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「観る将」が観た第3回AbemaTVトーナメント決勝

4月のStayHomeの頃から私たちを楽しませてくれた第3回AbemaTVトーナメントも、8月22日いよいよ決勝を迎えました。渡辺新名人率いるチーム渡辺と、藤井新王位擁するチーム永瀬の顔合わせとなりました。渡辺名人(三冠)、永瀬二冠、藤井二冠と、トータル七冠が顔を揃える豪華なメンバーが集結しましたね。注目の解説は、わかりやすいと評判の戸部七段です。

一局目 石井六段● vs 藤井二冠〇 (チーム渡辺 0勝:チーム永瀬 1勝)
藤井二冠は、二冠としての初対局となります。先手の石井六段は矢倉を選択し、お互いにがっぷり組み合いました。藤井二冠は桂打ちから相手陣を崩しますが、石井六段も金銀を自陣に打ち込み堅陣を築きます。長い中盤戦が続きましたが時計の叩き合いとなり、最後は藤井二冠が龍を切って仕留めました。

二局目 渡辺名人● vs 増田六段〇 (チーム渡辺 0勝:チーム永瀬 2勝)
渡辺名人は、名人としての初対局となります。先手の増田六段は得意の相掛かりを選択し、渡辺名人も受けて立ちます。増田六段が▲6五歩と角筋を通した手が好手だったようでペースを掴み、相手からの角取りにも逃げずに攻め続け、渡辺名人を投了に追い込みました。チーム永瀬としては、相手リーダを破る大きな1勝となりました。

三局目 近藤七段● vs 永瀬二冠〇 (チーム渡辺 0勝:チーム永瀬 3勝)
先手の近藤七段は雁木模様に駒組みを進め、永瀬二冠は銀矢倉で受け止めます。近藤七段が▲4五歩から仕掛けましたが、永瀬二冠は△9五歩から反撃します。近藤七段は、歩の連打から▲5三角と勝負手を放ちますが、永瀬二冠は△8一香から敵陣に殺到し押し切りました。チーム永瀬が3連勝と、大きくリードを奪いました。

四局目 渡辺名人● vs 藤井二冠〇 (チーム渡辺 0勝:チーム永瀬 4勝)
本日初めてのタイトルホルダー同士の対局となりました。先手の藤井二冠が矢倉を選択し、棋聖戦第一局と似た展開になりました。藤井二冠が▲2七香~▲4三歩と相手陣に圧力を掛けると、渡辺名人も△6九銀から反撃しますが、藤井二冠は▲6八角など受けの妙手を繰り出し逃げ切りました。解説の戸部七段を唸らせる好手の応酬となり、内容の濃い熱戦でしたが、チーム永瀬が早くも4勝目をあげ、優勝まであと1勝となりました。

五局目 近藤七段● vs 永瀬二冠〇 (チーム渡辺 0勝:チーム永瀬 5勝)
先手の近藤七段が横歩取りを避け、相掛かりになりました。力戦調の難しい中盤が続きましたが、負けられない近藤七段が積極的に仕掛けたところ、永瀬二冠が△7六桂~△8四桂と反撃し即詰みに討ち取りました。

チーム永瀬は、なんと5連勝で優勝を決めました。どの対局も紙一重の熱戦でしたが、チーム渡辺は傾いた流れを変えることができず準優勝となりました。

チーム永瀬は、ドラフトが終わった時点から優勝候補筆頭と言われてきましたが、予選で藤井二冠が連敗する等、決して楽な道のりではなかったと思います。3人がそれぞれポイントを稼ぎ、やはり総合力で他のチームをわずかに上回った印象です。

藤井二冠にとっては、個人戦だった第1回・第2回に続く3連覇となりましたが、今回は団体戦ということもあり感慨深いものだったと思います。
「自分が足を引っ張らなければ優勝できる」と語っていた増田六段の、ホッとしたような笑顔も印象的でした。準決勝・決勝と、相手チームのエースを破った将棋は、チームに勢いをつける重要なポイントだったと思います。

チーム渡辺は、近藤七段と石井六段の活躍が目立ちました。近藤七段は順位戦で藤井二冠に唯一の黒星を付けている強豪なので、ある意味順当な活躍だったのかもしれません。石井六段は私はこのトーナメントで初めて観た棋士でしたが、今期竜王戦では4組優勝を果たすなど、最近の活躍は目覚ましいですね。渡辺名人が必ずしもポイントを稼げない中、所司一門で固めたこのチームの準優勝は見事な結果だったと思います。

これで、第3回AbemaTVトーナメントは完了となりますが、このトーナメントは観る将にとって非常に楽しめる企画でした。当然第4回の企画も進められていると思いますが、非公式戦ならではの、私たちをワクワクさせてくれるイベントを期待しています。


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