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5/12=15/36って当たり前か?
例えば$${\dfrac{5}{12}}$$と$${\dfrac{15}{36}}$$が同じ数だということは,一定以上の年齢の日本人ならほぼ誰でも知っているだろう.
しかし,それは果たして当たり前なのだろうか?
$${5}$$と$${15}$$は違う数である.$${12}$$と$${36}$$も然り.
それなのに$${\dfrac{5}{12}}$$と$${\dfrac{15}{36}}$$が同じ数であるというのは,当たり前というのは暴論ではなかろうか.
難しい問題ではないかもしれないが,少なくとも説明はできる必要がある.
とはいえ,説明もそれほど難しくはない.
以下二つの図を見比べてもらえば一目瞭然である.
![](https://assets.st-note.com/img/1703653127873-BBG6Megw11.jpg)
![](https://assets.st-note.com/img/1703653137810-ZZx5hOjpSn.jpg)
しかしこれは,算数的な説明である.
数学的な説明はどのようなものであろうか.
いくつかの方法があるかもしれないが,ここでは同値類という考え方を用いる.
そのためにまず,同値関係を理解しなければならない.
同値関係とは,反射性・対称性・推移性の三つを満たす二項関係のことである.
すなわち,
$$
\begin{align}
& x \sim x \\
& x \sim y \to y \sim x \\
& x \sim y \wedge y \sim z \to x \sim z
\end{align}
$$
が成り立つとき,「$${\sim}$$は同値関係である」あるいは(例えば$${x \sim y}$$のとき)「$${x}$$と$${y}$$は同値である」という.
ただし,「$${\to}$$」は「ならば」,「$${\wedge}$$」は「かつ」の意味であり,上記(1)が反射性,(2)が対称性,(3)が推移性を表す.
同値関係の例として,最も自明なものの一つは等号関係である.というより,等号関係を拡張・抽象化した概念が同値関係であると考えられる.
さて,ここで$${(a,b)}$$という整数の組と$${(x,y)}$$という整数の組の間に,
$$
a \cdot y=b \cdot x
$$
という関係が成り立っているときに「$${(a,b) \approx (x,y)}$$」と書くことにすると,$${\approx}$$は同値関係になる.(上記(1)-(3)を検証すれば分かる
このとき,
$$
\{ (x,y) : (a,b) \approx (x,y) \}
$$
という集合を考える.
すなわち,$${\approx}$$の意味で$${(a,b)}$$と同値である整数の組$${(x,y)}$$全体の集合である.
このようにして同値関係により定義される集合のことを一般に,同値類と呼ぶ.
また,今回の同値類における$${(a,b)}$$のようなものを(同値類の)代表元と呼ぶ.
ここで重要なのは,$${ \{ (x,y) : (a,b) \approx (x,y) \} }$$という集合の中で任意に代表元を取り替えても同じ集合になるという点である.(同値関係の定義から容易に証明可能
以上の内容を踏まえると,同値類$${ \{ (x,y) : (a,b) \approx (x,y) \} }$$の要素は全て同じ数を意味すると解釈することができ,その数を(とりあえず)$${(a,b)}$$と書くことができるが,この$${(a,b)}$$のことを普通$${\dfrac{a}{b}}$$と書く.
これが分数である.
(実際$${\dfrac{5}{12}}$$と$${\dfrac{15}{36}}$$を考えると,確かに$${5 \cdot 36 = 12 \cdot 15 =180}$$が成り立っている
※一部,厳密性よりも簡潔さを優先した.
参考文献:『集合入門』坪井明人・塩谷真弘・佐垣大輔 著(牧野書店
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