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第82期順位戦A級の展望

第81期名人戦七番勝負は藤井聡太新名人の誕生で幕を閉じたばかりですが、次期名人挑戦者を決める順位戦A級の対局順が既に発表されています。A級は毎年1つずつクラスを昇ってきたトップ棋士10人が総当たりで戦い、優勝者が名人に挑戦し、下位2人がB級1組へ降級します。最終戦となる9回戦は、ほとんどの棋士が名人挑戦かA級残留を掛けて深夜まで死闘を繰り広げるため、「将棋界の一番長い日」と呼ばれています。

日本将棋連盟HPより引用

今期の順位戦A級は、40歳以上の棋士が不在となったことが大きな特徴です。

最年長は39歳の渡辺明九段です。19年ぶりの無冠に転落したとはいえ、今期A級の中心的存在になることは間違いありません。失冠直後の順位戦はモチベーションの維持が難しい面があるのかもしれませんが、気持ちを切り替えて波に乗るためには1-2回戦の戦いが重要になりそうです。渡辺九段は順位戦21連勝中で、森内九段の持つ26連勝を破ることができるかにも注目が集まります。

対抗は名人経験者で、35歳の佐藤天彦九段と33歳の豊島将之九段でしょうか。両者とも藤井竜王名人とは一回り以上の年齢差となりますが、独走を阻止すべき世代の代表と言って良いと思います。3回戦で豊島九段、4回戦で佐藤九段が渡辺九段と顔を合わせますので、前半戦の山場になるかもしれません。

藤井竜王名人を除けば唯一のタイトルホルダーとなった30歳の永瀬拓矢王座も、3期目となるA級でそろそろ頂点を目指したいところです。今年度は王座戦5連覇が最優先事項かもしれませんが、防衛して永世称号の権利を獲得すれば、順位戦でも突っ走るかもしれません。

昨年度に竜王挑戦者となった36歳の広瀬章人八段、今年度の叡王挑戦者となった31歳の菅井竜也八段、第79-80期に2期連続で名人挑戦者となった30歳の斎藤慎太郎八段、第75期に名人挑戦者となった34歳の稲葉陽八段も、もちろん挑戦者になってもおかしくない実力者です。

個人的に注目したいのは、ようやく実力に見合うA級にたどり着いた、28歳の佐々木勇気八段と35歳の中村太地八段です。前期の藤井竜王名人もそうでしたが、A級1期目の挑戦権獲得はそれ程珍しいことではなく、最近では第79期の斎藤八段、第75期の稲葉八段、第74期の佐藤(天)八段(当時)の例があります。2人が昇級の勢いを持続して挑戦権争いに加わり、今期のA級を大混戦にしてくれることを期待したいと思います。

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