「NFTはブロックチェーンを知らないと理解できない」って言う人,エンジニアでも目指してるの? みんな背景知識に依存しすぎ.
何か新しいことを学ぶとき,既存の知識を活用するのは良い.
しかし,過度に頼ろうとすると,全く未知のことが学べなくなるし,歪曲して理解してしまうリスクが高まる.
簡単なことに難しいことを混ぜるな
最近特に気になっているのが,所謂“web3界隈”の人たちの一部が言う「NFTを説明しようとすると,ブロックチェーンから話さないといけないから時間がかかる」などと言う言葉.
真っ赤な嘘だ.
ほとんどの人にとって,NFTを理解するのにブロックチェーンなんて知らなくていい.
ブロックチェーンを知らないといけないのはエンジニアくらいだ.
NFTに触れる上で知っておかないといけないことは,「所有権を証明してくれる」「履歴を誰でも閲覧できる」「履歴を改竄できない」くらいだ.
それさえ知っておけば,例えば2021年初頭のNFTの盛り上がりを理解するのに必要なのはファインアートに関する知識だし,PFPの盛り上がりを理解するのに必要なのはブランドとコミュニティに関する知識だし,リビールという機能を理解するのに必要なのは柔軟な発想力だ.
まさかハッシュ値云々を知っている必要はないし,ましてビットコインと同じ技術が使われていることすら知っている必要はない.
もちろん,そこまで詳しく知っていることには,それなりの意味があると思っている.
しかし,「NFTはそこまで知らないと理解できない」と言うのは欺瞞だ.
難しいことを難しいまま言うのは悪くないが,簡単なことに難しいことを混在させて難しくするのは違う.
背景知識依存からの脱却
ここまでは発信者側の話.ここからは受信者側の話.
何か新しいことを学ぶときに,既存の知識を活用しようとしすぎると,既存の知識が使えないようなことを学べなくなる.
また,本来既存の知識が使えないところで無理に使おうとすると,曲解を招く.
既存の知識というのは,議論や知識体系の基礎にするかアナロジーに用いるというのが基本的な使い方だ.
例えば僕の数学関連の記事は,“小学校の算数のことは言われれば思い出せる,中学校の数学のことは言われれば雰囲気だけ思い出せるという人”の持つ数学の知識で理解できるように書いている.(一部例外もあるが)
ただ,僕は内容的・論理的に必要十分以上のことを書くのが好きじゃないので,論理的読解に慣れていないと理解するのが難しいかもしれないが.
とにかく,背景知識がなくとも,物事を構造的に理解する力があれば,新しいことをどんどん学んでいける.
意味論的思考も大事だが,構文論的思考が蔑ろにされすぎている.
(ちなみに多くの場合,意味論的思考がなされているわけでもなく,既存の知識に基づいて物事を勝手に捏造して理解した気になっているにすぎない.)
加えて,何をどのレベルで理解したいのかを意識することも重要だ.
NFTに関して言えば,エンジニアを目指すならスマートコントラクトの書き方くらいは学ばないと話にならないだろう.
しかし,NFTを手段として使うだけならば,NFTの性質を知っておけばよい.
原理ではなく概念のみを学ぶだけで十分だ.
特にAIの発達した現代では,もはや人間は概念を理解することに集中し,原理なんて考えなくていいのかもしれない.
もっとも,原理を無視して概念のみを扱うには訓練が必要だが.
本来このような訓練は数学が担える部分だが,受験をゴールにする高校数学までは計算練習ばかりだから意味がない.
今後はむしろ,四則計算よりも重要な能力だと思うのだが.
学びたい人が学び易いように
この記事で主張したことが全てではないが,学びのハードルが実際以上に高くなるのは個人的には好ましくないので,思うところを綴ってみた次第である.
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