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「観る将」が観た第91期棋聖戦決勝トーナメント決勝

少し前になりますが、6月4日に行われた棋聖戦決勝トーナメント決勝をAbemaで観戦しました。ご存知の通り、この対局の結果、また一つ将棋界の記録が更新されました。藤井七段が、17歳10ヶ月20日と最年少でのタイトル挑戦権を獲得したのです。

準決勝で佐藤天彦九段を破った藤井七段の、決勝の相手は永瀬二冠でした。公式戦では初対局ですが、二人は普段から1対1の研究対局を重ねお互いをよく知る間柄だそうです。藤井七段が研究熱心な永瀬二冠を見習い成長してきたのと同時に、永瀬二冠も藤井七段の強さを肌で感じながら吸収し、ここ数年で急速に強くなった棋士の一人だと思います。この二人がこの場で対局すること自体、ドラマ性を感じてしまいます。

将棋は、相掛かりの序盤に永瀬二冠が研究手順(▲9七角~▲2六飛、飛車交換後の▲3四飛)から猛攻を仕掛け、わずかにリードを保ったまま中盤を迎えましたが、藤井七段が一瞬のスキを突き反撃(△2六桂~△3六銀)してから流れが変わり、最後は即詰みに打ち取りました。解説の飯島七段が「この将棋は芸術」と叫んだように、非常に内容が濃く藤井七段の初タイトル挑戦決定にふさわしい名局だったと思います。

2020年度は、コロナ禍により多くの人が新しい生活習慣を模索することから始まりました。私が「にわか観る将」になったのも、緊急事態宣言下に数々の将棋動画(特に藤井七段の神がかり的な将棋」を観たことがきっかけでした。5月24日に緊急事態宣言が解除され、日本将棋連盟が真っ先に発表したのは棋聖戦の準決勝・決勝、五番勝負第一局の日程でした。ベスト4に残っていた藤井七段が連勝すれば、タイトル挑戦の最年少記録を4日更新できる強行日程となったのは、記録達成を願う多くのファンに対する、日本将棋連盟の最大限の配慮だったと思います。対局会場との調整など様々な困難を乗り越えた連盟の努力にも敬意を表したいですし、ファンや連盟の期待に応えた藤井七段にも、最大級の賛辞を贈りたいと思います。

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