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ユメヒロバ①背負って生きていく人


ユメヒロバvol.1のお相手は、大学時代のサークルで出会った、あおやまみちろー。
群馬県の塗装屋に生まれ、大学卒業後は人材派遣会社に4年勤め、昨年より塗装業界へと進出し、活動拠点も首都圏へと移した。
その律儀さと勇壮な性格により、周囲から絶大な信頼を得ている彼の、パーソナルな一面を掘り下げていく。

真面目さのルーツを辿る

奥田:みちろーとは今までもよく仕事のことだったり、サッカーのことだったり、ハロプロのことだったり、色々語り合ってきたけれども、今回はみちろーの”パーソナル”な部分について聞いていきたいなと思います。

青山:はい(裏声)。

奥田:僕は今まで沢山の人と出逢ってきたけれども、みちろーはとても特異な人だと思っていて、僕は絶対的な信頼を置いているんだけれども。例えば、とても仲良い人に対しても、100%信頼できるかと言えば、YESと言い切れないところが人間には必ずあると思うんだけれど、みちろーに対してはなぜか絶対的な信頼感があって。それは多分、みちろーのものすごく真面目で、律儀な性格によるものだと思っていて。みちろーは、自分自身のことを、どういう人間だと捉えていますか?

青山:実は、大学時代にアルバイトをしようとした時、かなり色んなところに面接に行ったんですけど、どこも落ちたんですよ。初めて受かったところが、某ピザ屋だったんですけど。受かった理由を店長に訊いてみたら、「自分の良いところは何ですか?」という質問の答えで、「真面目さです」「その真面目さは何点ですか?」「100点です」と答えたからだ、と言われたんですよ。で、僕もそれは嘘をついていなくて、真面目さは100点だと思っているんですね。それは、自分の中でも好きなところというか、誇りに思っているところで。

奥田:えー、それはすごいね。

青山:なんで真面目さが100点なんだろうって考えた時に、自分の「みちろー」という名前が関係しているんじゃないかと思って。倫理に「倫」に「郎」なんですけど。小学生の時に、自分の名前の由来を親に聞く授業があるじゃないですか。そこで親に訊いた時に、「人として、良いこと、悪いことを見極められる人になってほしい」という由来だったんですね。そのルーツは自分の中で大きいなと思います。だから、今でも曲がったことは嫌いだし、それは自己評価・他己評価変わらずそうなのかなと。

奥田:それはきっと、みちろーが生まれる前から、「こういう人に育ってほしい」という願いが両親にはあったということなんだろうね。幼少期の頃も、真面目な教育という感じだった?

青山:親の教育がそうだったとは思わないですね。

奥田:特別厳しかったという訳でもない?

青山:ないですね。なんでこういう性格になったのかと言えば、よく疑問を持つ子どもだったみたいです。「どうしてこれはダメなんだろう?」みたいな。

奥田:何か真面目さとか、正義感というものを学ぶきっかけみたいなものはあったんですか。

青山:学んだ、ということで言えば、ワンピースという漫画ですね。とても筋が通っていて。作者もそうだし、主人公、キャラクター、ストーリー全部そうなんですけど。ワンピースの中での考え方が、カッコいいなっていう憧れがあったからこそ、自分もそういう道を辿っていったのかな。

奥田:僕にとっては、ハンターハンターが人生のバイブルで。小学生の頃からずっと読んでいるんだけど。確かに、自分も大好きな漫画に大きく影響されてきたというのは、あるかもしれないね。


背負うことが原動力に

奥田:僕たちの出会いは、ハロプロが大好きな人たちに集まり「ハロプロ研究会」(以下、「ハロ研」)という関西7大学で形成された大きなサークルで、みちろーはサークルをまとめる代表にもなっていたんだけど。一方で、当時アルバイトでは大会成績が日本3位という、接客で日本トップクラスになっていたり、空手の部活では、大会優勝したりもしていて。......どうやってやっていたんですか?(笑)

青山:マルチタスクみたいな?

奥田:そう。僕的に、みちろーはどっちかって言うと器用なタイプじゃないと思っているんだけど(笑)全ての場所で、全力を出して、そして結果も出していて。そこが僕は憧れていたところだったんだけれども。どういう想いでやっていたというか......どうやっていたの!?

青山:どうやって!?(笑)

奥田:うん。多分、ハロ研の人たちは、ハロ研のみちろーしか知らないから、大きなサークルをまとめて、なおかつ、自分自身もライブに行ったりして楽しんで、自分の時間全てをハロプロに費やしているという印象を持っている人が多いと思うんだけれど。僕はみちろーと近い関係だったから、色んな面を知っていて。なんで、色んなことができるんだろう?って思っていて。

青山:ハウツーで言えば、凄く嫌な言い方かもしれないですけれども、センスとか、才能だと思います。

奥田:おぉ。

青山:ただ、想いとしては、「期待に応えたい」が大きいですね。アルバイトも、空手も。アルバイトでは、店長から「こういう大会があるから、頼むから出てほしい」と言われて。店長も「やるからにはやるぞ」という感じだったので、自分が大会に出たいというよりは、周囲から求められているポジションは、今はここだな、と感じていて。その時はアルバイトに全力を注いでいたし、力の注ぎ方が、その時その時で分かっていました。
空手も、周囲から「センスがいい」と期待されていて、その期待に応えてあげたい、というのは、あったかもしれないな。

奥田:自分自身が、やりたいからやっている、というよりも、周りの期待を背負って、それが自分自身の力になっていたんだね。

青山:そういうことになるかもしれないですね。

奥田:僕も戦うフィールドを常に複数持っていたいと思う人間で、そういう意味ではみちろーと同じようなライフスタイルだったかもしれないんだけれども。僕は、どっちかと言えば、自分自身で頑張ろう、みたいな。自分の力でやってるぜ、というのを周りに見せつけたいタイプで、結果もそんなに良くなかったし、パワーの源、原動力というところで、みちろーと差が出ていたのかもしれないな。

青山:逆に憧れますけどね。自分のために頑張れる人って。僕は他人がいなかったら頑張れないので。結構自分には甘いんですよ。

奥田:周りの期待がなかったら、できないんだ!?

青山:全然何もできないです(笑)妙に、小さい頃から担がれて生きてきたから。担がれ慣れが大人になっても拭えないというか。

奥田:もしかして、料理とかも同じ?一人の時は、あまり頑張って作らないとか。(みちろーの手料理を食べながら対談中)

青山:美味い料理は一人でも作ろうとしますけど、盛り付けとかは誰かがいてくれたら、上手に盛り付けしようと思いますね。今は、奥さんと一緒に暮らしているので、盛り付けも頑張っています。奥さんも喜んでくれますからね。

奥田:それはこっちも嬉しいよね。

青山:そこをある意味、”期待”と受け取って、頑張ろうと思いますよね。

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諦めがつくということ

奥田:みちろーは実家が塗装屋で、大学卒業後、人材派遣会社に数年勤めて、最近塗装業界に転職したとのことなのですが、どういった経緯で転職したんですか?

青山:簡単に言ったら、家を継ぎたいから、なんですけど。

奥田:実家の塗装屋を継承するという想いがあったということ?

青山:そうです、今は修行中なんですけど。今の会社に勤務することになったのも、親の導きで。実家を継ぐんだったら、違うところで一度腕を磨いてこい、と。

奥田:親からそう言われたの?

青山:そうです。自分の意思ではなくて。たまたま親が業界にコネクションを持っているんで、東京の大きな塗装会社を紹介してくれて、就職のお願いをしてみるという形だったんです。

奥田:実家をゆくゆくは継いでいくということなんだけど、抵抗とかはありましたか?いつから決心がついた、というか。

青山:割と最近なんです。社会人一年目ですね。社長になりたい、みたいな肩書に対する夢はなくて。

奥田:そうなんだ。塗装業界も世襲制なんですか?

青山:うーん、多いとは思いますね。塗装に限らず、建築業界は人手不足なので。継ぐ人がいないところは潰れちゃったりとかもありますね。

奥田:お寺の業界はほとんど世襲制で。お寺に生まれた時点で、自分の将来が決まってしまうというか。

青山:宿命みたいな?

奥田:そう、宿命みたいな。みちろーもそうかもしれないけれど、小さい時から、ゆくゆくは継いでいくんだなと、なんとなく感じるよね。周りから色々言われることも多くあっただろうし。お寺の子どもたちは、お坊さんになりたくない人が多くて、でもなぜか最終的にはみんな継承していく、みたいな形なんです。それで、いつからみんな決心がつくんだろう?っていうことに興味があって。塗装業界はどうなんだろう。

青山:具体的な話をすると、父方のひいじいちゃんが、会社を始めたので、父方の実家が本社のような形なんです。自分が社会人1年目の時に......2年目だったかな?その時に、火事で会社が全部燃えたんですよ、一部事務所だけが残って。それで、事務所を建て直そうとなった時に、僕が実家の会社を継ぐのか継がないのかで、事務所の建て方が変わるという話になったんです。そこで、急な決断をしないといけなくなって。最終的に、継ぐ結論を出したんですけど。一番の想いとしては、長男として青山家は守っていきたいなという想いがずっとあったんですね。実家の継承問題は別として。お墓も会社の近くにあったから、そこは自分が面倒みていきたいし。お世話になった両親や、ひいじいちゃんには会ったことはないですけど、青山家を繋いでくれた人にできることは、作ってくれた会社を継承して、一番近くで守っていくことだなって。これは運命なんだなって、その時は思いましたね。なんで会社が燃えたんだろう?って。

奥田:火事がなかったら、その決断に至らなかったかもしれないもんね。火事が起きた理由は、自分の道を方向転換させるためだったのかもしれない......みたいな。

青山:そうなんです。その時に、変な言い方ですけど、”諦めがついた”というか。

奥田:若いお坊さん達も、そういう経験をする人が多くて。何か運命的な出来事があって、諦めがついて、決心していくという。

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「若者が希望を持てる社会」へ

奥田:最後に一つ聞きたいのが、実家の会社を継承していくと決心して、転職して、塗装業界で修行中の27歳の今、みちろーが持つ夢ってなんですか?

青山:僕の夢は、すごく抽象的ですけど、「若者が希望を持てる社会」なんですよね。若者を応援したいという気持ちがあって。夢がなかったり、レールに乗っかっちゃってるだけの人とか、自分はこうしたいって言えない人、自分に自信を持てない人が多い社会になってきてるなと思っていて。せっかく自分の人生なんだから、自分のしたいように生きられる社会になれたら良いなと思っていて、それを目指していますね。

奥田:良い夢だなと思います。それはみちろー自身の行動によって実現していきたいという想いもあったり?

青山:塗装屋って、こういう言い方は適切か分からないですけど、どうしようもない人が多いんですよ。前科がある人や、高校にも行けなかった人とか。そういう人たちが集まるところ。そういう人たちが希望を持てる業界をゆくゆくは作っていくことが、僕ができることなんじゃないかなと思います。10年で見るならば、まずは僕自身が変わっていくこと、そして次の3年で会社を変えていく、もっともっと若者をサポートできる体制を作っていく。その次は、業界全体に訴えかけていけるようにしたいですね。

奥田:実はお寺の業界も、人がどんどんお寺に来なくなっていったり、お葬式が減っていく深刻な課題を持っていて、何もしなければ業界全体が尻窄みになっていくと言われているんだけれど、塗装業界では何か具体的な施策とかってあるんですか?

青山:国としては、今後職人さんとして、外国の方々を雇用していこうという方針がありますね。

奥田:そうすると、今後みちろーの世代が業界を担っていく時には、地元の人が職人さんになるだけでなく、外国人の職人さんがいっぱいいるかもしれないってことか。

青山:そうですね。なので、誰もが働きたいと思える業界にしていきたいですよね。今は3Kと言って、汚いとか、給料が安いとか言われているんですけど、新しい3K(綺麗・給料が高い・休暇が取れる)を目指していきたい。そうすると、現場だから嫌だという声が、現場だからこそやりたいという声に変わっていって、自ずと後継者問題や人手不足問題が解決されていくと思っています。

奥田:みちろーが大学でしっかりと勉強して、人材派遣会社で勤務して蓄積してきた知識や経験が、将来必ず活きてくるんじゃないかなぁ。

青山:前の会社は先進的な施策が多かったので、業界の垣根を超えて、様々なことを取り入れていきたいですね。


あおやまみちろー┃PROFILE

群馬県出身。27歳。
人材派遣会社を経て、大手塗装会社に勤務。元同志社大学ハロプロ研究会会長。某ピザチェーン店の接客大会にて全国3位。
昔から田んぼのタニシは煮て食べる。一般的にタニシは食べられていないことを知ったのは18歳の春だった。



対談を終えて

彼の良いところは人として芯があるということ。真面目な性格について伺った時も、謙遜せず、100点の真面目さ、と言い切れるところに、意思の強さを感じられて、僕が思っている彼は、その通りの人だったなと、改めて信頼できる人だなぁと思いました。
また、会社の火事という悲痛な出来事も、それを自分の人生を転換させるために意味のあったものなのかもしれないと感じる感性の持ち主で、そういう感性も彼の魅力の一つなんだなと思いました。カッコいいですよね、彼は。
あと、個人的に嬉しかったのは、彼の家族に対する想いを聞けたことですね。それは今の家族だけじゃなくて、会ったことのないひいおじいちゃんに対してだったり、お墓を面倒みていきたいっていうことは、きっと会うことのない未来の子孫に対しても、想いを馳せる人なんだなぁと。僕たちのこの人生は、100年そこらで始まったわけでも終わるわけでもなく、連綿と受け継がれてきたものであり、これからも繋いでいくものですね。

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