々そうでもないってことを知るのですが)、始めは挨拶しても返してくれませんでした。
指示もオイ!と呼んで指を振るだけ。
勿論怖かったです。
しかしその指示をとにかく聞いて動いていると、段々認めてくれるようになりました。
最終的には人生相談されるようになるくらい仲良くなりました笑。
親分も印象深いエピソードが2つあります。
1つは働き始めて、段々認めてくれるようになった頃。
「お前普段なにしてるんだ」と。
「アパレルブランドを作っています」と答えました。
そしたら親分が「よし、できたら俺が全部買ってやる」と言ってくれました。
勿論本気では無いです。
でもその心意気に感動しました。
言葉にはならないですが、そこには明らかに「がんばってるお前がやるなら、買ってやる」という心意気が見えました。
実際親分は3年後に買ってくれました。
とても嬉しかったのを覚えています。
2つ目は社長と同じく、お客さんに配達した時の態度。
「今日は料理長に少し話すことがある」と言って場内のお客さんのところに一緒に行きました。
通用口から入り、大きな声ではっきりと
「いつもお世話になってます」と45度のお辞儀を5秒間静止。
正直めちゃくちゃかっこよかったです。
この人も本当にお客さんに”買ってもらってありがとうございます”という気持ちで働いているんだな、と感動しました。
勿論、親分も社長や会社に不満はいっぱいでした笑
でもお客さんに対するあの素晴らしいお辞儀は、不満や文句だけ言っている人からは絶対出てこない態度でした。
親分の若い頃は族にいたとか、刺青が入っているらしいとか、真偽の程はわかりませんが色々あったとは噂話程度に聞きました。
でも清濁併せ呑んで、今この親分がいる。
今でも思い出すとかっこよくて涙が出てきます。
他にも
「お前が一番ちゃんと働くし一番可愛い」とよく褒めてくれた伊藤さん。
バイクが盗難に遭った時も警察の知り合いに電話してくれたりとよく目を掛けてくれました(バイクは一週間後無事見つかりました)。
常に気遣ってくれた若くてイケメンな中村さん。
特殊な雇用形態が故に、色々腹割って話したりしました。
辞める時、「なにかブランドの仕事に役立つ物を選別でやるよ」と、なんとApple Pencilをプレゼントしてくれました。
その心遣いが本当に嬉しかったです。
最初から仕事を教えてくれた近藤さん。
近藤さんも今まで色々あったみたいですが、ブランドのこともよく心配してくれました。
”それっぽいアドバイスっぽいなにか”をしてくるしたり顔の大人はたくさんいますが、近藤さんは本当に考えて言ってくれているのが毎回伝わってきました。
これ以上挙げるとキリが無いので止めますが、この人達のおかげで3年間働くことができました。
これもある意味、いや全然身内贔屓だと思います。
でも市場は大嫌いだけど会社の人達は本当に尊敬できる男達ばかりなのです。
「大変だったろうけど、なにか一つでも得るものがあったならいいな」とは近藤さんが辞める時に言ってくれた言葉。
「人に物を売る」態度を教えてもらった、ということだけでも十分お釣りがきます。
因みに
マグロは捌けません。
そもそも魚を触りたくないです。
良し悪しもよくわかりません。
なのでマグロの事は聞かないでください笑。
以前のNoteにも書きましたが
音楽、アパレル、ボディビル、中国史のことなら
喜んで、夜通し、語りますのでお待ちしております!
以上、昨年末の大きな清算のお話でした。
読んでくださりありがとうございました!
(朝5時本マグロ解体時の様子)
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