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第36期竜王戦決勝トーナメント3-4回戦~伊藤六段の竜王戦ドリーム~

竜王戦決勝トーナメントで、伊藤匠六段が勝ち進んでいます。


7月5日 3回戦:広瀬章人八段(1組5位)vs伊藤匠六段(5組優勝)

5組優勝の伊藤六段が1-2回戦を突破し、3回戦で待ち受けるのは、前期挑戦者として藤井竜王を苦しめた広瀬八段です。

振り駒で先手となった広瀬八段が相掛かりに誘導し、お互いに飛先の歩を交換します。広瀬八段が飛車を五段目に引くと、伊藤六段は角を交換してから桂を跳ねて飛車を引かせ、更に△4四角と自陣角を放って飛車を追います。

伊藤六段は3筋の歩をぶつけ、広瀬八段が飛車を再度浮いて桂頭を守ると、じっと△2四歩と突きます。この歩を取ると桂が助かりませんし、放置すると更に伸ばされて飛車に当たってくるので、広瀬八段は飛車を1筋にかわし、▲2七角と自陣に打って桂頭を守りつつ5筋の飛車を間接的に睨みます。

伊藤六段が飛車を浮いて角のラインから外し、1筋の歩を突いて先手の飛車に圧力を掛けると、広瀬八段は飛車を5筋に回してぶつけます。伊藤六段は飛車交換に応じてから2筋の歩を伸ばして先手の角を追い、飛車を銀と刺し違えて△2七銀と打って角を取り返します。広瀬八段は取られそうな桂を跳ねて桂交換しますが、伊藤六段が王手金取りに△4六桂と打つと、早めの投了を告げました。

本局は伊藤六段が先手の大駒を押さえ込みながら先手陣を切り崩し、持ち時間を2時間以上残しての快勝となりました。

7月14日 4回戦:丸山忠久九段(1組4位)vs伊藤匠六段(5組優勝)

快進撃が続く伊藤六段がベスト4を懸けて戦うのは、第24,25,29期挑戦者で、最近では第33期に藤井棋聖(当時)を破って挑決三番勝負まで勝ち進んだ丸山九段です。

振り駒で先手となった丸山九段が角換わりに誘導し、相腰掛け銀の将棋となります。昨年度の棋王戦敗者復活戦の藤井聡太竜王vs伊藤匠五段(当時)でも現れた定跡化された手順で、伊藤六段は金銀で飛車を捕獲し2枚の竜で攻め掛かり、丸山九段は馬と"と金"を作って先手陣に攻め込みつつ上部脱出を図ります。

84手目に丸山九段が前例を離れて歩で自陣を補強すると、伊藤六段は竜で1筋の香を取り、△1六竜と自陣に引き付けて守りに利かせます。相入玉の可能性も出てきましたが、丸山九段は歩で後手陣を乱し、馬と銀で後手玉に迫ります。伊藤六段が△4一金と銀を取ると、丸山九段は▲5一馬と金の利きに差し出します。

この馬を取ると後手玉は詰まされてしまうので、伊藤六段は馬の利きが外れた9筋から先手玉に迫り、△3四竜と自玉の脇に利かせつつ先手玉の上部脱出を阻みます。丸山九段は"と金"で後手陣の金を剥がして下駄を預けますが、先手玉には長手数の即詰みが生じており、伊藤六段が△9四桂から連続王手で迫ると投了を告げました。

本局は伊藤六段が経験のある定跡手順に、丸山九段が果敢に挑みました。前例では先手の入玉を許して敗れた伊藤六段は、自玉の入玉も視野に竜を引き付け、一瞬の隙に先手玉に攻め掛かって即詰みに討ち取りました。

準決勝の展望

5組優勝者としては第33期の梶浦宏孝六段(当時)以来のベスト4進出を果たした伊藤六段は、準決勝で1組優勝の稲葉陽八段と対局します。当然ながら格上の厳しい相手となりますが、今の伊藤六段には竜王戦ドリームの実現を予感させる勢いを感じます。勝てば挑決三番勝負に挑むことになりますので、期待を込めて注目していきたいと思います。

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