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「観る将」が観た第48期棋王戦挑決トーナメント 藤井竜王vs中川八段

7月8日、棋王戦の挑決トーナメントで、藤井聡太竜王と中川大輔八段との対局がありました。藤井竜王は挑決トーナメントからの出場で、本局が初戦となります。中川八段は予選で小林(宏)七段、三枚堂七段、宮田七段、青嶋六段を破って本局に臨んでいます。
中川八段は1987年プロ入りの53歳で、趣味の登山で真っ黒に日焼けした精悍な顔とダンディなファッションでお馴染みの人気棋士です。両者はこれが初手合わせとなります。


戦型は相掛かり

振り駒で先手となった中川八段が駒音高く飛先の歩を突き相掛かりに誘導し、藤井竜王も受けて立ちました。お互いに飛先の歩を交換して、中川八段は六段目に引き、藤井竜王は二段目に引きます。藤井竜王が7筋の歩を突いて桂の活用を図ると、中川八段は少しずつ時間を使い、33手目を考慮中に昼休となりました。AIの評価値は全くの互角、各4時間の持ち時間の内、残り時間は藤井竜王が3時間17分、中川八段が2時間58分となっています。

長い序盤戦

中川八段が昼休を挟む27分の熟考で▲4五銀と前進すると、藤井竜王も25分考えて△3三銀と上がって受けます。お互いに陣形の整備に戻り、長い序盤戦が続きましたが、47手目に中川八段が▲6六歩とぶつけて仕掛けます。藤井竜王は歩交換に応じ、△6五歩と打って角を追い返します。藤井竜王は飛車取りに△5三角と上がり、飛車を引かせてから△4四角と覗きます。中川八段が▲7七銀と上がって角交換を拒否すると、藤井竜王はじっと9筋の歩を突いて手番を渡します。

藤井竜王の仕掛け

中川八段が▲4五歩と突いて角を下がらせてから▲8六銀と出ると、藤井竜王は△3五歩と突いて桂頭を狙います。中川八段が▲3五同歩と応じると、藤井竜王は桂取りに△3六歩と打ちます。中川八段は銀取りに▲2五桂と跳ねますが、藤井竜王は冷静に△2二銀とかわします。AIの評価値は藤井竜王の62%と少し傾いてきました。

中川八段の反撃

中川八段は▲7七桂と跳ねて反撃の構えを見せると、藤井竜王は△6四角と覗いて3筋の歩成を狙います。中川八段が飛車を寄って受けると、藤井竜王は桂取りに△2四歩と突きます。中川八段は構わず▲6五桂と跳ね、2筋の桂を取らせて▲7九玉と早逃げします。藤井竜王は飛車に当てて△2八角成と馬を作りますが、中川八段は早逃げの効果で空いたスペースに▲6九飛と回ります。藤井竜王が△6四桂と打つと、中川八段は▲7三桂成と桂交換してから▲6五銀と前進します。藤井竜王が銀取りに△5三桂と打つと、中川八段は▲6四銀と桂を食いちぎって銀取りに▲5六桂と打ちます。藤井竜王は△6五銀とかわしますが、AIの評価値はほぼ互角に戻っています。

藤井竜王の逆襲

中川八段が▲4四桂打と継ぎ桂で王手金取りに打つと、藤井竜王は金銀を見捨てて△6二玉と逃げ、金取りに△3七歩成と攻め合います。中川八段は金を引いてかわしますが、藤井竜王は△4七"と"~△5七"と"と寄せていきます。中川八段が構わず桂取りに▲4二銀と打つと、藤井竜王は△6七歩と先手の飛車の利きを止めます。AIの評価値は藤井竜王の80%と再び大きく振れてきました。

"と金"と馬の活用

中川八段は▲6七同金と歩を払いますが、藤井竜王は取れる金を取らずに△4六馬と引いて"と金"に紐を付けます。中川八段が▲8八玉と早逃げすると、藤井竜王は△6七"と"と金を取ります。中川八段は▲6七同飛と飛車を攻めに復活させますが、藤井竜王も△7二玉と早逃げし、▲5三銀成と桂を取らせて△6六桂と詰めろを掛けます。中川八段は自陣に金を投じて粘りますが、藤井竜王は△7九銀から寄せに入り、そのまま鮮やかに即詰みに討ち取りました。

まとめ

本局は相掛かりの難解な序盤戦が長く続きましたが、藤井竜王が桂頭を攻めてわずかにリードを奪いました。中川八段は桂を駆使して反撃し形勢を互角に戻しましたが、藤井竜王は慌てずに"と金"を作って攻め込むと、再び優勢の局面を築いて一気に寄せ切りました。
藤井竜王は棋王戦挑決トーナメントの初戦を突破し、次の3回戦では久保利明九段と顔を合わせます。藤井竜王にとっては対戦成績が3勝3敗と拮抗する難敵ですが、挑戦権獲得に向け勝ち上がって欲しいと期待しています。

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