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[将棋級位者向け]筋違い角戦法の使い方と対策シリーズ②。筋違い角の振り飛車パターンの攻め方をご紹介!

 こんにちは、ゆに@将棋戦略です。

 前回の続きとしまして、今回は筋違い角の攻め方をご紹介致します。筋違い角には、昔から大きく分けて居飛車パターンと振り飛車パターンがございまして、筋違い角が指され始めた頃は居飛車パターンであったようですが、今回は振り飛車パターンをご紹介したいと思います。


 なお、本稿は武市三郎様、美馬和夫様著の「奇襲の王様 筋違い角のすべて」(マイナビ将棋BOOKS)を参考にさせて頂きつつ、AI解析も活用しながら級位者向けの内容を目指したものとなります。筋違い角をより詳しくお知りになりたい方は武市様、美馬様のご著書をご覧になるのが良いかと思います。

 さて、それではテーマ図は下記に設定します。今回も評価関数は「Hao」を使用させていただきます。

 初手から
▲7六歩 △3四歩 ▲2二角成 △同 銀 ▲4五角 (途中図①)△6二銀
▲3四角 △3二金 ▲6六歩(テーマ図)

途中図①。▲6三角成と▲3四角の両狙いです。後手は歩を取られてしまうことが確定していますが、馬を作られないように、△6二銀と6三の地点を受けましょう!
テーマ図。振り飛車パターンはこの出だし。

後手目線:馬を作られないように気を付けましょう!

 筋違い角は初手▲7六歩に対し、△3四歩と突いてきた時に使える戦法となります。すなわち、いきなり▲2二角成△同銀とし、▲4五角(途中図①)と打ちます。この▲4五角を「筋違い角」と言います。なお、上述した手順で▲2二角成に△同飛と取ってしまいますと、▲6五角(参考図①)で▲4三角成と▲8三角成の両狙いとなっており、先手が成功となります。

参考図①。途中図①との違いは、▲4三角成と▲8三角成の両狙いとなっていて、必ず歩を取れるだけでなく、馬を作ることが出来る点です。▲2二角成には銀で取りましょう!

 さて、途中図①の▲4五角ですが、これは▲6三角成と▲3四角の両狙いとなっており、必ずどちらかを実現させることが出来ます。ここが後手としてはまず第一関門で、ここは必ず▲6三角成の方を受けましょう!前回指摘しました通り、途中図①で△3三銀などとして▲6三角成と馬を作られてしまうケースがとても多いです。一方、△6二銀と▲6三角成の方を受けておけば、▲3四角と取られても馬は作られず、被害を1歩損だけに留めることができます。当たり前の話に聞こえるかもしれませんが、出来ていない人が本当に多いです!

 少し興奮しすぎました(汗。続いて、先手が▲3四角と1歩取った局面です。ここでも先手に次の狙いがありますね。▲4三角成です。後手はこれも受けなくてはいけませんので、△3二金としましょう。なお、4三の地点を受けるなら△5二金右や△4二玉でも良いと思われるかもしれませんが、いつでも△3三銀と角を追いかけられるように、△3二金がオススメです。△5二金右でも△3三銀で角を追えるじゃん、と思ったそこのアナタ!▲2三角成(参考図②)と成られるのを見落としてますよ!

参考図②。意外と馬を作られるパターンは多いので注意!

 さて、後手に△3二金と受けられたら先手は馬を作ることは出来ませんので、ここから駒組に入ります。ここは必ず▲6六歩としましょう!何故かと言いますと、後手は次に△3三銀と角の逃げ場を聞いてくる可能性が常にあるからです。その時に、角の引き場所が5六に限定されているよりも、6七や7八の引き場所が選べる方がお得ですよね!△3二金には▲6六歩!これ、必須です。

 なお、ここまで一方的に歩を取られて、何度も受けの手を強要されている後手ですが、決して形勢が悪いわけではありません。先手と違って角を手持ちにしているので、いつでも好きなところに打てます(=先手の駒組を制約できる)し、先手が角を動かすのに手数をかけている分、金銀をたくさん動かすことが出来ます。一般的に、角や飛車のような大駒は利きが多いので駒の働きの位置依存性が小さく、動かす価値が小駒に比べて小さいのです。→参考

 さてようやくテーマ図にたどり着きましたが、ここで後手にいくつかの指し方が考えられます。まずは飛車先を伸ばす自然な△8四歩を見ていきましょう。

 テーマ図から
△8四歩 ▲8八飛 △8五歩▲6八銀 △3三銀 ▲5六角△4二玉
(途中図②)

途中図②。何でもない局面に見えますが・・・。

△8四歩には▲8八飛!

 △8四歩と突いてくる手に対し、前述した定跡書では▲8八銀と上がっていますが、ここでは違う手を紹介してみます。それは▲8八飛です。一瞬、飛車のコビンが心配になりますが、△4四角のように角を手放してきたら▲6八飛と戻っておいて大丈夫。

 この▲8八飛には強力な狙いが秘められているので、ぜひ覚えて下さい。後手は△8四歩の継続手で、△8五歩と突いてくるでしょう。ここで、▲6八銀は必要な一手ですので必ず上がっておきます。以下、駒組を進めて途中図②。

 一見何でもない局面に見えますが、ここで先手の狙いが炸裂します。

 途中図②から
▲8六歩 △同 歩▲8三歩 △7二飛 ▲8六飛 △7一銀
▲8二歩成 △同 飛▲8三角成 △同 飛 ▲同飛成 △9二角
▲同 龍 △同 香▲8三角(結果図①、評価値も併せて表示)

結果図①と評価値。▲6一角成と▲9二角成の両狙いで、いきなり先手が優勢!

▲5六角+▲8八飛で▲8三歩を狙おう!

 途中図②は大チャンスの局面です。必ず▲8六歩と仕掛けましょう。△同歩に狙いは▲8三歩です。8三の地点には5六の角が遠く利いています。よく確認して下さいね!したがって後手はこの歩を取れないので、△7二飛と逃げるよりなく、先手は調子良く▲8六飛と飛び出ることができます。次に▲8二歩成で飛車を逮捕できるので、とても好調な攻めです。

 ちなみに、先ほど▲6八銀は必要な一手と言いました。もし▲6八銀を上がらずに、同じように攻めたらどうなるか分かりますか?そう、▲8六同飛に△9五角と打たれてしまうのです(参考図③)。これでは、いけませんね☆彡

参考図③。絶対食らったらダメなやつ。

 さて、先手▲8六飛の攻めに、後手は△7一銀と引いて8二の地点を守るよりありません。先手はここで休んじゃダメですよ!続けて▲8二歩成と攻めて下さい。△同銀なら▲8四歩と打ちます(参考図④)。確認してほしいのですが、先手は8三の地点に歩、角、飛車の3枚が利いています。後手は銀の1枚しか利いていません。したがって8三の地点はこれで確実に破れるのです。

参考図④。これで8三の地点が受からない。

 ▲8二歩成に△同飛は上述した手順の通り指して、最後の▲8三角が金、香両取りとなって先手優勢です。評価値+700ですから、先手相当勝ちやすいはずです!

 さて、後手も駒組を考え直さなければなりません。先ほどの手順では、先手の5六角の利きが厄介でした。そこで、▲5六角と引かれる前に△7四歩と突いておく手が考えられるでしょう。早速そちらを調べてみましょう。

 テーマ図から
△8四歩 ▲8八飛 △8五歩▲6八銀△7四歩 ▲5六角
△7三銀(途中図③)

途中図③。ここでも攻めていきましょう!

△7四歩には▲7五歩でこじ開け作戦!

 △7四歩と突く手に対しても構わず▲5六角と引きましょう。これで次に7四の歩が取れます。後手は△7三銀と受けます(途中図③)が、これでも構わず仕掛けちゃって下さい!

 途中図③から
▲7五歩 △同 歩 ▲8六歩△同 歩 ▲8三歩 △6二飛
▲8六飛 △7二金 ▲7七桂△4二玉 (途中図④)

途中図④。ここからの攻め手順はすごく難しいです。暗記でもいいので何とか習得しよう!

びっくりされるかもしれませんが、いきなり▲7五歩とこじ開ける手が成立するのです。△同歩にはさっきと同じ要領で、▲8六歩△同歩▲8三歩から▲8六飛と捌いていきます。次の狙いは分かりますか?8二の地点の利きは現状2対2なので破れません。が、一旦▲7四歩(参考図⑤)と打つと△6四銀と逃げるしかなく、8二の地点の利きが2対1になるので破れます。

参考図⑤。▲8六飛は先手になっているので、△7二金と受けないといけません。

そのため、結局後手は△7二金と受けないといけません。先手もすぐには攻めきれないので、ここは一旦▲7七桂と力をためましょう。次に▲6五桂と跳べれば、5三の地点も狙っているので後手としてはすごく嫌ですね!そこで後手は△4二玉と5三の地点を補強して途中図④。

 ここからの攻め方はとっても難しいです>< 暗記でもいいので何とか習得して下さい!

 途中図④から
▲6五桂 △6四銀▲8二歩成 △同 金 ▲7二歩 △同 飛
▲5三桂成 △同 銀▲8三角成 △同 金 ▲同飛成
(結果図②、評価値も併せて表示)

結果図②と評価値。先手わずかに有利とのことですが、これだけ一方的に攻めてれば勝ちやすい!

 まずは▲6五桂と気持ちよくジャンプ♪続いて、△6四銀に▲8二歩成と成り捨ててしまいます。これはどういう意味かといいますと、先手としては角が5六にいて8三の地点を睨んでいるので、争点を8三の地点に変えたいのですね。具体的には△8二同金に▲5三桂成△同銀▲8三角成です。が、すぐにやるのは△同金▲同飛成△9二角(参考図⑥)くらいで微妙です。

参考図⑥。▲8三飛成だ単なる桂取りだと、後手に受けられて微妙。

そこで、△8二同金には一旦▲7二歩と打ちます。これは次の▲7一歩成狙いですが、△同金と取ると▲8一飛成と取られてしまうので、△同飛と取るしかありません。そこで先ほどの▲5三桂成を決行したのが結果図②。参考図⑥との違いがお分かりでしょうか?▲8三飛成が7二の飛車取りと8一の桂取りになっており、受けが難しくなっているのです。

 結果図②の評価値は+300点程度で、やや有利くらいですが、これほど一方的に攻めているのであれば、相当勝ちやすいでしょう!

 ちなみに▲8六歩の場面に戻って、ちょっと強い人相手だと△5四角と打ってくるかもしれません。しかし、それには▲7八金と受けておいて、△2七角成に▲8五歩(参考図⑦)として下さい。馬は作られてしまいますが、次の▲8四歩がとても厳しく先手悪くありませんのでご心配なく。

参考図⑦。▲8四歩が厳しいので先手悪くないです!

 さて、ここまで後手が△8四歩とする指し方を見てきました。しかし、ここまでコテンパンにされると後手は思うでしょう。もう△8四歩なんて指さないぞ!と。

そこで、△8四歩に代えて中央志向の指し方を調べてみましょう。

 テーマ図から
△3三銀 ▲7八角 △4二玉▲8八銀 △5四歩 ▲6八飛
△5三銀 ▲7七銀 △3一玉▲3八金 △5五歩 ▲4八銀
△5二金 ▲4九玉 △1四歩▲1六歩 △5四銀 ▲3九玉
△6四歩 ▲2八玉 △4四歩▲7五歩 △2二玉 ▲8六歩
△4五歩 ▲8七角 △4三金右(途中図⑤)

途中図⑤。四間飛車+4八銀3八金型が個人的にはオススメ!

四間飛車+4八銀3八金型が個人的オススメ!

 後手の方はいろいろ指し方がありますが、ここでは参考までに5筋、4筋の位を取る指し方を見てみましょう。

 先手の駒組については、先にご紹介した武市様、美馬様のご著書が大変参考になりますので、ぜひそちらもご覧下さい。ここではゆにの個人的オススメの指し方を示します。

 まず△3三銀と角を追う手には7八に角を引いて、その後四間飛車に構えましょう。(ただし、▲6八飛とするのは▲8八銀の後です。単に▲6八飛とすると△9五角と打たれてしまう可能性があります!)そして後手の5筋、4筋位取りには、先手の囲いは4八銀3八金型がオススメです!ポイントはこの二つで、細かい手順は多少前後したって構いません。

 ちなみに普通の美濃囲いはなぜオススメしないのかといいますと、後手からいつでも△5六歩▲同歩△7九角(参考図⑧)のようにされて、飛車を人質に取られるのがイヤなのです。飛車角交換自体は別にいいのですが、この状態では攻めたくても攻められないのです。

参考図⑧。美濃囲いだといつでも飛車が人質みたいになる。

 さて、先手は囲い終わったら、角の活用経路を切り替えます。すなわち、▲7五歩~▲8六歩~▲8七角とします。後手は△4五歩と、歩で角の利きを止めようとしています。このような時は必ず角の転換を考えましょう。

 ▲8七角に△4三金右として受けたのが途中図⑤。ここから先手は攻めていくのですが、手順がすごく重要なので覚えて下さい!

▲6五歩 △同 銀 ▲7六銀 △同 銀 ▲同 角 △6五銀
▲8五角(結果図③、評価値も併せて表示)

結果図③と評価値。先手が互角以上に戦える!

△4四角のラインに気を付けよう!

 途中図⑤からは▲7六銀から▲6五歩と攻めるのが自然に見えますよね。でも、▲7六銀の瞬間が少し怖いところなのです。難しい話になってしまうのですが、▲7六銀と指した瞬間、7六銀と8七角がどちらも奇数マスに位置してしまうため、偶数マスのライン、つまり具体的には△4四角のラインにものすごく弱くなってしまうのです。→奇数マス、偶数マスの説明

 例えば、▲7六銀には△6二飛▲6五歩の瞬間に△5六歩(参考図⑨)と突かれ、▲同歩に△3五角や△4四角の反撃を受けるハメになります。これが▲7六銀から攻める際の最大の弱点となりますので、常に注意を払って下さい!

参考図⑨。▲7六銀と上がると△4四角のラインに弱くなるので注意!

 それではどうするのかと言うと、▲7七銀のまま▲6五歩と突っかけて、△同歩ならそこで▲7六銀と勢いをつけるのです。そうすれば5六歩の反撃が来る前に攻め倒せます。

 問題は▲6五歩に△同銀とする手ですが、▲7六銀とぶつけて以下結果図③。評価値はほぼ互角で、先手決して悪くありません。むしろ、後手は飛車が使えていないので、実戦的には先手が相当やれるのではないでしょうか?

まとめ

 というわけで、以上筋違い角の振り飛車パターンの攻め筋でした!いくつかポイントがありましたので、まとめておきます。
・△8四歩には▲8八飛!
・5六角+8八飛を活かして▲8六歩△同歩▲8三歩の筋を狙う。
・△7四歩にも▲7五歩でこじ開けて開戦!
・持久戦には四間飛車+4八銀3八金型が個人的オススメ!

それでは次回は対策回となる予定です。読んで下さりありがとうございました。引き続きよろしくお願いいたします。



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