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「観る将」が観た第70期王将戦挑戦者決定リーグ 藤井二冠4回戦

10月29日、王将リーグで藤井二冠と佐藤(天)九段の対局がありました。藤井二冠は、まさかの3連敗スタートで、早くも挑戦権獲得の可能性はなくなっています。佐藤九段も1勝3敗と苦しいスタートとなっており、両者とも残りの対局は王将リーグ残留を目指す戦いとなります。

本局は、先手の佐藤九段が3手目▲5六歩~7手目▲5八飛と中飛車に構えました。私は佐藤九段の振り飛車を初めて見ましたが、前局の永瀬王座の四間飛車に続き、かなり意表を突いた作戦ということができると思います。藤井二冠は振り飛車を苦手にしている訳ではありませんが、想定外の作戦により序盤から時間と神経を使わされる展開になっている気がします。

藤井二冠は、△6四銀~△6五桂と急戦策で対抗し、更に左銀も前線に送り込みました。この辺りは佐藤九段の想定通りだったと思われ、銀を吊り上げてから▲5四歩と中央突破を図ります。更に▲5五桂~▲6五銀と大技を掛けに行きましたが、藤井二冠は銀で桂をむしり取り△2四桂と端攻めに転じます。佐藤九段も銀で桂を取り返して端から逆襲し、AIの形勢判断ではほぼ互角の難しい中盤戦が続きます。

藤井二冠が△7七銀から7筋を突破し龍を作った辺りでついに形勢が傾きましたが、佐藤九段も1筋を突破しギリギリの寄せ合いとなりました。最後は冷静に自玉が詰まないことを読み切った藤井二冠が、△1五歩と飛車の横利きを外してから即詰みに討ち取りました。

それにしても、藤井二冠がタイトルを獲得して以降、トップ棋士たちが秘策を尽くして倒しに来ている印象です。丸山九段は自らが得意とする戦型に誘導して、序盤に時間を使わず持ち時間に大差をつける戦略でした。豊島竜王や羽生九段が採用した横歩取りは、藤井二冠の経験値が低く、やはり序盤に時間を使わざるを得ない状況に追い込みました。永瀬王座や佐藤九段の振り飛車は、誰もが全く予期しない作戦で藤井二冠の事前準備を外し、精神的にも主導権を握ろうという作戦と感じます。しかし一連の経験は、未来の藤井二冠をより強くする糧になるだろうと信じるしかありません。

藤井二冠の今期王将リーグは残り2局となりました。是非両局とも勝って、あらためて来期王将リーグに挑んで欲しいと思います。

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