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「観る将」が観た第62期王位戦第三局

7月21-22日、お~いお茶杯第62期王位戦七番勝負の第三局が、神戸市の中の坊瑞苑で行われました。第二局までお互いに1勝1敗となり、藤井聡太王位にとっても豊島将之竜王にとっても、勝ってリードを奪いたい重要な対局となりました。前日の会見で、藤井王位は「気持ちを新たに一手一手しっかり考え指していきたい」、豊島竜王は「自分らしく積極的な将棋を見て欲しい」と話しています。

豊島竜王が先に淡い青灰色の着物に白い羽織で入室し、藤井王位は落ち着いた薄灰色の着物に青灰色の羽織で入室しました。立会いの谷川九段が対局開始を告げると、先手の藤井王位はいつも通りお茶を口にしてから飛先の歩を突き、豊島竜王も飛先の歩を突きました。

藤井王位が角換わりに誘導し、久し振りに合い腰掛け銀の将棋となりました。藤井王位が飛車を4筋に寄せて仕掛けると、豊島竜王も飛車を4筋に回して受けます。両者の研究が行き届いているのか指し手は速く、藤井王位が55手目を考慮中に昼休となりました。残り時間は藤井王位が約6時間、豊島竜王は約7時間と、1時間程度の差が付いています。

午後に入り、両者の長考が目立つようになってきました。豊島竜王は自陣に角を打ってから△4六歩と先手の飛車を押え込みますが、藤井王位も持ち駒の銀を▲4五銀と打って反発します。藤井王位が自玉を戦場から一路遠ざけたところで、豊島竜王が66手目を封じました。AI評価値は豊島竜王の58%と少し傾いていますが、ABEMAの解説を聴いている限りはまだまだ難しい局面のようです。残り時間も、両者とも4時間20分前後と差がなくなってきました。

谷川九段が開封した封じ手は△5四銀打と、4五にいる先手の銀を除きに行く手でした。藤井王位は素直に交換に応じ、▲4五歩と代わりに歩を打ちます。豊島竜王は左桂も攻撃に加えますが、藤井王位はなんとか凌いで▲8八玉と自玉を安全地帯に避難します。非常に難解な中盤戦となり、AI評価値は一手指す毎に揺れていますが、昼休の時点では藤井王位の59%となっています。持ち時間はともに2時間40分程度で拮抗しています。

昼休明け、藤井王位は▲5一角から反撃に転じます。豊島竜王が持ち駒の銀を打って守りを固めると、藤井王位は作ったばかりの馬を▲3三馬と切って打たれた銀を剥がし、▲3五歩~▲2五桂と瞬く間に後手陣を切り崩していきます。豊島竜王は△5一玉と逃げますが、藤井王位は▲8三銀と挟撃体制を作って追い詰めていきます。98手目の考慮中、豊島竜王の残り時間は1時間を切りました。藤井王位の残り時間も1時間2分となっており、ここからは時間との戦いにもなります。

豊島竜王は△2五飛と相手の桂を取って粘りますが、藤井王位は冷静に歩を垂らして"と金"で包囲網を狭めていきます。受けが効かなくなってきた豊島竜王は、△8六歩からの攻め合いを選択します。受け間違えると危険な筋もあったようですが、30分以上時間を残していた藤井王位は着実な応手で逆転を許しません。最後は攻防に利いていた後手の角を奪い、抑え込まれていた飛車を攻撃に参加させる▲4六飛を見て、豊島竜王は残り1分の秒読みを聞きながら投了を告げました。

本局は藤井王位が角換わりを選択しましたが、序中盤の研究は豊島竜王が上回っていたようで、封じ手の局面でのAI評価値は前二局と同様、豊島竜王がわずかに優勢と示していました。第一局では直線的に攻め合って完敗した藤井王位でしたが、本局では第二局と同様相手に決め手を与えず均衡を保ち、一瞬の隙を突いて優勢の局面を築くとそのまま押し切ってしまったように感じます。

本シリーズは藤井王位が2勝1敗とリードし、第四局は8月18-19日と少し間が空きます。両者は7月25日に開幕する叡王戦五番勝負でも顔を合わせており、王位戦第四局の前に叡王戦第三局まで戦うことが決まっています。持ち時間が各8時間で二日制の王位戦とは異なり、叡王戦は持ち時間が各4時間と比較的短いので、時間の使い方を含めた戦い方に大きく影響するはずです。二人の熱い戦いがどのような展開となっていくのか、注目し続けていきたいと思います。

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