第4回ABEMAトーナメント本戦準決勝第二試合
9月11日に第4回ABEMAトーナメント本戦準決勝の第二試合が行われました。予選Aリーグ1位で本戦ではチーム広瀬を破ったチーム藤井「最年少+1」と、予選Bリーグ1位で本戦ではチーム糸谷を破ったチーム菅井「一刀流」との対戦です。チーム藤井は優勝候補に恥じなく、予選から安定した戦いを見せ勝ち上がってきました。チーム菅井はリーダーが圧倒的な成績で牽引し、強豪を打ち破ってきました。若い力が充実しているチーム藤井と、中堅とベテランが嚙み合ったチーム菅井の好勝負が期待されます。
■一局目 藤井聡太二冠 ● vs 〇 深浦康市九段
チーム藤井はジャンケンで決めたようですが、初戦からリーダーの登場となりました。先手の深浦九段は角道を止め、得意の雁木に誘導します。深浦九段が4筋から仕掛け7筋の歩を伸ばすと、藤井二冠は飛車を浮いて桂頭を守ります。藤井二冠が△4六歩と垂らすと、深浦九段は飛先の歩を交換して▲2七飛と飛車の横利きで受けます。藤井二冠は8筋の継ぎ歩攻めを見せ先手陣を壁形にしますが、深浦九段は1筋の端攻めから反撃します。深浦九段は▲4九香から銀と交換し、取った銀を▲6五銀と打ち後手陣に迫ります。藤井二冠も懸命に粘りますが、深浦九段は着実に寄せ嬉しい今大会初白星を挙げました。
■二局目 伊藤匠四段 〇 vs ● 菅井竜也八段
幸先良く相手のリーダーを破ったチーム菅井は、流れを掴みにリーダーが出陣します。後手の菅井八段は三間飛車で△8四歩~△8三銀と構えると、伊藤四段は穴熊に囲います。伊藤四段が角を引いて2筋からの攻撃を見せると、菅井八段は飛車を浮いて受けます。菅井八段は8筋の歩を伸ばし先手の穴熊を崩しにかかりますが、伊藤四段は7筋の歩を伸ばして後手陣に嫌味を付けます。ジリジリした中盤戦となりましたが、伊藤四段の金銀は少しずつ自玉を離れて前進していきます。菅井八段が9筋から仕掛け、お互いに時計を叩き合う激しい玉頭戦になりましたが、最後は伊藤四段が一手詰みを見逃すハプニングがあったものの、そのまま即詰みに討ち取りました。
■三局目 高見泰地七段 〇 vs ● 郷田真隆九段
二局目まで後手番のリーダーが相次いで敗れる、先週と同じ波乱の展開になりました。先手の郷田九段が角換わりに誘導し、相腰掛け銀の将棋となりました。郷田九段が4筋から仕掛けると、高見七段は飛車を4筋に回して受けます。郷田九段が△4六角と打つと、高見七段は右玉に囲い直します。高見七段は6四の歩を角で取らせ、△3五歩と先手の桂頭を攻めます。郷田九段は9筋から端攻めを決行しますが、高見七段はしゃがんで受け△8四銀から反発します。またもお互いに時計を叩き合う激しい玉頭戦となりましたが、最後は自玉が詰まないことを読み切った高見七段が寄せ切りました。
■四局目 藤井聡太二冠 〇 vs ● 深浦康市九段
一局目と同じ顔合わせとなりました。先手の藤井二冠が相掛かりに誘導し、深浦九段が先に飛先の歩を交換します。藤井二冠も飛先の歩を交換して横歩を取ると、深浦九段は△2八角と打ち馬を作ります。藤井二冠は自陣に▲2七角と打ち馬を閉じ込めますが、深浦九段は飛車で銀を食いちぎり、△2六銀と飛車角両取りに打って馬の救出を図ります。藤井二冠が銀を打って再び馬を閉じ込めると、深浦九段は馬で銀を食いちぎって先手陣を乱します。深浦九段が飛車取りに△4四銀と打つと、藤井二冠は手抜いて持ち駒の飛車を敵陣に打ち込み竜を作って反撃します。深浦九段も△8九飛と敵陣に打ち込みますが、藤井二冠は▲6九角と自陣に打って凌ぎ、▲8八銀から飛車を奪って敵陣に打ち込んで後手玉に迫ります。持ち駒に桂しかない深浦九段は攻め合いに託しますが、藤井二冠が▲4九玉と早逃げしたのが決め手となり、最後は即詰みに討ち取りました。
■五局目 高見泰地七段 〇 vs ● 菅井竜也八段
チーム藤井は、高見七段が伊藤四段を先手で使った方が良いという気遣いで、後手番の本局は自ら出陣します。先手の菅井八段がゴキゲン中飛車で穴熊を選択すると、高見七段も穴熊に囲います。高見七段が4筋から仕掛けると、菅井八段も7筋から反発します。高見七段は角交換して飛車を走り馬を作りますが、菅井八段も敵陣に角を打ち込み馬を作ります。お互いに敵玉に迫る展開となりましたが、竜を切って踏み込んだ高見七段がわずかに速く寄せ切りました。
■六局目 伊藤匠四段 ● vs 〇 菅井竜也八段
後がなくなったチーム菅井は、これまで獅子奮迅の活躍を見せてきたリーダーが連投です。二局目と同じ顔合わせとなり、菅井八段は再び三間飛車で穴熊を選択します。伊藤四段は左美濃から銀冠に組み替え、▲8五歩と伸ばしてから▲7五銀と後手の玉頭に戦力を集めます。伊藤四段は9筋の歩も突き捨てますが、菅井八段は左金も寄せて穴熊を補強し、飛車交換から先に先手陣に飛車を打ち込みます。菅井八段は角を切って先手陣を崩しますが、伊藤四段も後手陣に飛車を打ち込み竜を作ります。伊藤四段は2枚の角を後手陣に直射させますが、構わず踏み込んだ菅井八段が即詰みに討ち取りました。
■七局目 藤井聡太二冠 〇 vs ● 郷田真隆九段
チーム藤井は「伸び伸び楽しく」とリーダーを送り出し、チーム菅井は郷田九段が自ら「最高の相手に最高の戦いをしたい」と言って出陣します。先手の郷田九段が角換わりに誘導し、相腰掛け銀の将棋となりました。三局目と同様、郷田九段が4筋から仕掛けて▲4六角と打ちますが、藤井二冠は△5五角とぶつけて再び角交換します。お互いに陣形を整え、郷田九段は穴熊に組み替えます。藤井二冠は△4四歩から仕掛けますが、郷田九段は2筋を突破し"と金"を作ります。藤井二冠は取れる角を取らずに、8筋の継ぎ歩から9筋に戦火を拡げます。郷田九段は▲2一飛成と飛び込み後手の8一にいる飛車にぶつけますが、藤井二冠は△8五桂と踏み込み、2枚の角を敵陣に打って先手玉を受けなしに追い込みます。郷田九段も連続王手で後手玉に迫りますが、藤井二冠が逃げ切り勝負を決めました。
【チーム藤井 5勝 vs チーム菅井 2勝】
チーム藤井は一局目にリーダーが敗れ暗雲が漂いそうなところでしたが、二局目に伊藤四段が今大会ここまで9勝1敗の相手リーダーを破って息を吹き返しました。藤井二冠が珍しく落ち込んでいる様子を見せましたが、高見七段がチームの雰囲気を明るく維持することに努め、若い2人が力を発揮できるよう気配りしている様子が印象的でした。メンバーが3人とも大きく勝ち越し安定した戦いを続けていますが、この試合でより一層チームの結束力が増し、決勝でも最高のパフォーマンスを見せてくれそうです。
みっちり練習してきたというチーム菅井でしたが、ここまで快進撃を見せてきた菅井八段が二局目・五局目と敗れ、波に乗ることができませんでした。しかしここまで勝ち星に恵まれなかった深浦九段が一局目に藤井二冠を破る金星を挙げ、全員が「楽しかった」と口を揃えて見せる清々しい笑顔には、力を出し切った満足感が感じられました。
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