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第82期順位戦A級最終9回戦一斉対局 ~将棋界の一番長い日~

2月29日に順位戦A級最終9回戦の一斉対局が、恒例となっている静岡市の浮月楼で行われました。この日は元々の対局時間の長さに加え、名人挑戦者やA級残留者が決まる重要対局が重なることから「将棋界の一番長い日」とも言われています。

私が注目していたのは、挑戦権争いのトップを走る豊島将之九段と、勝てばプレーオフとなる菅井八段の直接対決です。先手の菅井八段は中飛車に振り、豊島九段が1筋の位を取ると、穴熊を目指します。豊島九段は先手の玉が穴に潜る前に7筋から仕掛け、菅井八段が5筋の歩をぶつけると、2時間超えの長考で角交換し、桂取りに△4四角と打ち直します。菅井八段は1時間超えの長考返しで▲5三飛成と銀を食いちぎり、▲5五角~▲9一角成と馬を作って主導権を握ります。豊島九段は7筋の桂頭を攻め、菅井八段が3筋の歩を伸ばして後手の玉頭を狙うと、△5七飛~△5四飛成と竜を引き付けて守ります。菅井八段が▲4六馬と好所に引き、1筋に成り香を作って攻め掛かると、豊島九段は玉を5筋方向に早逃げして凌ぎます。豊島九段は2枚の竜を先手陣に侵入し、△4八竜と金を食いちぎり、△4四香と上部から押さえ込んで寄せ切りました。

他の対局結果は以下の通りです(左が勝者)。
 渡辺明九段 - 広瀬章人九段
 永瀬拓矢九段 - 中村太地八段
 佐々木勇気八段 - 斎藤慎太郎八段
 稲葉陽八段 - 佐藤天彦九段

豊島九段が7勝2敗となり、藤井名人への挑戦権を獲得しました。今期は6連勝の後2連敗していましたが、最終局で踏み止まりました。永瀬九段が6勝3敗、菅井八段は渡辺(明)九段と並び5勝4敗となりました。
熾烈な戦いとなった残留争いは、稲葉八段、佐藤(天)九段、佐々木(勇)八段、中村(太)八段が4勝5敗で残留となりました。残念ながら、前期はプレーオフを戦った広瀬九段と、79-80期挑戦者の斎藤(慎)八段の2人が、ともに3勝6敗で陥落です。両者は来期B級1組での戦いとなりますが、A級への復帰を期待したいと思います。


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