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第4回 INSEADではイノベーションはどのように教えているのか?(その1)


私は結論を先に言うのが好きなので、今回も先に結論を言います。かなり長いので、複数回に分けます。

・イノベーションはこれからの時代において、戦略、アカウンティング・ファイナンス、組織論、リーダーシップと並ぶ重要科目である。
・イノベーションは複合的な学問であり、戦略、組織論、リーダーシップ、心理学の観点からの考察が必要になる。
・イノベーションの起こしやすい組織と通常の組織形態は異なる。2つの組織形態のどちらが良いということではない。
それは以下に詳しく述べていきます。

この記事を書くのにかなりの時間がかかっています。この情報を求める人にも役立ってくれると嬉しいです。そしてこの記事を書くことにより、私は学んだことを復習できており、これも効果が大きいです。

イノベーションは必須科目の1つ

私がMBAを早稲田大学ビジネススクールで取得したのは今から20年も昔のことである。当時も今もビジネスの肝となる科目は、戦略、アカウンティング・ファイナンス、組織・リーダーシップである。要するに何をやる、儲かるのか?どんな組織で、リーダーは何をする?、である。これらの重要性は未来永劫変わらない。そして私が受講しているLead the Future Programにおいても、これらは必須科目になっている。
そのような中に、Lead the Future Programの最初の科目、としてイノベーションが入って来ました。こちらはだいぶ大きな意味があると思います。これからの将来において、新規事業、変革、disruptionといったものがより大きな意味を持つようになってくるからであろう。
結論を先に言うと、イノベーションは通常の組織では、起こりにくいし(=起こらないとは言わないが)、それをマネジメントする手法は従来型とは大きく異なる、と言うことである。これを知らなければ組織を率いる立場としてどのように組織を率いていったら良いのかも分からないと思う。今日はこの辺りを解説します。

担当教授は、Nathan Furr教授

担当教授は、Nathan Furr教授です。INSEADの公式サイトによれば以下のように書かれています(https://www.insead.edu/faculty/nathan-furr)。キーワードを太字にすると、戦略、技術戦略、デジタルトランスフォーメンションの教授です。このことからも、イノベーションというのが単純にアイデア発想、新規商品企画というプロダクトだけの範疇に収まる科目ではないということが分かると思います。すでに、イノベーションは戦略を構成する一部の要素になって来ているのです。

Nathan Furr is a Full Professor of Strategy at INSEAD, where he teaches innovation and technology strategy. Nathan earned his PhD from the Stanford Technology Ventures Program at Stanford University and holds BA, MA and MBA degrees from Brigham Young University. He has held permanent or visiting positions at INSEAD, ESSEC, and BYU.

Nathan Furr is directing Leading Digital Transformation and Innovation and Innovation in the Age of Disruption and Building Digital Partnerships and Ecosystems

さらには、このクラスでは教授の書かれたたくさんの著書と論文を参考にしながら講義が進んでいきます。実際に私も全ての著書を読んだわけではないのですが、教授が授業の中で、繰り返しながら大切なポイントを説明しながら進みます。イノベーションに関するポイントは、抑えることができたと思います。

クラスの中で一番参照された著書は以下の2冊です。
イノベーションを起こす人が取る行動、イノベーションを起こすためのプロセス、進め方、イノベーションを起こす組織、カルチャーについて書かれています。そしてこの本の素晴らしさは、何よりもこの著書の序文をイノベーションの大家でである、Clayton M Christensen教授が書いていることからも明らかでしょう。

そしてこの本の内容の多くの部分を説明した動画を見つけたのでここに掲載します。正直これだけの内容をYoutubeで無料で見られるこの時代って、すごいなと思います。

https://youtu.be/sGIAdHcitoY?si=zWz5yk9TawnkfhR9


もう一つ度々参照されたのが以下の書籍です。こちらはNathan Furr教授の最新著書です。新しいチャレンジを始める、キャリアを変える、ビジネスを立ち上げる、アイデアを発展させるときに私たちは不確実性に直面します。人はこの状態に対して混乱、不安、行動の恐れを感じます。しかし、不安要素というのは、同時に個人の成長、イノベーション、創造性の機会を提供します。コインの裏表と言いいます。これからの世界は多くの不安要素に溢れているわけですが、不安にばかり恐れ慄くのではなく、プラスの面にも目を向けましょう、さらにはこの不安と対処するための方法を提唱されています。私たちの人生において、大きな飛躍があるとき、そこには不安要素があったはずです。授業の後半において、この著書については教授が非常に熱量をこめて講義されていたのを思い出します。単なる気合いではなく、不安要素と立ち向かうための精神面での手法と、行動面での手法をアドバイスされています。これについての動画を見つけたので以下にリンクを貼ります。

https://youtu.be/EPCIpKEV-iY?si=lYNjCyufe-_I8wtx

イノベーションは複合的な科目である

今回、この科目を学んで分かったことはイノベーションは複合的な学問であるということです。これには、戦略、マーケティング、商品企画、組織論、リーダーシップ論、組織カルチャー、心理学などが関わっています。要素の一つを切り出してもうまく機能しません。全体として、イノベーションが起こりやすい環境を整えていく必要があり、これらの多くが従来の環境と大きく異なっているためにイノベーションが進みにくいのです。このことを経営者は理解する必要があります。

これらについては順に解説していきます。

Blue management vs Red management

最初の授業で教授から従来型のマネジメント手法(=Red management)とイノベーションに適した手法(=Blue management)についての説明があり、これがわかりやすかった。どちらが良い悪いという問題ではない。達成目標を考えたときに、どちらのマネジメントが相応しいのかということである。以下に二つの違いを述べます。

Blue managementの特徴
・試行錯誤
・計画よりも実行
・たくさんのテストで検証
・顧客ニーズの発見と想像

Red managementの特徴
・しっかりとした計画と報告
・成果の達成(失敗を防ぐ)
・ビジネスシュミレーションと分析
・顧客ニーズへの対応

このように二つの手法は大きく異なっており、従来型のRed managementにおいて、イノベーションを見出そうとしてもそれはなかなか進まないし、達成できないことは容易に想像が付く。さらにこのマネジメント手法へのシフトは経営トップからの働きかけがない限りは進まない、ボトムアップでは進まないことがわかる。どんな会社も最初はスタートアップでした。そこからヒット商品が生まれ、事業が拡大し、社員が増えてきます。仕事を効率よく進めるために、組織を分けて、ルールを定めて、KPIを設定して、管理していきます。これは必然のことです。
しかしながら、この環境は出来上がった組織には相応しいものですが、イノベーションを起こそうとする組織にはフィットしないのです。
この考えは皆さんにもしっくりくるのではないでしょうか?

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